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「台湾にお礼しないなんてひどい!」は誤解?!菅首相の感謝状は何が問題だったのか?

2011年04月15日

2011年4月11日、東北関東大震災発生からちょうど1カ月を迎えたこの日、日本政府は海外からの支援に対する感謝状を発表した。本来なら心温まるエピソードとして受け止められそうなものだが、なぜか批判の声が上がっている。


Taiwan / www.steveconover.info



日本国内での批判

批判の一つは日本国内から上がったもの。(1)感謝状は6カ国7紙の新聞に広告として掲載されたが、100億円以上という桁外れの震災義援金を集めた台湾が除外されているではないか。(2)在中国日本大使館ウェブサイトにアップされている感謝状には中国による支援の具体的な内容が掲載されていないではないか。以上2点がポイントのようだ。
(参考リンク「菅首相の「謝意」各国の新聞に掲載 100億義援金の台湾除いた理由」JCAST、2011年4月12日

政府の不手際を民間でカバーしようと、ネットでは有志によるお礼の新聞広告を掲載しようという動きも進んでいるという。
(参考リンク「「台湾に義援金お礼広告出したい」 デザイナーの呼び掛けに賛同者多数」JCAST、2011年4月13日


中国本土からの批判

そして中国本土からの批判もある。12日付台湾紙・自由時報は、「日本首相の感謝状に「中国」の文字なし=中国ネット民は発狂」という記事名で報じている。(1)人民日報に掲載された感謝状には「中国」の二文字が入っていないのに、台湾の日本交流協会ウェブサイトにアップされた感謝状には「台湾」と書かれている。(2)感謝状のタイトル「絆」の訳が台湾版では「厚重情誼」(深い友情)なのに、中国版では「情誼紐帯」(友情の絆)という中国語としてはあまり通りがよくないものになっている。以上2点が批判点として挙げられている。

さて、日本の批判と中国の批判とを見比べると、不思議な矛盾に気がつくことになる。日本の批判は「中国の支援は具体的な内容が挙げられているのに」と怒り、中国本土の批判は「中国について一言も触れられていない」と怒っている。これはいったいどういうことだろう?


新聞広告版とウェブ版の違い

まず感謝状について簡単に抑えておこう。新聞広告は米国のウォールストリートジャーナル、英国のフィナンシャルタイムズ、フランスのル・フィガロ、中国の人民日報、ロシアのコマーサント、韓国の朝鮮日報、そして国際英字紙ヘラルドトリビューンの7紙に掲載された。選ばれた6カ国は安保理常任理事国プラス韓国という構成。台湾が抜けたことよりも韓国が入っているほうが説明がつかないようにも思う。

そして現在、在中国日本大使館ウェブサイトには、「絆」と題した感謝状が掲載されている。「あー、これが人民日報に載ったんだ」と思うのは早合点。なんと人民日報版「絆」と大使館版はタイトルは一緒でも内容が全然異なるのだ。同じタイトルで中身が違う感謝が存在すること、これが混乱の元となった。

フランス語やロシア語まで読む力はないのだが、英語版(インディペンデント掲載の全文)と人民日報版を比較したかぎり同一のもの。新聞掲載は7紙を完全に同一内容にしたのではないだろうか。そして大使館版、交流協会版は各国の具体的な支援に触れている(代わりに「一杯のスープが、1枚の毛布が、冷えた心と体を温めてくれました」云々の下りを削除)。

大使館版は「3月13日にただちに国際救援隊を派遣し、3000万元相当の物資及びガソリンと軽油各1万トンの無償提供」と中国の支援内容を列挙。交流協会版では「地震発生後、ただちに28人の隊員からなる緊急救援隊を組織し、400トンもの救援物資を提供。また多くの巨額の援助金と無数の激励と慰問をいただきました」とお礼しており、ウェブサイト掲載分を見比べたかぎり中国に対するものも台湾に対するものも、どちらも相手の支援に触れている。


何が問題だったのか?

となると、今回の感謝状で何が問題だったのだろうか。思うに「新聞掲載」という手法そのものに無理があったように思う。

上述したとおり、安保理常任理事国プラス韓国の新聞にだけ掲載するという理屈もよくわからないし、そもそも広告を打った国でもわずかに一紙のみ。その新聞を選んだ基準もよくわからない。例えば日本に感謝の広告を出す時、朝日と読売どっちかだけというのは難しいのではないか。ましてや中国の人民日報なんて一般人は読まない新聞だ。

もちろんだからといって、世界130カ国の主要紙に全部広告を出すことなどできない。ただ残念なことに現在、日本は国際社会の注目を集める存在。今回の感謝状も掲載費を払っていない新聞もすべて取り上げているはずだ。だとすると、最初から新聞広告にする必要はなかったのではない?プレスリリースを打って、各国大使館で記者会見をして、感謝状をウェブサイトで公開するだけで良かったのではないか?

あるいは今、流行りの(?)ツイッター、フェースブックを活用してもよかった。菅直人首相が動画メッセージで各国国民に感謝の言葉を言っても良かっただろう。ともかく今は日本の情報、メッセージは高いニュースバリューを持っているのだ。わざわざお金を払って、しかも公平感に欠ける新聞広告にする必要はなかったはずだ。

今回の感謝状について、もし日本政府の対応に問題があったとするならば、ちまちまと新聞広告を打ったことにあるように思う。やるならばもっと大々的にやるべきだったろうし、新聞を使わなくても(そしてお金を使わなくても)同等以上の効果を得ることはできたはずだ。


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トラックバック一覧

  1. 1. お互いに半分ずつの糸を結び合うからです。

    • [やうちさん、ニュースだよ!]
    • 2011年05月13日 22:02
    • あの地震からはや2ヶ月が経過しました。 ―――と、珍しく情緒的な書き出しを試みた...

 コメント一覧 (5)

    • 1. アレックス
    • 2011年04月16日 01:08
    • 日本大使館の前に貼るとか政府に感謝文を渡して公表してくれって頼めばよかったのに・・・。
    • 2. Chinanews
    • 2011年04月21日 17:28
    • >アレックスさん
      もっといい方法、あったと思います。
    • 3. 名無し
    • 2011年04月22日 19:36
    • 新聞広告を出す案は、右派の危機管理専門家、佐々淳行がテレビで政府にやったほうがいいと言っていた。
      同時に佐々は早々に福島視察したことについては、悪くないと是々非々の立場から持論を述べていた。
    • 4. Chinanews
    • 2011年05月05日 01:22
    • >3さん
      なるほど。どうせたいしたコストでもないでしょうし、出しちゃった萌芽危機管理の面ではいいということなんでしょうか。
    • 5. 女教師白墨授業
    • 2013年10月27日 12:28
    • そもそも感謝状なるものを支援してくれた国々に送る必要などない。
      緊急の事態だからこそ支援を受けて助けてもらったのだから、その事態が収束するまで感謝を表明しなくても、できないと了承してくれるのではないのか?
      第一支援した国々とその国民は感謝状が欲しくて支援したわけではないだろう。
      新聞広告に金を使えば逆にそんなに緊急でもなかったし余裕があったんだと思われるだけだ。
      もし君の友人が貧窮に苦しんでいるのを君が憐れみ、返済されることを考えずに金を貸したとしよう。
      その友人が貧窮から脱していないのにお礼をしに高価な菓子折りを持って訪ねてきたら、君は素直にその友人の感謝の念を信じることができるかね。
      つまりそういうことだ。
      日本の政府はやらなくて良いこと、やるには早すぎることをやって無用のトラブルを招いたのだよ。
      この一件で得をしたのは民主政権叩きの材料を欲しがっている反民主勢力くらいのものだろう。

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