中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月19日
2010年の海洋監視状況
そのような中、国内メディアから、2010年度の海洋監視の状況について国家海洋局中国海監総隊から発表されました(14日付法制晩報)。中国海監総隊の発表によると、海洋監視船の2010年における出動回数は延べ160回、航行距離は21万海里、海洋監視機の出動回数は延べ523回だったとされています。海洋監視船が巡航し た範囲は、北は鴨緑江河口、南は曾母暗沙、東は沖縄トラフ、西は北倉河(ベトナムとの国境の川)河口まで及んだとし、中国海監総隊「この巡航範囲はわが国 が主張するすべての海域をカバーしている」と指摘しました。
この言葉は言い換えれば、「これが中国の領海の範囲です」と改めて主張したことを意味するのでしょう。昨年あれほどもめた尖閣諸島の領有権争いですが、日 本の海保が尖閣周辺の監視を強化したにもかかわらず、依然として尖閣の東側に位置する沖縄トラフに中国の海洋監視船が入り込んでいることはやはり、日本に とっては防衛上かなりの不安材料になります。
さらに中国海監総隊は「曾母暗沙に主権を示す碑を投入し、わが国の海洋権益を効果的に擁護した」と表明しました。曾母暗沙は南沙諸島南側に位置するさんご礁で、マレーシアの排他的経済水域となっています。ここに主権碑を投入する行為は当然マレーシア側からの反発があるわけで、この碑をどう取り扱うかが中国 とマレーシア、ひいては東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係に深く影響を及ぼすことになりそうです。
2010年は北方重視だった?
また興味深いのは、中国海監総隊が「中国海監南海総隊は延べ31回出動し、西沙諸島・南沙諸島などの海域で定期巡航活動を行った」と発表したことです。
冒頭で発表したように、この海域に対する定期巡航活動は毎年行われるので珍しいものではありません。しかし昨年1年間の総出動回数延べ160回のうち、定 期巡航に伴う出動はわずか31回だったわけで、残りの実に100回以上は尖閣や渤海湾辺りの北方に費やされていることがわかります。それほど中国にとって 2010年は、「尖閣や渤海湾の防衛にてんてこ舞いの1年」だったことが予想されるのです。
ご紹介した記事には具体的な数字が多く目に付きます。中国のニュース記事では、事件や事故、政府の政策に対して断固取り組んでいることをアピールするた め、具体的な数字を列挙するケースがよくみられます。これは、「数字は口よりも物を言う」という考え方から来ていると言えます。このことからも、「中国が 昨年自国の海洋権益を守るためにこれほど多くのことを実行したのだ」ということをアピールする姿勢、そして逆に言えば海洋権益確保にあせる中国の気持ちを 私は強く感じました。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。