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日本の10倍乱世な中国のグルーポン系サイト=カオスな世界で信用をつかむためのテク

2011年01月05日

共同購入サイトグルーポン・ジャパン経由で販売された「超絶手抜きおせち問題」が話題ですね。


Oshogatsu -Japanese New Year 05f.JPG / midorisyu


知らない人のために簡単にご紹介。
共同購入型クーポンサイト大手のグルーポン・ジャパンを通じ、50%割引で販売した「おせち」が年末までに購入者に届かず、グルーポンや製造した飲食店に苦情が寄せられていることが2日わかった。「広告より量が少ない」「料理がいたんでいる」といった苦情も相次いでいるといい、グルーポンは事実関係を調査し、代金を全額返金することを決めた。

同社とおせちを製造した横浜市西区の飲食店「バードカフェ」によると、おせちは11月末、「通常価格2万1千円」として半額の1万500円で販売。全国で500セットが売れ、クレジットカードなどで決済を済ませた。購入者に12月31日に届くはずだったが、同日中に約200人に配達できなかったという。

おせち200人に届かず 料理にいたみも? グルーポン(asahi.com、2011年1月2日)
見ると不謹慎にも笑ってしまう、凄まじいばかりの手抜きおせちの写真はこちらのサイトでどうぞ(てにとく「グルーポンビジネスへの警鐘」)。

ミーハーな私は「史上最速で成長するネット企業」(Forbes.com、2010年8月12日)とか煽られると、もう気になって仕方ないので、中国のグルーポン系サイト事情についてもぽつぽつと調べておりました。というわけで、中国のグルーポン系サイトの問題点などについてちょっと取り上げてみようかと。

◆そもそもグルーポンって?
グルーポンが展開する共同購入型クーポン・サービスとは、

・大幅に値引きされたクーポン(例:100円のアイスが20円で買える)が時間限定で販売される。
・契約成立人数が決まっており、時間内に一定数の購入者が集まらないと取引はご破算に。
・契約を成立させようと、参加者は他人にせっせと宣伝する。
・大幅値引きとグルーポンへの手数料支払いからお店は儲からないかも。
・でもユーザーがせっせと宣伝してくれる広告効果を期待。
という仕組み。

で、このサービスが大ヒット。模倣するサイトが多数出現し(多くはサイトデザインまでそっくり)で、グルーポン系サイトと呼ばれる一群が乱立しております。

日本ではどれぐらいあるかというと、Groupon グルーポン まとめwikiに掲載されているだけで59サイト。一説には100サイト以上もあるのだとか。で、中国ではどうかというと、2010年6月末時点で480サイト(本サイト過去記事参照)。11月末時点で一定規模以上のサイトに限っても1664サイトに達しているそうで(中国の一定規模以上のグルーポン系サイトは1664サイトに=サイト信用度が成長のネック(人民網、2010年12月13日))。すさまじすぎる……。

◆中国グルーポン系サイトの問題点
で、有象無象のグルーポン系サイトの中には悪質なサイトも多数存在するわけでして。昨年7月時点で早くも中国中央電視台(CCTV)の番組「経済30分」で特集「ネット共同購入サイトは甘い蜜か、それとも罠か」を放送(テキスト版)しています。「超手抜きおせち」は一応、品物が届いているわけですが、番組で取り上げられたのは何も送られてこない、キャンセルしても返金されない、計画倒産的にサイトが消失したというきっついものばかり。

まあ零細企業はサイトごとポイ捨てしても気にならない程度の信用しかないので、詐欺し放題といったところでしょうか。今では騰訊網、新浪網など中国の大手IT系企業もこぞってグルーポン系サイトを展開していますが、こうした大手サイトには問題はないのでしょうか?

ググってみると、
「写真サービスセット(ステキな服を来てロマンチックな写真を撮ってくれるというやつ)落札したら、服ってスカーフみたいのしか貸してくれない。ちゃんとした服にしろって言ったら、一着ごとにクリーニング代が必要だって。話が違う!」

「クーポン買って鍋食いに行った。元値36元が15元で食べられるという話だったのに、店でメニュー見たら本当の価格は26元だった……。騙された!」

「映画チケット、平日ならいつでも使用可能と書いてあったのに、12月31日に行ったら繁忙期だからダメだと言われた……」
などなどという苦情が。2010年12月28日付杭州網によると、グルーポン系サイトによくある詐欺の手口としては以下のものがあるそうです。
(1)定価をごまかす。
(2)おおげさなタイトルで釣る。
(3)一般の製品・サービスよりも品質の悪いものを売っている。
(4)大幅値引きのはずのクーポンが、本当はその店の価格よりも高かった。
(5)アフターサービスをせず、製品・サービスに問題があっても問題解決に応じない。
「超手抜きおせち」はさしずめ(1)(2)(3)の合わせ技といったところでしょうか。

◆信用を勝ち取るために
さて、最後に中国グルーポン系サイトネタをあさっていて、ちょっと日本にはない面白いサービスを見つけたのでご紹介。

グルーポン系サイトは雨後の竹の子のように出現しているため、それらのサイトを整理して紹介するサービスも人気です。日本ではグルーポンなうとかPONPONといったサイトがあります。中国にも同様のサイトがあります。その一つが団800.com。複数のグルーポン系サイトを横断して、現在発売中のクーポンを表示するという基本機能は日本と一緒ですが、一味違うのは「共同購入苦情受け付け」というページがあること。

20110104_tuangou1

ネット掲示板のようなデザインですが、それぞれの問題ごとに「未解決」「解決中」「すでに解決した」のステータスが表示されているほか、各サイトごとに未解決案件の数が表示される仕組み。訴えがあっても処理してくれないサイトがランキング形式でわかるようになっています。

それぞれのスレッドを見ると、個別の苦情に団800.comの人がアドバイスしているほか、各グルーポン系サイトの担当者まで「降臨」し、解決方法を教えたり謝ったり。例えば「大鵝網からファンの皆様への謝罪文」というスレでは、共同購入が成立した日焼け止めについて、「検品の結果、品質・包装に問題があった」と謝罪。購入額の1.1倍を返金すると発表しています。

中国では上述したように信用を捨てて詐欺をする商売も横行していますが、消費者の権利意識が高くまたクチコミパワーも強力なだけに、いざ信用をたくわえようとするとめちゃくちゃこまめなアフターサービス、顧客とのコミュニケーションが必要になります。

信用を勝ち得ようとする中国グルーポン系サイトがこうしたきめ細かなアフターサービスを整えているのは、日本の10倍以上もプレイヤーがいる激烈な市場のため、ではなく、中国特有の商慣行でしょう。

海外IT事情に詳しい山谷剛史さんの記事「中国人は世界で一番アフターサービスにうるさい!? 日本製品“高品質神話”の意外な落とし穴 」(ダイアモンドオンライン、2010年12月29日)では、「買ってすぐ壊れる可能性が高いが、連絡するとすぐに新品と交換してくれる中国企業」と「初期不良の可能性は低いが、問題製品をなかなか交換してくれない日本企業」が比較された結果、「日本企業ってサービス悪いよね」という風評が中国で広がっているとの話を紹介しています。

問題はがんがん起きるけど、すぐリカバリーを試みるのがチャイニーズスタイルなのじゃないか、と(裏では問題が暴露するまでに儲けてトンズラする人もいるわけですが)。

だとすると、日本のグルーポン系サイトがどういうスタイルで信用獲得の道を歩むのかが気になるところ。お店側ではなく、サイト側がサービスの質を担保する仕組みを作らない限り、グルーポン系サイトは焼き畑農業になるか、家電とか書籍とかハーゲンダッツとか(笑)、品質のごまかしが難しいもの限定で売れるサービスになってしまうような気がします。

*記事についての情報や間違いなど教えて頂けると大変助かります!コメント欄か、メール(kinbricksnow●gmail.com、●を@に変えてください)でお願いします。



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 コメント一覧 (3)

    • 1. 犬彦うがや
    • 2011年01月05日 12:56
    • 宣伝にはなったよね~
    • 2.  
    • 2011年01月05日 23:35
    • バードカフェはお節はともかく、Twitterで社長がお節だけで1店舗分の儲けがあったとか、ブログの詰め込み作業の写真とか色々ネタが多すぎた。
    • 3. Chinanews
    • 2011年01月06日 00:41
    • >犬彦うがやさん
      マイナスの宣伝効果www

      >2さん
      次から次に出てくるネタ……。
      面白すぎですw

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