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2011年07月27日
■市政府はバッチシ対処したぜ、と官制メディア
26日、問題を把握した市政府は水道水の利用を禁じた。翌27日昼には給水車80台を出動させ、3000トン弱の水を配給したという。突然の「水不足」に困っていた市民たちは給水車に殺到。水をもらおうと我先に突撃する事態も見られた。現場には警察も出動、治安維持にあたった。
もっとも市民は落ち着いていたとも中国新聞網は報道。「困難は一時のものですから。政府がうまくやってくれますよ」とある市民。別の市民は「水が汚染されたとはいえ水道が止まった訳じゃない。煮炊きには使えなくてもお風呂や洗濯には使えますから」と話していたという。
■穴だらけの報道と対応
中国新聞網的には、河水汚染の事実を伝えつつ、「市政府はがんばってる!市民も支持している」という美しい情景を描きたかったのだろうが、報道を読んでいるだけでいろいろ不安になってくる。
まず市政府の対応が事故から5日後の26日だったこと。汚染された水が到来するのに5日かかったのか、それとも市民はすでに汚染水を飲んでいるのか、気になるところだ。また汚染水はなにも綿陽市にだけ行くわけではない。
涪江はアバ・チベット族チャン族自治州を源流として四川省を流れ、最終的に重慶市の嘉陵江に合流する。嘉陵江はさらに長江に合流する。いずれは薄まって毒性も失われるのだろうが、綿陽市の周囲、とりわけ農村地域ではどのような対応がとられたのだろうか。
何より気になるのが「風呂や洗濯には使えますから」という文言。マンガン中毒は呼吸器や皮膚の接触を通じても起き、「強い精神障害やパーキンソン病に似た中枢神経系障害、マンガン肺炎」が起きる可能性があるという(国立健康・栄養研究所)。お風呂に入っていいのか、激しく不安なところだ。
なお27日午後、綿陽市政府は記者会見を開き、汚染のピークはすでに過ぎたと発表した(四川在線)。