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「コンドームをつけていたら強姦にはならない」警察の暴言にネット民激怒、大騒ぎに―中国

2011年07月14日

2011年7月、大手ネット掲示板・天涯社区に「官僚が人民教師を強姦した容疑」との書き込みが登場、注目を集めた。書き込み主は性的暴行を受けた張本人である女性教師。警察に告発したところ、「相手はコンドームを着けていたんだろ。じゃあ、強姦ではない」との理由で門前払いされたという。

書き込みが話題になった後、大手マスコミも追随。そして13日、問題の官僚が逮捕されたことが発表された。13日付城市信報、13日付人民網を参照した。


Condom Distribution Box / Augapfel


■事件の経緯


ネット掲示板の書き込みによると、事件が起きたのは5月17日。貴州省畢節地区畢節市阿市ミャオ族イ族鄉の阿市中学に勤める英語教師の周琴(ジョウ・チン)さんは、校長に官僚との宴席に同席するよう「命令」された。

宴席には8人の官僚が参加していたが、各人ごとに「敬酒」(敬意を表して一気飲みすること)するよう求められた。アルコール度数50%以上の白酒(パイチュー)を8杯も一気飲みしなければならなかった。阿市土地管理所の王忠貴所長はその後も執拗に酒を勧め、さらに2杯、合計で10杯も飲む羽目に。

ふらふらになった周さん。帰宅時に王が車で送ると持ちかけてきた。必死で断るも断り切れず周さんは車に乗った。そして案の定というべきか(?)、車は自宅へと向かわず、王の職場である土地管理所へと向かった。朦朧とする中、これは危ないと悟った周さん。すきを見てトイレに逃げ込んだ。しっかりとカギをかけどうしようかと悩んでいるうちに、また酔いがまわり王さんは意識を失ってしまった。

次に王さんが意識を取り戻したのは翌日、すべてが終わった後だったという。トイレに逃げ込んだことを知った王は窓からトイレに入り込み、寝ている王さんを宿舎へと連れて行った。そして事に及んだのだった。


■警察に頼れないからネット民の力を借りる

性的暴行を受けた周さんはどうするべきか悩んだ。しかし両親と相談した結果、王を訴えようと決めた。警察に出向き告発したが、答えは驚くべきものだった。「暴力を振るったことがはっきりしません。またコンドームもつけていたということで、強姦罪が成立するかは難しいところでしょう」と門前払いされてしまったという。

事件から2カ月近く、何の進展も見せないことに周さんは焦りを感じていたのではないだろうか。ついにネット掲示板に書きこみ、ネット世論の力を借りる道を選んだ。彼女の願い通り訴えは注目を集め、ついには大手マスコミまでが報道する事態へと拡大した。

13日、当局は王忠貴の逮捕を発表している。


■「中国ネット市民社会」という幻想

これまでも何度か取り上げてきたが、通常の手段では太刀打ちできない権力者を相手にする時、

ネット掲示板→マスコミ→行政・司法・共産党が動く

という流れは最後の手段となりつつある。ぱっと見、「ネット世論の勝利」「ネット市民社会が公権力を監視している」と評価したくなるし、記事やブログを見ているとこの事件をそう評価している人もいるようだ。しかし、現実には解決にいたった事件の何十倍、何百倍もの闇に埋もれたままの事件があると考えると、とても監視機能があるとは思えないのだが……。

ネットが発端になって処罰される官僚はいつも下っ端。昨年の宜黄焼身自殺事件では宜黄県トップが解任されたが、せいぜいそのあたりが限界ではないか。社会不満のガス抜きのために、「ネット市民が勝利したのだ」「行政もネット世論に耳を傾けているのだ」という幻想を持てる程度に下っ端の首を提供する、いわばトカゲのしっぽ切りにも思えてならない。


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