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「勉強+ビジネス」がセットに=中国の対アフリカ研修外交―北京で考えたこと

2011年08月08日

「研修+ビジネス」の中国特色的対外援助・・・アフリカ政府幹部・中国研修の実態

中国による途上国への対外援助。以前、記事「中国の対外ODAってどんな内容?『対外援助白書』を読む」で総論的な話をご紹介しましたが、今回はもう少し具体的なお話となります。

鳳凰週刊の記事「アフリカ官僚、中国でのファーストフード・トレーニング(原文:快餐培訓)」(2011年8月第22期)は、アフリカ援助の中心の一つでもある、アフリカ各国幹部の中国研修の実態という、貴重な記事を掲載しています。やや荒っぽいところもありますが、対アフリカ援助の現場理解や日本の援助の効果を省みさせられるという意味でも、大変重要な内容です。


Africa Day 2010 in Dalian, China / SoniaT 360.


*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。



アフリカ官僚、中国でのファーストフード・トレーニング
鳳凰週刊、2011年8月第22期

中国に来るアフリカの政府幹部がまず訪れるのは商務部だ。商務部は主管官庁として、トレーニングプログラムの交渉、立案、研修員の割り振りなどを担当する。ただし、商務部から旗下の行政機関や地方都市に「上意下達」するばかりでなく、下から商務部に持ちかけてくるケースも少なくない。


大統領候補も!?アフリカの大物も混じる「研修生」

幹部研修に参加するアフリカの参加者。その平均年齢は45歳前後で、以前と比べて若年化しつつあるている。しかし、その国の行政を左右するような大物が参加することも少なくない。例えば、コンゴ共和国のマリアン・ングアビ大学(同国唯一の大学)副学長もその一人だ。

コンゴの北部、西部では「学長の一言の方が総理より効く」というほど大学の影響力は強いが、その副学長ともなればやはり重要人物と言えよう。この副学長が参加したプログラムにはその他に3名の地区議員、2名の大統領候補もいた。モーリシャスからの参加者は「普段こんな人とは知り合いになれない!」と話していたが、研修は中国とアフリカを結ぶのみならず、アフリカの国同士の交流も促進している。

研修プログラムの中身だが、現在は短期化する傾向が強い。主に2-3週間の短期研修が多くなっている。マリアン・ングアビ副学長が参加したプログラムは最初の1週間が座学、第2週は地方都市見学だ。座学はまだまだ改善の余地がありそうだ。

多くの重要なトピックをババっと短時間で講義するため「質問する時間もない」と副学長は不満気味。ただ現地視察は多くの参加者の興味をそそる。同じカリキュラムに何度も参加している研修生もいるが、地方で企業の発展振りを見ると、「うーん、毎年違うなあ」と感心しきりだった。


「研修+ビジネス」の中国特色的研修項目

あるコンゴ共和国の「大臣級研修班」は8日間で4社の企業と「商談」するプログラムが組まれている。関係者によると、特殊な技能を学ぶトレーニングプログラムを除いては、一般的な企業見学と同時に「ビジネスセッション」が用意されているのが一般的だ。「だから、アフリカ幹部研修プログラム発足以来、地方都市は積極的に研修を開催しようと申し込んでくるんだ」と関係者は明かした。

あまりに短い研修は、まるで「ファーストフード」のようだ。プロジェクト管理などの内容もあることはある。しかし、中国の援助資金は中国資本の会社・組織に直接入るため、あまり必要のないカリキュラムだという。ある赤道ギニアからの参加者は、「アフリカ人はプロジェクトマネージメントに参加する必要がない。中国人の通訳と、フランス人か南アフリカ人の現場監理員。あとは地元の労働者がいれば道路でもビルでも何でもできちゃうよ」と話していた。

ザンビアの銅鉱山で働く技術者のうち、地元出身者はわずか35%しかいない。結局、「ファーストフード」研修は中国が「走出去」(海外進出)する過程にのみ存在する過渡期の産物と言えそうだ。将来的には、もう少し実際的なニーズに基づいた研修が組まれるだろう。
(抄訳)


【考えたこと】
■研修生のニーズと受け入れ先のメリット

世界の開発援助業界の中でも、相手国の研修生を招く「本邦研修」を大々的に実施している国は意外と少ないのが実情です。代表格はドイツと日本と言われてきました。中国におけるアフリカの研修生の存在感を見ていると、中国もこの列に入って来そうだと感じます。

記事でも指摘されていますが、もっと参加者のニーズに合わせた研修内容を組むなど課題は残っています。もっとも日本も似たようなもので、JICA(国際協力機構)を中心とした援助担当機関が「お願いベース」で受け入れ先に無理を聞いてもらって研修を実施してもらっている場合もあったり、あるいはその逆に受け入れ先のアイディアや思惑が先走ってしまい参加する研修生のニーズとのマッチングが十分でないこともあります。

中国の研修は勉強だけではなく、ビジネスの場も設けるようですが、それによって地方都市などの研修受け入れ先にもメリットがある状況、研修生と研修生受け入れ機関の「ビジネス・ウィンウィン」を作っているとしたら、そのしたたかさに感心します(まあ、成功例ばかりでもないのでしょうが)。


■本当の信頼関係とビジネス

もちろん、幹部を狙った「ビジネス」研修ばかりでは、相手国の国民レベルまでに及ぶ本当の信頼関係築くことは難しいでしょう。途上国の問題に突っ込んだ援助があって、初めてその国との信頼関係は構築されると思います。この点に関しても、日本にも同様の反省が求められるべきかもしれません。多くの重要人物を研修生として受け入れておきながら、彼らをきちんとつなぎとめることができているのでしょうか。

日本経済が厳しい状況に追いやられている中、それでも継続されている海外援助。事情を考えれば、相手国と日本企業との橋渡しをつけられる、一石二鳥、ウィンウィンをかなえられるやり方を考える必要もあるでしょう。もちろん、中国ほどあからさまにビジネス寄りになる必要はないかもしれませんが。

*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。


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