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中国ツイ民の注目集めた裁判=人権活動家・王茘蕻さんの活動と「罪」―中国

2011年08月13日

2011年8月12日、北京市朝陽区人民法院で、市民記者・人権活動家の王茘さんの裁判が開かれた。裁判所には多くのメディア、ネット民が集まったが傍聴は許可されず、警察に追い払われた。

政治問題に興味がある中国ネット民、ツイ民の間ではホットトピックとなった王茘蕻裁判だが、日本語ウェブメディアではまったくといっていいほど報じられていない。わずかにサーチナが、アイウェイウェイがツイッター再開という記事の中で、「もしあなたに母親がいるなら、もしあなたが女性なら、もしあなたが普通の人なら、もしあなたが消されたり誣告されることを望まないのなら、王氏に関心を寄せてほしいとのつぶやきを紹介しているだけだ。(参照)。

そこで本記事で
王茘蕻さんの経歴、容疑などについて簡単にご紹介したい。

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経歴

王茘蕻さんは1955年生まれ。1975年、陝西省延安市に「下放」(知識青年を農村で労働改造すること)された。文革終了後、1978年から延安大学中国語学部に入学。卒業後は北京市人民代表大会職員として働いていたが、1991年に辞職し、「下海」(官僚がビジネスに転じること)した。2008年に仕事を辞め、ネットを中心に公益活動に従事するようになった。

2008年の上海警察署襲撃事件(レコードチャイナ参照記事)では容疑者の母親に、2009年のホステス官僚刺殺事件(本サイト参照記事)では容疑者に現地までおもむいて対面している。他にも多くの問題に取り組み、人権活動家としてその名を知られるようになった。2010年には劉暁波氏のノーベル平和賞受賞を喜ぶ宴会を開いたところ、当局に8日間勾留された(本サイト参照記事)。

以上の経歴は2011年7月16日付博訊網を主に参照している。


■福建省ネットユーザー・書き込み事件

さて、今回の逮捕と起訴は、「福建省ネットユーザー・書き込み事件」に起因するものだった。「中国公民維権連盟」掲示板掲載のまとめを主に参照した。

2008年2月10日、福建省福州市清県で26歳の女性・厳暁玲さんが亡くなった。交際相手に電話で呼び出された後に死亡し、病院に運び込まれた。厳さんのお母・林秀英は変わり果てた遺体を見て、また情況を知り、交際相手らによる強姦殺人事件に違いないと考えるようになる。警察に厳正な調査を求めたが、厳さんの体内からは精液は検出されず、「子宮外妊娠中の卵管破裂」が死因との鑑定結果が下された。

警察の鑑定結果に林さんは納得することができず、県、市、省政府に事件の解明と再調査を求めたが、取り合われることはなかった。厳さんの交際相手が県警察幹部、県裁判所幹部と一緒にカラオケ店に出資、経営していることを知り、犯人は司法と結託しているとの疑いを強めていった。

2009年5月、範燕瓊さんら福州市の一部ネット民は林さんのことを知った。6月、範さんらは発言をまとめた文章を作成。ネット掲示板に掲載すると同時に、米華字ニュースサイト・博訊網に投稿した。書き込みは注目を集め、たちまちネットのホットトピックとなった。この事態に対し、福州市警察はネットユーザー十数人を逮捕。最終的に範燕瓊さん、呉華英さん、游精佑さんが「誣告陥害罪」で逮捕される。

人権派ネット民の活動が大規模な刑事事件へと発展したこと、警察側が「国家機密にかかわる」という不思議な名目で弁護士の接見を拒否したことなどから、事件は「人権派クラスタ」間で大きな注目を集めた。


■王茘蕻の罪状

福建省ネットユーザー・書き込み事件でも、王茘蕻さんは積極的な動きを見せた。福建省省長、全国人民代表大会などに公開書簡を送ったほか、裁判当日には裁判所に駆けつけて声援を送った。そうした活動の中でも、2010年4月16日に福州市人民法院前に集まり、横断幕を手にスローガンを叫び、また国家やインターナショナルなどを歌ったことが、「寻衅滋事罪」(騒動挑発罪)とされて起訴された。

今年3月21日、刑事拘留される前に残したツイッターの書き込みが今も残っているが、生々しさを伝えている。

建物の下にパトカーが来た。もうすぐ国保(中国公安部国内安全保護局)がやってくるという。おそらく連れ去られるだろう。ツイ民のみなさん、お元気で。今晩戻ることがなければ、おそらく壁の中で休むことになるでしょう。では!

SKYPEの連絡リストに私を入れている人は削除してください。

来るべきものは必ずやってくるものだ。

王茘蕻の裁判

2011年8月12日、北京市朝陽区人民法院で王茘蕻さんの裁判が開かれた。中国ネット民がツイッターで実況中継していたが、多くのメディア、ネット民、そして私服警官が裁判所外にたむろする異様な光景が展開されたという。ネット民の裁判傍聴は許可されず、警察によって追い払われた。

被告側弁護士を担当する韓一村氏は言う。「無罪となる可能性はほぼゼロでしょう。絶対に有罪判決が下ります。ただし重すぎる量刑とはならないはずです。強力な世論と民意の監督の下、当局はどのような判決が彼らに有利なのか、よく考えるからです」と話している。

この日の裁判は2時間ほどで終了。後日、改めて判決が下される。


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