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インド社会から見た911テロ=『マイネーム・イズ・ハーン』とシャールクの円熟―インド映画評

2011年01月11日

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
新年1本目は昨年12月にリリースされた『マイネーム・イズ・ハーン』。

『マイネーム・イズ・ハーン』


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監督:カラン・ジョーハル(2010)
主演:シャー・ルク・カーン、カージョル
*アスペルガー症候群でイスラム教徒のリズワンはアメリカでバツイチで息子のいるマンディラと恋に落ち結婚する。9.11テロでマンディラの息子はイスラム教の名を持ったがゆえいじめられ、死亡してしまう。悲しみにくれたマンディラは結婚を悔やみ、リズワンに「大統領にテロリストでないと言え」と家から追い出す。リズワンは大統領に会うために旅にでる。
*当記事は映画から、ニュース、イベント、カレー、旅行など様々なインド・トピックスを扱うブログ「インド映画通信」の許可を得て転載したものです。

カランのチャレンジ、シャールクとカージョルの間に漂う独自の空気

シャールクとカージョルというのは何と収まりが良いのだろう。抜群の安定感で安心して観ることができる。二人の呼吸をするようなセリフのやりとりは独特の雰囲気をかもし出す。夫婦よりはもっと緊張感があり、恋人よりもお互いへの信頼感に溢れ、友達より愛を感じる。

だがカラン・ジョーハル(久保田利伸似)はわざと私たちの観たいものを見せてくれない。彼は当然インド映画を愛しているだろう。ただこれまでのような歌って踊ってのインド映画ではなく、もう少し世界に目を向けた作品を作るべく、暗中模索しているような気がする。今回もその実験的作品の一つであると思う。

ハリウッド的になりすぎず、インド映画の特色を生かしていくということで最近最も成功したのはアーミル・カーンの『3バカに乾杯!』だろう。それに比べるとインド色が弱い分、インド映画ファンにはちょっと残念だ。世界から何と言われようが、やっぱり同監督作品の『家族の四季』や『Kuch Kuch Hota Hai』みたいなのが観たいんだよな~、本音を言えば。

9.11テロを境にインド映画ではこれをテーマにした作品が多く作られた。多くはイスラム教徒が主役になっている。日本はメディアの影響もあって知らぬ間にアメリカ的視線で物事を捉えがちだが、イスラム教徒の多い国側からの視点も忘れてはならないと思う。

それをインド的オブラートに包みながら描いたのがこの作品だ。ステレオタイプのアメリカ人、出来過ぎなエピソード等、いかにもな表現も多いが全体的にはうまくまとまっていると思う。カラン・ジョーハルはそこを描きたかったのだろうと思うが、結論から言えばこの作品は年齢を重ねて培ってきたシャールクとカージョルの関係性を楽しむべき作品だと思う。二人の演技によって脚本以上の出来になったと思う。

シャールクファンが今回の役柄のような彼を観たかったかどうかはわからない。彼も40代半ばとなり、ロマンティックヒーローからの枠を破るべく、積極的に様々な役に取り組んでいるように見える。今回のアスペルガー症候群の役も違和感なく観ることができたのは彼の演技力がしっかりしているからだろう。もっともボリウッドでは還暦をゆうに過ぎた大御所のアミターブ・バッチャンですら今でもラブロマンスの主役を張れる。自分がファンの俳優と、その作品と一緒に自分が年齢を重ねていくのはそう悪くはない。

もうひとつ、この作品ではインド映画日本語字幕付き版で初めて吹き替えがついた。声というのは好みにもよると思うが、個人的にはカージョル役は割とあっていたが、シャールク役には若干の違和感を感じた。小ネタでは日本人が一瞬出演している。

この作品は当初レンタルのみであったが、好評だったためか、1500円を切る値段で発売が決定した。これは20世紀フォックスという大手映画製作会社が絡んでいるという理由が大きいものと思われる。Yash Raj Filmsなどのインド最大手であっても日本とのパイプがないとなかなか発売にこぎつくのは難しい。しかし今回のようなケースがある程度成功すれば、また「次」があるかもしれない。

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*当記事は映画から、ニュース、イベント、カレー、旅行など様々なインド・トピックスを扱うブログ「インド映画通信」の許可を得て転載したものです。
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