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核兵器開発の愛国テレビドラマ絶賛放送中!その政治的メッセージとは?!―翻訳者のつぶやき

2011年02月08日

「愛国」テレビドラマが意味するところ

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テレビドラマ「五星紅旗迎風飄揚」の紹介


中国中央テレビの第一チャンネルで夜に放送されているテレビドラマを長いスパンで見ていくと、各テレビドラマのテーマが、そのときそのときの中国の政治・外交情勢を反映したものになっていることが分かります。

例えば、日中首脳が近く会談を行うならば、日中友好にちなんだテレビドラマが放送され、9月18日の満州事変の記念日前後は毎年必ず抗日戦争のドラマが放送されたりするのです。ですから逆に言うと、これらのテレビドラマをよく観察してみると、「現在の中国の政府・共産党の立ち位置」が見えてきたりするわけです。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の
記事を許可を得て転載したものです。


五星紅旗は風を受けてはためく

現在中国中央テレビの「新聞聯播」「焦点訪談」の後の「黄金時段(ゴールデンタイム=中国時間午後8時、日本時間午後9時から1時間)」に放送しているのが、「五星紅旗迎風飄揚(五星紅旗は風を受けてはためく)」です。

この名前、中国人の方ならすぐぴんと来るでしょう。中国の愛国曲「歌唱祖国(祖国を歌う)」の歌いだしの歌詞でもあります。また、これだけみればすぐに、このテレビドラマの内容が予想できる人もいるでしょう。

杭州網はこのドラマについて、「銭学森銭三強鄧稼先郭永懐の各氏がソ連の背信、米帝国主義の中国に対する核の脅威という国際的な背景の下、祖国が彼らを最も必要としているときに、国外、そして全国から集まり、世界を震撼させた『両弾一星事業』と展開した様子を描いている」と紹介しています。


両弾一星事業

「両弾一星事業」とは、中国が50年代から数十年にわたって行ってきた原子力爆弾、水素爆弾、人工衛星(核爆弾、ミサイル、人工衛星という解釈もあります)の開発事業です。当時の東西冷戦、中ソ対立という刻々と変わる世界情勢の中、「自力更生」の名の下、中国が核保有国、宇宙大国の道を歩みことを決定付けた事業でもあります。

ただその事業成功までの道のりはとても厳しいものだったようで、中国政府は以降、この科学者らの精神を「「両弾一星精神」と名づけて「愛国主義」「集団主義」「社会主義」「科学的精神」が一体となった象徴的精神として位置づけ、他の科学技術分野分野や高等教育、人材教育にもこの精神を「発揚するよう」号令することになるのです。

ともあれ上記の4人の科学者は、いずれも核爆弾、人工衛星、ミサイルの開発・製造に携わった人物であります。このテレビドラマは、いわば「両弾一星事業」をやり遂げる科学者の奮闘の過程を一般大衆に「ドラマチックに」見せ、毛沢東主席、周恩来総理がこの事業を大々的に支援する様子が描かれており、「愛国主義精神」をかき立てる内容になっているわけです。

またこのテレビドラマで特に目を引いたのはオープニングです。実際に中国の原水爆実験で撮影された映像を使用しているのです。その中にはきのこ雲が立ち込める映像や実験動物が爆風にさらされる映像がはっきりと写っています。まるで中国の核保有を誇示しているようで、第三者の私たちから見ると極めて異様に映ります。


今この時期に核兵器開発愛国ドラマを放映する意味

そんな「愛国的な」テレビドラマなのですが、わたしが注目したのはこのドラマが放映されている時期です。

このドラマは先月の1月26日から14集にわたって放送されており、今も放送中です。先の杭州網は、「中国共産党創設90周年、銭学森氏生誕100周年記念ドラマである」と紹介していますが、共産党の創設記念の関係活動は普通7月1日前後に行われますし、銭学森氏の誕生日は12月です。26日から毎日放送しても14集ですから2月下旬ごろには終わってしまうわけで、放送される時期は中途半端であることは明らかなのです。

わたしはここにもやはり、最近の軍部の意向を見てしまいます。「両弾一星事業」という「過去の軍の偉大な成果」を誇示することで、中国の軍事力の現状に対する世論形成をしたいという考えが党内に芽生えているのでしょうか。また、最近中国の国内でも話題になっているエジプト情勢により、民主化の波が国内に波及しないよう、「愛国」を極力強調して大衆の不満を抑えたいという政府の意向もここに含まれているのではないかとわたしは感じ取りました。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の
記事を許可を得て転載したものです。

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