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<中国ジャスミン革命>警察が外国人記者を暴行・拘束=外交部記者会見は大荒れに―中国コラム

2011年03月02日

記者会見と動画で分かる、ジャスミン革命への警戒心

久しぶりに外交部の定例記者会見が盛り上がったようです。

20110302_press
中国外交部HPより。動画あり。

外交部の定例記者会見は、毎週火曜と木曜の午後に行われ、まず外交部から用件を伝えた後、「では質問どうぞ。何でも答えますよー」。

最初にそう言っているにもかかわらず、当日の夜にテキスト起こしされたのを見ると、問答3つとかそういう時代もありました。そういう時は、大幅に削られているのがオチです。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

2011年3月1日外交部定例記者会見(外交部公式サイト)
昨日(3月1日)は2月27日に中国各地で発生したジャスミン革命を、取材していた海外メディアの記者が拘束された件について、出席した記者から質問が相次ぎましたが、外交部公式だとこんな感じ。

記者 :先日、一部の外国人記者が取材中に公安と衝突したが、中国は事件再発防止に何か措置を取っているのか。

姜瑜 :外国人記者は中国では中国の法律を遵守すべきだ。関係機関は法に基き必要な措置を取るのは、公共秩序と公共安全維持のためである。

中国政府が法に基き、外国人記者の合法的な権益を保障する政策に変更は無いことを再度強調しておきたい。我々は継続して外国人記者のために法に基き、合理的な取材に便宜と協力を図っていきたい。

各国記者には中国各地で取材する際、現地の法律を守り、地方の関係機関との連絡と協力を強化し、共同で良好な取材環境を保つよう望んでいる。

中国の身内の記者に当たり障りの無い語句を使って質問をさせて、公式回答をしたという印象です。質問した記者は当事者ではありませんから、どこか質問の内容も他人行儀ですし。

実際は
■アメリカ人記者が公安の私服5人に拘束され、暴行を受け、撮影した映像を消去される

■台湾の聯合早報記者が記者証を携帯しておらず、拘束されて携帯を没収される

■BBC記者とカメラマンが髪の毛を引っ張られながら公安車両に押し込まれた

など、日本人記者以外にも被害を受けていたのですが、これらの記者の扱いについて激しいやり取りがありました。


・各メディアの報道
外交部、記者は王府井の秩序に深刻な影響を与えた(星島日報)
(姜瑜報道官)記者が取材規則を守らず、長時間、大規模に王府井に集まったのでは秩序に影響する。取材は中国の法を尊重し、協力すべきだ。

大学が学生の集会を禁止、重慶で2人拘束、外交部は記者への暴行は「事実の歪曲」と主張(明報
(姜瑜報道官)記者は、長時間、繁華街にとどまり撮影を続けるなど秩序に影響したため、公安は法に基づき往来を整理しただけである。

ホワイトハウス、中国政府は外国人記者の取材の権利を尊重するべきと呼びかけ(商台)
(姜瑜報道官)公安は、法に基いて調査したと信じている。

台湾の聯合早報によると、記者会見は史上最長となる1時間半もの間続いたとのこと。20人以上の記者が同じ質問を浴びせ、姜瑜は、「王府井の件については聞かないで」と再三にわたり注意したと報じています。まともに答えないから、そういう目にあうんでしょうけど。


【動画】北京警察、BBC記者に粗暴な振る舞い(BBC中国語版)

「中国ジャスミン革命」集合である午後2時を前に、国家安全部がカメラのレンズをふさぎ、カメラマンを警察車両に無理やり押し込める様子が豪快に撮影されています。ジャスミン革命に対して当局が何をやっているか、これほど分かりやすい映像はありません。これが、姜瑜タソの言うところの「法に基づいた調査」というやつです。記者たちは本人から実情をあらかじめ聞いており、質問責めにしたのでしょうか。

国家安全部の説明では「この地域での撮影は特別な許可証が必要」とのこと。正月に私が撮影していた時は、国安など来ませんでしたが。


海外メディアが相次いで殴打事件を質問=姜瑜「もう聞かないで」(聯合早報)
  
「事件はあくまでも記者側に問題があったために起きた。記者は事件を報道する存在であり、事件を起こすためにいるわけではない。記者は国務院第537号令を遵守せよ」というのが姜瑜報道官の主張。

国務院第537号第17条によると、「境外(台湾、香港、マカオ含む海外)記者は取材時に取材対象者、個人の同意を得るものとする」と規定されているそうです。今日初めて知りましたが、今後はこれを厳格に運用し記者を拘束していくと暗にほのめかしているようにもとれます。

上記サイトに掲載された動画からも、姜瑜タソが苛立っている様子が分かります。


王府井事件で外国人記者を叱責(BBC中国語版)  
(姜瑜報道官)これほど多くの記者が、何も起きていない繁華街に集まり通行を邪魔することなど、あってはならない。これほど多くの記者が集まった背後には、誰かがいるのだろうか。
と、いつもの陰謀論を展開し始めたところで、ある記者から「今の言い方だと、反中の陰謀だと言いたいように聞こえる」との声が。先日紹介した環球時報の社説では「革命など起きていない」と冷静を装う風ではありましたが(過去記事参照)、参加者だけでなく、それを報じようとする記者の対処に頭を悩ませているのは間違いないですね。

まあ、記者は生活がありますから無謀な事はしないでしょうし、数にも限りがあります。怖いのは公安などではとてもカバーできないくらい人数がいる学生です。


大学が学生の集会を禁止、重慶で2人拘束、外交部は記者への暴行は「事実の歪曲」と主張(明報

ツイッターによると、一部大学では学生の集団外出制限(少しずつ外出させる)、異常な行動があればすぐに報告することなどを職員会議で決定したとのこと。

現状の「中国ジャスミン革命」は、いわゆるヘビーユーザー(中国がいうところの「一部の人間」)に支えられている運動ですが、これがライトユーザー(この場合は学生)に波及するのを恐れているのは、漁船特攻事件の後と同じですね。前回のエントリーでも書きましたが、反日デモは世論が政府を後押しする側面もあったので、禁止しづらい面もありました。今回は、革命の目指すところは政府とは逆ですから、余計に面倒といえるでしょう。

まだまだ始まったばかりのジャスミン革命ですが、党中央が相当神経を尖らせているのは分かりました。持久戦になりそうなので、しばらく注目して行きたいと思います。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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