中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月12日
■「単位GDPあたり」ってなに?
第11期5カ年計画(2006~2010年)で、中国は単位GDPあたりのエネルギー消費量20%削減という目標を掲げていた。「単位GDP」というとなんだか難しそうだが、一定数のGDPを生み出すのに必要なエネルギー消費量という意味。「GDPを100円増やすのに必要なエネルギーの量を20%削減する」とか読み替えるとわかりやすいかもしれない。
で、この「単位GDP」という言葉には数字のマジックがある。母数となるGDPが増大すれば、削減目標を達成したとしても、エネルギー消費の総量は増える可能性があるからだ。例えば、GDP100円を生み出すのに10リットルの石油が必要だったとしよう。単位GDPあたり20%の削減に成功したとしても、GDPが200円に増えれば、必要な石油は20×0.8で16リットルとなり、消費総量は増大している。
■地域ごとに異なる省エネ目標
閑話休題。中国全体で「単位GDPあたり20%削減」という目標だが、上述の「「第11期5カ年計画各地区エネルギー消費量削減目標達成状況表」を見ると、各地域別に目標値が設定されていたのがわかる。新疆は目標免除。他にもチベットや雲南省、広西チワン族自治区などの後進地域が目標値が低く設定されている。
気になるの福建省と広東省。先進地域なのに目標値が20%以下と緩和されている。すでに省エネ対策を導入している「乾いたぞうきん」なのでこれ以上しぼれないだろうという配慮なのか、それとも輸出産業への影響をかんがみて緩和したのかは不明だ。
■全自治体が「ギリギリ」で目標達成の不思議
面白いのはすべての省・市が目標を達成していること。いや、各自治体が頑張ったというふうに言えばそれまでだが、そのがんばり方が「真冬だけど暖房をカットしてみた」「工場が運営できなくなるけど、停電にしてみた」という荒技まで含めてのものだったと考えると、なんとも言えない。20%ぴったりに合わせた上海市をはじめ、ぎりぎりで達成した自治体が多いが、その影で何があったのだろうか……。
(参考記事:「中国、省エネ目標を達成!その裏側にはマイナス10度の中、暖房を失った住民がいた」)あ
もう一つ、面白いのはこの「目標達成状況表」が公開された日時。公告はBP報告書発表前日の7日のものと表記されているが、ウェブサイトにアップされたのはBP報告書発表の2日後の10日だ(財経網を参照)。「中国はエネルギー消費世界一になったかもしれないけど、約束どおりちゃんと省エネしてまっせ」というアピールにも見えるのだが……。