• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

低・中所得者向け公共住宅1000万戸着工=政府目標に黄信号―翻訳者のつぶやき

2011年06月07日

まさに綱渡り状態になっている中国の住宅不動産政策

中国の住宅不動産政策が行き詰まりの様相を見せています。

今年の第11期全人代第4回会議の席上、温家宝総理は今年の10月までに「保障性住宅」1000万戸の建設の着工を実現させるとの目標を提示しました。通常の「商品住宅」とは異なり、「保障性住宅」は住宅を買えない中低所得者層向けの廉価な分譲マンション(経済適用住宅)、安価な賃貸マンション(廉価賃貸住宅)を指します。


公寓 / QiFei


*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。


■保障性住宅1000万戸建設の目標は実現不可能か

昨年までの不動産バブルでは開発業者はこぞって「商品住宅」を売り出す一方、それを投資対象として多くの投資家が土地ころがしを行った結果、ほとんどの人にとって住宅は「高嶺の花」になってしまいました。

このため、このような投機目的の住宅売買を防ぎ、すべての人に住宅が行きまわるようにすることを目的として、政府は今年から「商品住宅」の供給を厳しく抑える一方、「保障性住宅」の建設に取り組もうとしているわけです。

しかし新華網によると、「保障性住宅」建設は遅遅として進んでいません。5月末時点で、上海での保障性住宅の着工率は経済廉価住宅に絞ると25%、江蘇省における保障性住宅の着工率は5月末の時点で30%に留まっており、多くの都市では目標のわずか3割近くしか着工していないと新華社は報じています。

建設を請け負う業者が着工にまでこぎつけるまでには、多くのハードルがあります。「国有地使用権証」「建設用地計画許可証」「建設プロジェクト計画許可証」「建設プロジェクト施工許可証」といった4つの許可証を取得するにも最低で4カ月かかるといわれています。さらに銀行での融資が認可されるまでに2カ月。あと5カ月弱しかありません。10月の目標時間まではもう「ぎりぎり」だということが良く分かるのではないでしょうか。


■不動産開発業者の資金難

「保障性住宅」建設にあたっては、住宅の建設を請け負う業者は融資の金利面でも多くの優遇を受けられます。政府はこの優遇で業者の建設を奨励しているわけですが、それでも開発業者が渋る理由。その1つが今年に入って相次いで行われている預金準備率の引き上げです。

これによって銀行は、資金確保のために企業に融資している資金を回収する必要性に迫られたばかりか、企業への貸し渋りを始めているのです。さらに、貸し渋りによって通貨供給が減り、銀行の金利が上がってしまっています。いくら「保障性住宅」に金利優遇政策があっても、貸し渋られては業者は金利優遇政策も受けられませんし、金利が上がってしまえば優遇政策も無意味になってしまいます。

結果、「保障性住宅」を建設するたびに、業者は赤字になってしまう事態となり、「保障性住宅を建てようにも建てられない」状態になってしまっているのです。

新華社は、「今年の一部都市での経済廉価住宅プロジェクト、移転住宅プロジェクトに対する新規融資の不足額は数百億元に達し、銀行融資に対する依存度8割前後になる可能性がある。これまで上半期の融資はほぼ期日どおり執行されてきたが、今年の上半期の新規融資は極めて少ない。もしこのような状況が続けば、10月末までにすべてのプロジェクトの着工を実現させるのは極めて難しい」と警鐘を鳴らしました。


■停滞する土地取引

「保障性住宅」に限らず、土地取引にも「冬」の時代が訪れようとしています。中国新聞社が転載した「経済参考報」の報道によれば、同報が前月の5月23日から29日にかけてモニタリングした主要20都市のうち、住宅用地の取引が成約したのはわずか3都市だけで、取引件数は4件だったのです。成約面積は18万平方メートルで、4月の同時期と比べて48%減となりました。

「経済参考報」の記者の取材に答えた専門家は、「成約件数が顕著に減少した背後には、開発業者の苦しい資金繰りの状況、市場に流れている悲観な空気がある。(土地や住宅)購入制限制限やローン締め付けの下で、住宅市場のこう着状態はすでに緩和の兆しが見られており、開発業者が自分から価格を調整できる範囲は、一層拡大するだろう」と楽観的な考えを示しました。

しかし当記事からリンクされている中国新聞社の当該記事の下のコメント欄を見ると、この楽観的な専門家を批判したり、「この記者はうそっぱちだ!」と叫んだりする書き込みであふれていることが分かります。今の住宅不動産政策にどれほどの中国人が不満を持っていることが良く分かる現象と言えるでしょう。

このまま行けば、保障性住宅の建設計画が企画倒れになるばかりか、「商品住宅の値段が保障性住宅を下回った」といった逆転現象が発生しかねませんし、住宅建設自体滞りがちになったりして、中国のバブル崩壊までまっしぐらになるのは間違いありません。

中国政府の「次の一手」を待ってみたいと思います。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ