中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年01月26日
それに対し80年代以降に実施された「一人っ子」政策で、「小皇帝」と呼ばれ、余り大きな苦労もしないで育ち、改革・開放政策の恩恵を受けた若者が増加し ました。彼らの大部分は現在すでに成人して社会進出しており、70年代以前の世代の人たちからは80后(80年代以降生まれ世代)、90后(90年代以降 生まれ世代)として呼ばれています。そして彼らの世代から、しばしば流行語が生まれています。以前紹介した裸婚も彼らの世代から生まれた新語といえるで しょう。
2000年代初頭には、国営企業によるリストラの嵐により、下崗職工(リストラ従業員)という言葉が流行しましたが、2004年以降になると、それとは別 に「職業意欲のない無職の若者」、、いわゆる啃老族(ニート)と呼ばれる若者が社会問題化しました。まさに、老(親)に啃(かじる)というわけで、日本語 でいう「すねかじり」そのままの言葉です。この背景には、2000年初頭に吹き荒れた国有企業のリストラの嵐により、その被害をもろに受けた自分の親の世 代の人たちを彼らが目の当たりにし、社会に失望してしまったことがあります。また、70年代以前の世代のように、分配と呼ばれる新卒後の職業の保証もなく なり、加えて金融危機以降、新卒者の就職難の時代に突入してしまったことも原因にあるでしょう。
このような時代の流れに嫌気が差したり、自信を喪失したりした若者が家庭に引きこもったり、ネットカフェでオンラインゲームに没頭する現象が顕在化しまし た。そして彼らの親も、「小皇帝」である子供かわいさに、社会人になってからも自立しない彼らに対して、自分の年金やたんす預金まで切り崩して養う、とい う構図ができてしまいました。社会はこういった若者を啃老族、または吃老(親を"食べる”)族、 傍老(親にべったりする)族と呼ぶようになったのです。
80后(80年代以降生まれ世代)の若者をあらわす別の流行語としては、孩奴という言葉があります。これはどういう意味でしょうか。
小皇帝と呼ばれる80后世代も大きくなり、多くの人たちは結婚して家庭を持つようになりました。これにより、別の問題が出てきたのです。
彼らが小さかったころと違い、現在の中国の社会は物価も飛躍的に上昇し、人々の生活水準も著しく向上しました。「みなが貧しかった」ころと比べ、現在の社 会には各家庭に所得の格差ができることとなります。当然、人々の心の中には「見栄」が出てきて、「人様に見られてもはずかしくないように」という心理状況 になりました。
このような「見栄」を一番反映しやすいのは自分の子供です。これは万国共通なのかもしれません。かくして、80后世代の夫婦は子供を着飾り、子供をいい幼稚園に入れさせ、いい教育を受けさせ、はては外国に留学させようと奮闘することになります。
さらに昨今の住宅価格高騰で、子供に残したいマイホームの購入にたくさんのお金が必要になり、このことも80后夫婦の大きな悩みの種となったのです。
こうして、80后夫婦は子供の教育費や洋服代、住宅ローンなどの多額の費用を捻出するため、自分のやりたいことをすべてあきらめ、収入減になるからと転職 もあえてせず、「すべては子供のために」耐えて耐えしのぶ生活を送ることとなります。苦しさに耐えることが一番苦手な世代のはずなのに・・
このような80后世代の夫婦の状況を示す言葉として、孩奴(子供の奴隷)という流行語が生まれました。
今の若者が抱えている悩みって、日中共通なんだなぁと思えますよね。