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【中国コラム】エコのためには近代生活を捨てよ!住宅地への電力供給停止を中央政府がお叱り!の裏を読む

2010年12月05日

出来レースの電力不足批判?

いつからか忘れましたか、「『計画』は計画経済を想起させるから『規画』にします」 と呼称を変えていました。どういう効果があったのか定かではありません。

今年は第11期5カ年計画の最終年度です。


中共中央、『十一五』規画制定の提案(2005/10/18 新華網)



ここで、2010年には一人当たりのGDPを2000年の2倍にするという、前向きな目標と共に、省エネ対策として単位GDPあたりエネルギー消費を第15期(1997年から2002年)から20%削減するという、鳩山級の厳しい要求を明文化しています。

今読み返せばそんなのあったなくらいの記憶しかないのですが、今年はその最終年度にあたり、どう考えても間に合わないと焦りを感じた地方幹部が、自分の成績を上げるために工場への電力供給をストップさせるという荒業を使いました。

工場側も慣れたもので、自前の発電機を用意して操業停止することなく乗り切ったのですが、トラックやバスにも使われている軽油価格が大高騰し、昨今の物価上昇の先鞭となった、というのは別の話でした。

工場は何年も前から突然電力を止められることが何度かあり、予告無しだったり予告ありだったりするそうで、発電機で乗り切ることが出来ます。

しかし、地方政府の偉いさんには、住宅地への電力供給を止めさせたのもいたそうで、先月23日に国務院が「止めるな」と通知を出しています。


国務院弁公庁緊急通知「住宅地への電力供給を確保せよ」(2010/11/23 人民網)  


翌日、人民網にタレコミ用の掲示板を作ったところ、「山西は供給ストップが長期に渡り、学生はろうそく着けて宿題している」「山西河津市はこのごろしょっちゅう停電する。停電は省エネ目標のためだろうが、生活に悪い影響が出ている」など、各地からタレコミが殺到。


ネットで山西、山東、浙江省など電力供給カット報告(2010/11/24 人民網)

山西省の電力供給カットがエゲつない 政府は沈黙しないように(2010/11/25 人民網)

電力供給ストップにタレコミ 住民生活に影響(2010/11/25 人民網)

   
浙江、山東などで対策会議(2010/11/26 人民網)



人民日報のキャンペーンが功を奏し、沿岸部や河北、安徽などで住宅地への電力供給ストップが報告され、特に酷かった山西省は専門の部会を開いて対応を協議するしたそうです。


「電力供給ストップ」シリーズに ネットユーザー「すばらしい」(2010/11/26 人民網)

   
どうもこのキャンペーン、国務院通知と連動しており、党中央が唯一にして最大の世論であるネットを利用して地方政府に国務院通知を飲ませようとしているようです。

「庶民の声を反映し、世論の監督する作用を発揮させた。素晴らしい」と賞賛の声が挙がっております。

本文で使われている「很給力」はネットスラングで「凄い」という意味になるのですが、それを「人民日報が引用とはいえ使った、驚いた」と教えてくれたのをどこかで読んだのですが。朝日が「菅内閣支持率急下降杉ワロタ」とか見出しに使うようなもんでしょうか。


山西省で遭遇した数年来の電力不足(2010/11/26 人民網)

   
山西が狙い打ちにされております。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

気温の低下が顕著となった10月中旬以降、電力消費が上昇しはじめ、今年の年末までには必要な電力量の20%から25%が足りないと予測されてます。

山西の電力不足は省エネ目標達成のため、電力会社が発電を停止したことが原因。山西省は炭鉱だらけですから、当然発電に使用されるのも石炭。となれば当然火力発電所ですから、槍玉に挙げられるわけです。


王君山西省長が是正を指示(2010/11/28 人民網)


   
そして、ついに山西省長が住宅地への電力供給ストップを是正すると明言しました。人民網のタレコミに屈したと言ってもいいのではないでしょうか。

王君は同省で多発する炭鉱事故の責任を止められなかった孟学農の代わりに、鳴り物入りで山西省長となっています。

前職は国内の安全生産を監督する、国務院の安全生産委員会副主任で言わば通達を出した国務院の身内なのですが、やたらと名前が挙がっているところをみると、見限られたのかと思わせるような山西省の叩かれっぷりです。

ただ、

国務院通達→人民網タレコミ掲示板解説→山西叩かれまくり→省長土下座

と、ちょっと流れが綺麗過ぎるきらいもありますし、末端の暴走を省政府が改める、みたいな書き方ですし、元身内の省長を使った土下座までが国務院のキャンペーンだったと考える事にします。

山西省長は政治家にとっては鬼門なのですが、王君は無事乗り切れるでしょうか。やっぱりトカゲの尻尾きりにされたりして。


*記事についての情報や間違いなど教えて頂けると大変助かります!コメント欄か、メール(kinbricksnow●gmail.com、●を@に変えてください)でお願いします。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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