原油がもっと安くなり続ける理由(
『ニューズウィーク日本版』2009年4月29号)
原油などあらゆる資源価格は中国をはじめとする新興国の需要増により高騰を続ける……
世界的な不景気が続くなか、資源価格が値下がりしてもこの種のお話はよく目につく。もちろん反論もあるが、今回紹介する記事は少し変わった視点に立っているのが面白いところ。
で、それはなにかというと、「原油などの商品価格は、ここ200年下落している」という歴史的な視点だ。
「テクノロジーの開発と採掘方法の効率化、そして代替原料の利用」によって、長い目で見れば商品価格は一貫して下落してきたという(オイルショックのような一時的な高騰はあるが)。
すなわち、エネルギー需要が増えれば、原子力や天然ガス、環境技術などが進展し、結果的に石油需要が抑えられるという見方を示している。
また中国をはじめとする新興国の成長も過大評価されてきたと指摘する。
・成長すれば一人当たりのエネルギー消費量は減少すること。
・中国の場合、過剰投資の解消と輸出依存型経済への脱却を図るなか、資源を大量消費する輸出産業はこれまでのようには伸びない。
というのが判断理由だ。
中国の過剰投資のリバウンドという分析は納得しかねる部分もあるし、国家による資源獲得競争という危険性について触れていないのも残念だが、
・テクノロジーの発展
・需給が逼迫すれば代替手段が登場する
という2点からシンプルに考えれば、長期的な資源価格高騰はありえないという判断はうなずけるところ。値上がりは全て中国のせいにするのが風潮なだが、「いつの時代も世界には新しい経済大国が台頭してくるが、商品相場は下がり続けてきた」との反論は参考になる。
この記事は、「一時の高騰を終え資源価格は下落トレンドに入った」と主張しているわけだが、資源の乏しい国・日本に住んでいる身からすればぜひとも予想が的中して欲しいところ。資源確保に奔走する中国政府は、資源が逼迫し国家同士の奪い合いとなる未来を予想しているのだろうが、その暗い予想が外れるのを祈るばかりだ。