• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

農園を奪われた男が首切り殺人=自首後に服毒自殺―中国江西省

2011年06月08日

先日来、中国のマイクロブログである噂が広がっていた。強制土地収用に抗議した男が、取り壊し担当者を殺害。切り離した首を持って警察に出頭したというもの。とても信じられないような話だが、メディアの取材により事実と判明した。2011年6月8日付鳳凰網を参照した。

20110608_zishou1
*画像は鳳凰テレビのニュース報道


■事件の背景

広東省東莞市石排鎮石港大道には10軒弱の花農園がある。いずれも自然公園・東莞生態園から土地を借りて運営している。陳鋒もそうした花農園経営者の1人だった。ところが東莞生態園側は貸借契約の終了を通告、農地を返却するように求めてきたという。

一方で東莞生態園側は1月下旬までに借り賃を払うように求めてきた。「花が売れる旧正月が終わるまで待って欲しい。旧正月が過ぎれば借り賃を払い、農園を引き渡す」と陳は頼み込んだが、担当者の楊毅は聞き入れず、強制的に土地を回収した。移動できる花は移動させ、移動できないものはトラクターで踏みつぶしてしまった。

絶望した陳は農薬を飲んで自殺を図ったが、病院で治療を受け一命を取り留めた。だが、本当の悲劇はその後に起きた。


■犯行

1月31日、陳は借り賃を払うという名目で楊毅を池のほとりに呼び出した。そしてやってきたところに襲いかかったという。付近で働いていた農民がその一部始終を目撃している。楊を池の中に叩き込んだ後、持っていた剪定用の大バサミで何度も突き刺した。そして動かなくなった後に首を切り落とした。流れ出した血で池は真っ赤に染まった。

殺害後、陳は服を着替え、切り落とした頭を黒いビニール袋に入れて、派出所に向かった。そこで当直の警官に「私が殺しました。自首します」と言って、血まみれの頭を見せたのだった。

自首した楊もまもなく命を引き取った。実は派出所に向かう途中、慢性の毒薬を飲んでいたことが後に分かっている。


■「身体の権利防衛」から「恐怖の権利防衛」へ

昨年、江西省撫州市宜黄県で強制土地収用に抗議した農民が焼身自殺を図る事件が起きた。3人が体に火を着け、1人が死亡した。他にも同様の焼身自殺による抗議が複数報告されている。

こうした自らの命をカードに使う「身体の権利防衛」から、今、他人の命を奪うことも辞さない「恐怖の権利防衛」への転換が始まっているのではないか。ジャーナリストの魏英傑氏はこう指摘している(8日付経済観察報)。

陳情、裁判という合法的な訴えのルートは意味を持たない。インターネットの普及により、ネット掲示板やマイクロブログを通じて世論に訴えるという方法ができるのではないかと期待されたが、成功するのは“たまたま”話題になったものだけだ。こうした状況で絶望した人々が暴力に頼るようになるのではないか。

先日、江西省撫州市で起きた政府機関連続爆破事件の記憶も鮮明な今、凄惨な事件が明らかになったことは中国社会に大きな衝撃を与えるものとなるだろう。
(参考記事「政府機関を狙った連続爆弾事件=「農民の犯行」との報道も高まるテロの懸念」)


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ