中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年05月10日
騒動の背景
『北京青年報』によると、行列ができるのはアップルもわかっていたことで、徹夜組のために毛布や椅子を準備したり水を配ったりと、手厚い配慮を示していたようです。
さて、問題の背景にあるのが転売屋の存在。『京華時報』によると、1人50元(約630円)で行列に並ぶアルバイトを雇っていました。転売屋は200~300元(約2500~3750円)の利ざやを載せて販売しているそうです。
アップル側の視点に立てば、としては転売を制限しようとしたところ(もしくは、列の割り込みを制限しようしたところ)、騒動となった。騒ぎ出した者がアップルショップのガラス戸を割ってしまい、それに怒った外国人従業員が殴りかかった(もしくは従業員が殴りかかって、より激しい騒動となり結果としてガラス戸が割れてしまった)という筋書きが一番スジが通っているのではないでしょうか。
外国企業をやり玉に?!
ただ、外国人が中国人に対して起こした暴行事件ですので、中国紙報道はかなり中国に偏った報道になっています。8日付北京晨報』の記事では、「突然店から飛び出してきた体の大きい外国人が、並んでいた痩せ型の背の低い青年をいきなり殴りつけた。何度も殴りつけた揚げ句、地面にたたきつけた。その殴ってきた外国人は英語でなにやら話していたが、その内容は誰もわからなかった」とかなり一方的に報じています。
あまり状況がよくわかならないまま、被害者に話を聞いただけで記事にしたのではないか、と。その翌日になると、大分落ち着いてきます。9日付『北京晨報』は双方の言い分を掲載。割り込みや転売屋などの秩序を守らない行為があったので殴ってしまったという外国人の見解を紹介しています。ちなみに警察が現場の監視ビデオなどを調べたところ、割り込みがあったのは間違いなかったとのこと。ただ、殴られた男性が転売屋かどう
かは確定できないと指摘し、殴打した外国人男性に厳しい見方を示しています。
最終的に治療費と慰謝料を含め2万元(約24万9000円)をアップルが支払うことで、和解が成立したそうです。ただ、警察沙汰となったことを考えると、アップルの被ったイメージ被害はかなりのものとなったのではないでしょうか。中国での商売には、思わぬチャイナリスクがあると今更ながら思い知らされました。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。