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【動画】強制土地収用に抗議の焼身自殺=人が死ななきゃ家が守れない国―中国湖南省

2011年05月03日

2011年4月22日、湖南省株州市で、政府の土地強制収用に抗議していた男性が、焼身自殺する事件が起きた。一部始終を納めた動画がネットに出回り、波紋を呼んでいる。

亡くなったのは汪家正さん(58歳)。強制執行当日、自宅の屋根に登り、体をはって家を守っていた。しかし、当局側は汪さんを尻目に取り壊しを強行。ショベルカーが無慈悲に住宅を壊していく。意を決した汪さんは用意していたディーゼル油を頭からかぶった。その後、自ら火を着けたのか、それとも足をすべらした際に火が着いてしまったのかは不明だが、全身が炎に包まれ、屋根から転げ落ちた。病院で治療を受けたが、4月29日、死亡した。

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*画像は炎に包まれた汪さん。


【閲覧注意】汪さんの焼身自殺動画。



いつもどおりの無法な土地収用

昨年9月、江西省撫州市宜黄県で、強制土地収用に抗議した住民3人が焼身自殺し、1人が死亡する事故が起きた。また10月には黒竜江省密山市でやはり老人が強制土地収用に抗議して自らの体に火を着けた。いずれの事件も大きな反響を呼び起こし、宜黄県の事件では県政府トップが解任されるほどの騒ぎとなった。しかし、今もなお中国各地で同じことが繰り返されている。
(記事「中国官僚の本音を聞いてみよう!経済成長の秘訣は庶民の土地を巻き上げることにあり」「土地収用に抗議の焼身自殺か=警官隊に囲まれる中、自らの体に火を着けた……」参照)。

汪さんが住む湖南省株州市横石村の土地収用も、きわめて典型的な土地収用絡みの問題だったようだ。その経過は以下のとおり。

・村長が村民に隠したまま、当局と土地引き渡し協議に同意。
・公告が出て驚く村民。
・あまりに安い補償金。同レベルの宅地を購入することが不可能なレベル。
・ついでに農地まで取り上げられてしまうので、今後の生活の糧も失われる。
・大学の職員宿舎、学生寮建設名目のプロジェクトだが、実際はマンション建設が狙いと見られる。
・大規模な農地収用に必要な国の認可が得られていない違法プロジェクト。
・現地裁判所に訴えたが、市政府とグルなので当然の如く敗訴。

人が死ななきゃ止まらない土地収用

汪さんが炎に包まれる、きわめて強烈な動画が出回ったこともあり、世論は事件に注目した。大手メディアの報道も続くなか、当局は強制土地収用の手続きをストップしたという。恐らく今後は事件のほとぼりが冷めるのをまって、補償金を引き上げて遺族や他の村民と協議を締結するというおきまりのパターンになるのだろう。

日本人的に勘違いしやすいのは、農民たちは決して「先祖代々の農地。絶対に人に譲るわけにはいかぬ」という態度ではないということ。立ち退きそのものには同意しても、補償金の金額で折り合わないというケースがほとんどなのだ。再開発でぼろもうけできるのだから、当局ももうちょっと色を付けて補償金を支払えばいいのだが……。

宜黄にしても、今回の件にしても、広く知られるようになった事件では、当局が妥協するケースも少なくない。だが、その影では知られることなく、厳しい条件を飲んでいる農民たちが数多く存在する。当局との条件闘争に勝利するためには、世間の注目を集めることが必須。昨年からの流れでは、家を守るためには誰かが焼身自殺しなければいけないという悲しすぎる結論が見えてくる。



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