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振り込め詐欺事件が引き起こした中国・台湾・フィリピンの政治対立―翻訳者のつぶやき

2011年02月09日

悪化する台湾とフィリピンの関係

*今回の記事はフィリピン、ベトナムなど東南アジアを拠点とした中国人犯罪者が、中国本土、台湾をターゲットにした「国際的振り込め詐欺」事件を背景としています。事件の概要については過去記事「振り込め詐欺の背後にあった驚きの事情=犯罪者が犯罪者を食い物にする」「これがIT時代の最新詐欺!国際的振り込め詐欺グループ152人を逮捕」をご覧ください(Chinanews)

現在ある事件をめぐって台湾が揺れています。

フィリピン国家調査局は昨年12月27日、中国公安部との協力の下、国外で金融詐欺(振り込め詐欺)を働いていたとして詐欺集団の犯罪容疑者24人を逮捕しました。この24人のうち、10人は中国大陸籍、残りの14人は台湾籍となっています。国際法の「国籍の管轄の原則」に基づくならば、台湾籍(中華民国籍)の犯罪容疑者14人は台湾のほうに送還されなければなりません。


Telephone Box [Shanghai] / d'n'c

しかし、中国は中国とフィリピンの犯罪者引き渡し条約を盾に、台湾人を含む24人の犯罪容疑者をすべて大陸側に引き渡すよう要求したのです。 結局2月2日、フィリピン側は中国側の要求を呑む形で24人全員を専用機に乗せ、中国大陸に送還してしまいました。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の記事を許可を得て転載したものです。

台湾の抗議

不満を爆発させたのは台湾側です。台湾は、このやり方は国際的な環境の下で中華民国の存在を無視するものだとして、台湾におけるフィリピンの政府出先機関、そしてフィリピンにおける台湾の政府出先機関を通じてフィリピンに強く抗議をしました。

フィリピンは7日に声明を出し、犯罪者の大陸への送還で悪化した台湾とフィリピンの関係について遺憾の意を表明し、台湾市民のこのことに対する不満を理解すると表明しましたが、同時に声明で、「この措置は詐欺の被害者が中国人だったこと、すべての共犯者が中国人だったこと、そして中国で処理したほうが最も効果的であることを考慮したものだ」とするフィリピン司法相の発言を引用し、フィリピンの今回の措置に対する正当性を主張したのです。

台湾は7日までフィリピンの態度表明を注視する姿勢をとっていました。しかしこの声明が出たことを受け、台湾外交部は7日、フィリピンにおける台湾の出先機関である駐フィリピン代表処の李伝通代表を今週のうちに召還することを決定しました。また、台湾に出稼ぎに来ているフィリピン人労働者の制限を含め、「台湾とフィリピンの交流関係を全面的に見直す」と表明したのです。


用意周到だった中国本土

台湾は大陸側に台湾人容疑者の送還を求めたとしていますが、大陸側からの返答は未だない状態です。このままでいくと中国が中華人民共和国の法律で、台湾人容疑者を裁くことになりかねないわけで、そうなると中華民国台湾の司法制度が根本から覆ることになります。

それだけは避けたいというのが、現在の馬英九総統を含めた台湾政府の考えなのではないでしょうか。代表を召還してまでフィリピンに強く抗議しているのはそのためだと思われます。しかし、馬英九総統は中国側に強い口調で犯罪容疑者の台湾への送還を求めておらず、今後どのような態度を取るのか注目されます。

この24人全員を中国大陸に送還するという措置ですが、フィリピン側は中国政府に対してすんなり「イエス」と言ったわけではないようです。その証拠に、中国外交部の宋濤外交部副部長、楊潔チ外交部長がそれぞれ、犯罪者引き渡し直前の2月1日に中国駐在フィリピン大使と会見しており、綿密な外交折衝が行われていたことが伺えます。逆に言えば台湾政府はそれだけの外交力を発揮できなかったわけで、台湾の「外交上の失敗」とも言えます。


フィリピンの事情、中国本土の事情

フィリピン側にも事情があったようです。昨年8月末に発生した香港の観光ツアーバス乗っ取り事件で、フィリピン側の手際の悪さもあり、一時期中国とフィリピンの関係が悪化しかけたときがありました。あのとき、フィリピンは、事件などで中国との経済・貿易上の関係を損ねるのは国益に適わないと考えたのでしょう。この反省を踏まえ、フィリピンも今回は大陸寄りの政治的決断をせざるを得なかったのだといえます。

しかしともあれ・・・台湾であれだけ大騒ぎしているニュースであり、「中国の外交上の勝利」となったニュースであるにもかかわらず、中国でこのニュースは現在、ほとんど報じられていません。「中国人犯罪集団であり、国際的にマイナスのイメージがあるニュースだから」と考えているのもひとつの理由でしょう。

中国政府の対台湾窓口組織である国務院台湾事務弁公室が、たぶん近いうちに談話を発表することになると予測されますが、そこでどのような措置が語られるかも注目すべきでしょう。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の記事を許可を得て転載したものです。

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