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「中国式原発は日本よりも安全」原発推進路線を堅持する中国―翻訳者のつぶやき

2011年05月19日

原発推進の先頭に立とうとする中国

未だ収束の兆しさえ見えない福島原発の事故。これまで何回も取り上げてきましたが、中国政府も、日本の原発事故対応を注視しています。


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さて、最近の中国メディア報道では、中国原発を評価する論調が目立っています。「中国の原発では、福島原発のような事故は起きない」と強調しているのです。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。


「安全は大事」だが、「原発拡大路線は維持」するべき

安全報道が強化されたのは、5月11日以降。東日本大震災発生から2カ月を迎えたこと。また、12日に東電が「福島第1原発1号機のメルトダウン」を認めたことがきっかけとなったようです。この発表に前後して、中国では、専門家による原発に関するセミナーが相次いで開催されています。

11日、中国エネルギー協会は北京で「福島原発事故が中国の原子力発電の発展に与える教訓に関するシンポジウム」を開催しました(*経済参考報の報道)。

席上、専門家や業界関係者は、「福島原発事故は、安全第一の重要性と、建設中及び建設予定の原発に対して全面的な安全検査を行う必要があることを示している」と呼びかけました。その一方で、「国の第12次5カ年計画における原発発展の政策を変えるべきではない。安全確保を基礎として、原発を高い効率で発展させなければならない」と指摘しています。

翌12日に開催された「第7回中国原子力国際大会」でも、多くの専門家が「2020年までに発電量を7000万キロワット以上にするというわが国の原発発展に関するロードマップは大まかに明らかになっている」と述べています。


全原発の安全検査を実施

3月16日に開催された国務院常務会議では

(1)直ちに国内の原子力設備に対して全面的な安全検査を行う。
(2)稼動中の原子力施設の安全管理を適切に強化し、運営管理をしっかり行う。
(3)建設中の原子力発電所を全面的に検査し、安全性の評価を行うとともに改善する。安全基準に合致していないものは 直ちに建設を取り止める。
(4)新たな原発建設プロジェクトについては許認可を厳格化する。
という、いわゆる「原発発展の国家4条」が制定されました。その後、新規原発プロジェクトの許認可は一時的にストップされ、また稼働中・建設中の原発に対して全面的な安全検査が実施されました。検査は5月末終了の予定。その最終報告を受けた後に、新規原発プロジェクトの許認可再開が予定されています。


安全基準厳格化も「原発拡大」の流れは維持

「第7回中国原子力国際大会」では、国家原子力エネルギー機構国際協力協調委員会の鄒樹梁委員が「原発の緊急時における安全設計はおおむね基準に達している」と発言しながらも、「多くの発電ユニットは、(福島原発事故のような)極端かつ多重的な自然災害の事故に耐えうる能力を持っていない」と指摘。「原発発展計画と平行して、原発の安全計画を策定している」と明かしました。今後は国際基準以上に厳格な基準を制定する方針を表明しています(*中国証券報の報道)。

また、鄒委員は「新規原発プロジェクトの許認可については、従来以上に厳格な基準を設ける」と説明しました。

厳格化に伴い、新規プロジェクトが停滞するとなれば、2020年までに原発発電量を7000万キロワット以上にするという目標の達成が危ぶまれます。しかし、中国原子力エネルギー業界協会の徐玉明・副事務局長は、「稼働中の原発に建設中の原発を加えれば、目標はほぼ達成される」と自信を見せています。

13日にはアモイ大学で「原発の安全・技術と原子力プロジェクトの教育」と題するシンポジウムが開催されました。同会に出席したミシガン大学の王鲁閩氏は中国新聞社の取材に応え、「中国の原発で採用されている第二世代原発の技術は、日本の第二世代原発技術とは異なるもの。日本よりも安全性は高い」と胸を張りました。


日本を反面教師に

福島原発の放射能汚染水排出について、中国政府は厳しく批判しました。一方で、汚染水排出以外の日本の対応については、「静観」を貫いています。日本の対応を教訓として、国内の原発政策に取り入れたいとの思いがあるのではないでしょうか。

14日付環球時報は、「原発政策を闇雲に進めてきた日本は、反面教師になった」と評しています。日本と同じように原発政策を闇雲に推し進めてきた中国ですが、「日本のようにはなってはならない」という気持ちがあるのでしょう。

原発見直し論さえ政府の声で押しつぶしてしまう中国。世界では反原発の動きが広がりつつある中、世界で唯一の原発推進国となりかねない状況です。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。

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