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<日中GDP逆転>中国成功の秘密と未来の不安―謝国忠論文(2)

2010年09月02日

米モルガン・スタンレーのアジア担当エコノミストを務めた謝国忠(アンディ・シエ)の記事「『世界2位』の味わい」(2010年8月30日付財新網)が面白いっ。結構長いので、3回に分けてご紹介。

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第二回は「米ドルの衰退」について(第一回はこちら)。米国が経済的覇権を失ったから新興国が急成長できたのか、はたまた新興国が躍進したから米国は落ち目になったのか。どっちが原因でどっちが結果なのか。よく俎上に上る問題ではありますが、そこはさすがの謝国忠。覇権国衰退の第3の可能性を指摘しています。もちろん米国の失敗とは、すなわち次なる覇権国・中国にとっての教訓なわけでして、いわば第3回への伏線となっています。

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中国の急速な発展は、米ドルの衰退と軌を一にするものだった。2002年、米ドルの価値はピークに達した。そして、現在ではピーク時の3分の1にまで下落している。振り返れば、1980年代中期、アジアの四小龍が台頭した時には、プラザ合意(1985年)を経て米ドルの価値は一気に下落した。1990年代中期の東南アジア諸国急成長当時には、銀行破綻問題が米ドルに大きな傷を負わせており、2000年にはITバブルの破綻が米ドル低迷を招き、米国への資本流入を鈍化させた。一昨年の金融危機も米ドル低迷が続く要因となっている。

米ドルの低迷と中国の繁栄。これはたんなる偶然だろうか?米ドルの低迷が中国をはじめとする新興国繁栄の要因となったのか?それとも新興国の繁栄が米ドルの低迷を招いたのか。

おそらく最も可能性が高いのは、以下に述べる第三の状況である。米国の経済問題は国内の競争力低下に由来している、もしくは経済問題の対応に誤りがあった。現在、金融業界の危機に直面しているが、その根源はというと、米国が競争力を失っていった期間にグリーンスパンが金融緩和政策を採用、米国人の生活水準を維持したことに由来している。結局、一連の金融バブルを発生させてしまい、米国は資本の吸収を続けた。また国際収支の赤字も止まらず、拡大が続いた。米国の競争力低下が鮮明に現れたものと言えるだろう。現在の金融危機が反映しているように、こうしたバブル的政策は終了しなければならない。

中国の工業化もまた米ドル低迷の原因の一つであることは確かだ。しかし、結論から言えば、グローバリゼーションの与えた影響のほうがより大きなものであった。とりわけ情報技術産業とインターネットの台頭により、多国籍企業は生産コストが最も低い地域に移転可能になった。中国のインフラ建設は多国籍企業の移転をさらに容易に、さらにスピーディーにさせた。また情報技術の発展により、先進国と途上国の労働者の差も多国籍企業にとっては意味を持たなくなりつつある。こうした背景から米ドルの低迷は不可避であったと言えよう。

まとめると、米ドル低迷はグローバリゼーションと新技術によってもたらされたものであった。また流動資金を中国をはじめとする新興経済体にもたらすという副産物をも生み出した。しかし、その一方で流動資金の移動は、新興経済体に新たな難題をもたらすものでもあったのだった。

以下、「Kinbricks Now:<日中GDP逆転>中国成功の秘密と未来の不安―謝国忠論文(3)」に続く。

(Chinanews)
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<過去記事>
Kinbricks Now:<日中GDP逆転>中国成功の秘密と未来の不安―謝国忠論文(1)

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