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【鉄道追突】「35人以上死亡で官僚更迭」はデマ=中国紙が解説

2011年08月02日

2011年7月28日付南方週末に「官僚問責:明文化されたルールと「暗黙のルール」=解明『特別重大事故』席員追求の慣例」という記事が掲載された。記事のまくらには、日本でも相当拡散されたデマである「事故の死者数が35人を超えると、官僚がクビになる」ネタが使われている。

すっかり乗り遅れた感があるが、この「35人ルール」ネタを取り上げてみたい。


Tiananmen Square, Beijing Olympics 2008 / IvanWalsh.com


■日本で広まったデマ、「35人ルール」とは

まず、日本で拡散した「35人ルール」について。

その拡散の過程については、「中国の死者数35人上限というおはなしデマじゃね」(Togetter)に詳しい。当初、高速鉄道追突事故の死者が35人から一向に増えなかったため、「35人以上死者が出ると官僚がクビになるの。だから犠牲者はそれ以上にならないの」との書き込みが中国であり、それが日本にも波及したという形のようだ。

「35人以上死亡者が出ると必ず官僚がクビになる」という理屈だと、反証は非常に簡単だ。一件でも違う例を見つければいい。水彩画さんが指摘しているとおり、昨年大問題となった上海市静安区の高層マンション火災では58人が死亡したが、区トップも市トップも更迭されていない。


■ラインは35人じゃない、30人だ

さて、ちょっと面白くなるのはここからだ。南方週末は「35人というラインはない。あるとすれば、30人、あるいは10人だ」と解説している。

中国国務院の「鉄道交通事故応急救援・調査処理条例」によると、事故の等級は「特別重大事故」「重大事故」「比較的大きな事故」「一般事故」の4段階に分けられる。「特別重大事故」の要件は以下のとおり。

(1)死者30人以上、あるいは重傷者100人以上、あるいは1億元(約12億5000万円)以上の直接的経済損失を持たした場合。
(2)主要客運路線で18両以上脱線し、鉄道の運行が48時間以上中断した場合。
(3)主要貨物路線で60両以上脱線し、鉄道の運行が48時間以上中断した場合。

こんな細かい規定は意味あるのか?と問いただしたくなる。まさに官僚国家の面目躍如といったところか。ちなみに死者10人以上で「重大事故」の扱いとなる。南方週末の調べによると、基本的に「特別重大事故」ならば中央政府が調査を担当、「重大事故」ならば省政府が調査を担当することになる。地方政府はできることならば、上級政府にクビを突っ込まれたくないだけに、死者数隠蔽の動機は十分にある。もちろん、隠蔽の実例も少なくない。

さて、事故の等級を決める明確な指標がある一方で、「特別重大事故」を起こした担当官僚がどう処分されるのか、という点については明確な規定はない。問責、党紀・政紀違反、刑事罰の順に処罰は重くなるが、下っ端は刑事罰を科されたとしても、その上の官僚は党紀違反で免職ぐらいで済まされるケースが多いという。

党紀違反と刑事罰はまったく別物のはずだが、それが一緒くたになっているのが今の中国だ。ちなみに罷免された官僚は1年以内は別の役職につくことは禁止されている。言い換えれば、1年後には別の役職にありつけるということになる。いや、それどころか、もっと短い時間で戻ってくるケースもしばしばだという。


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