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2011年03月03日
なぜ中国ではリコールを実施しない?当局の異例のコメント
24日に開催された国家品質監督検験検疫総局の定例記者会見で、李元平報道官は「米国、欧州でリコールを実施するのになぜ中国でリコールを実施しないのか」と発言。トヨタに説明を求める方針を示した。その後、トヨタは国家品質監督検験検疫総局に接触。結局、定例記者会見から2日後の26日にレクサス5202台のリコールを実施すると発表した。
トヨタ側は、中国で販売している製品には欠陥がある部品、エンジンを使用していなかったためと説明している。日本市場でもリコールは実施されていないことを考えれば、決して不思議なことではないように思われる。しかし、中国では「外国人は中国に質の悪いものを売りつける」「いつも割を食っているのは中国人だ」という考えが根強い。トヨタの発表がそうした猜疑心に火を着けたことは間違いない。
トヨタは「手打ち」できたのか?
国家品質監督検験検疫総局の異例のコメントは、わずか5000台とはいえトヨタのリコールにつながった。「消費者の権利を守る」お役所としては大成功といったところだろうか。問題はトヨタの対応が正しかったかどうかだ。環球網の「トヨタは中国人消費者を差別=「部品が異なる」の説明は言い訳の疑いも」と題した記事が筆頭だが、他メディアでもトヨタの「誠意」を疑う報道が続いている。
トヨタは否定しているものの、当局に叱られた2日後にリコールを発表したとあっては、「手打ち」のためのリコールと見られても仕方がないところ。問題は「手打ち」に効果があったかどうかだ。「当局にしかられてしぶしぶリコールした」と見られては、よりいっそう企業イメージを落とすことになるだろう。
粘り強く、自社の主張が正当であると社会にアピールするべきだったようにも思うが、問題を長引かせれば悪影響はより拡大するとの判断も決して間違っているとは言えない。
ネットでの風評被害は今や「両会」(全国人民代表大会、全国政治協商会議、日本の国会に相当)でも取り上げられるほど。今回の問題は、中国での企業イメージ戦略の難しさを改めてクローズアップするものとなった。