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中国人研究者、論文発表数は世界一!でも被引用率は世界100位以下なんです……orz

2011年02月12日

中国人研究者、論文発表数は世界一!でも被引用率は世界100位以下なんです……orz

という内容の記事が2011年2月10日付中国青年報に掲載された。レコードチャイナに一部訳が掲載されている。


南非国会图书馆 / shizhao


中国人科学者の論文、数は世界一だが被引用率は100位以下―中国紙
記事は、中国人科学者が発表する論文は数だけは多いが、価値のあるものはごくわずかだと指摘した。中国では論文の発表数が多い科学者ほど高い評価を得るという構図になっており、例えば大学で講師から教授に昇格できるかどうかも論文の数で決まる。だが、重視されるのは「数」のみで、その「質」は問われない。

武漢大学の調査によると、中国の科学技術系の論文を売買する市場規模は08年までの3年間で約5倍の成長を遂げた。あまりの惨状に危機感を感じた中国教育部は09年3月、論文の盗作を検出するソフトを大学200校に配布している。だが、そんな努力も空しく、同年12月には江西省・井岡山大学の講師2人が国際科学誌に発表した論文70本がねつ造であることが発覚し、世界に衝撃を与えた。
ちなみに記事中にある井岡山大学の捏造論文事件についても、以前にレコードチャイナが報じている(参照リンク:<捏造>中国人研究者の問題論文が国際学術誌に!70本の掲載撤回―中国


本当に世界一と世界100位以下なのか?

さて、中国青年報の記事「中国論文発表数は世界一に=引用率は100位圏外」(2011年2月10日)を見てみると、正確な記述は以下のとおり。

最新のメディアデータによると、中国科学技術研究者が発表した雑誌論文の数は米国を抜き、世界一となった。しかしこれらの科学研究論文の平均引用数は世界100位圏外。本当にすばらしい論文は中国ではまだまだ希少だ。
なんとも曖昧な書き方だが、雑誌論文の数、そして被引用率の統計は、トムソン・ロイターの提供するデータベース「サイエンス・サイテーション・インデックス」(SCI、ウィキペディア日本語版)を指すものだろう。国際的に広く用いられている指標であり、かつ中国では大学及び研究者の評価として利用されている。

ところがSCIの統計で中国が論文発表数世界一になったというニュースが見当たらない。もっと大騒ぎされてしかるべきのニュースなのに、だ。2010年12月1日付中国網日本語版によると、2009年にSCIに収録された中国の学術論文総数は世界2位。工学技術文献 (Ei Compendex)的では世界1位だという。このあたりが「世界一」の根拠だろうか。

さて気になるのは引用率100位圏外という話。中国語と英語で軽くググってみたところではソースが見当たらない。工学技術文献のデータベースにアクセスすればすぐに算出できるのかもしれないが、残念ながらアカウントがない(笑)。

2010年11月27日付科技日報には、SCIの統計が掲載されている。2000~2010年の累計で、中国の平均被引用数は5.87回と世界平均10.57回とは大きく引き離されている。論文掲載本数20万本を超えた14カ国中12位の成績だったという。欧州など人口が少なくとも研究レベルが高い国を入れると、これで100位以下になるのだろうか?


中国当局も認識していた粗悪論文量産という問題

正直、中国青年報の書き方が曖昧すぎて、あげられている数字が信頼できるのか疑問符がつくのだが、ともあれ「論文の数は多くても質が低い」という問題は中国でも認識されているようだ。上述の科技日報によると、中国科技情報研究所による中国研究機関及び大学のランキングでは、論文掲載本数の項目が取り消され、被引用回数が採用されるようになったという。同研究所トップは「これを機に各機関は本数ではなく、論文の質により注目するようになって欲しい」と語ったという。

私は文系畑なので理系のことは正直よくわからないのだが、文系の中国人研究者のプロフィールを見るといつも驚く。というのも発表論文数が異常に多いためだ。よく見ると、原稿用紙2枚ぐらいのエッセイまで入っていたりして、おいおいとツッコミたくもなるのだが……。

まー、それもこれも中国の大学研究者はピラミッド制になっていて、業績を上げなければ昇進できないため。しかもえらくなると経費使いたい放題というステキすぎる特典がついてくるので、ついつい頑張ってしまうのも無理からぬところだろうか。

2011年1月19日付中国青年報は記事「住宅ローン奴隷の博士、論文1本2万元で販売」を掲載している。博士課程を卒業し製薬会社に就職した博士号取得者が「博士時代の実験でSCI掲載クラスの論文が10本は書けるぜ。よっしゃ売ってやろ!」と思い立ち、ネットショップを開いたという話。お値段は1本2万元(約25万円)。ここ1年で販売した論文のうち、8本はSCI収録雑誌に掲載されたという。いや、それだけの能力があるならば、トップクラスの研究者になれると思うのだが。

近年、中国学術界にスキャンダルが絶えない。盗作、論文の二重投稿、学歴詐称(ディプロマ・ミルでの学位取得)などの問題が山積しているのは事実だろう。そうした状況をどのように是正できるのか。論文の被引用回数を指標とするぐらいではすぐに抜け道が見つかるように思うのだが……。

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