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抗日ドラマのトレンドはスパイ物!天津が舞台のドラマ「借槍」が面白い―北京で考えたこと

2011年08月17日

■ドラマからみた中国(9)「借枪」から見る愛国・抗日で「育った」共産党■

ここ数日、ヒマに任せて一気に見ていたドラマ「借枪」(銃を借りる)。抗日戦争を背景としたこのドラマを今日、8月15日という特別な日にちょうど見終わりました。

ストーリーは主人公である共産党の秘密工作員(主役を演ずる张嘉泽は以前紹介した「蝸居」でも主役の一人でしたね)が天津に駐屯する日本軍から如何に情報を取ってくるかという、最近人気のスパイ物です。日本軍、共産党、国民党、そして租界に陣取る各国政府も時に交えての情報戦が描かれています。

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*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。


中国人の友人は「このドラマは借枪じゃなくて借钱(借金)だよ!」と言っていましたが、情報戦の緊迫感と同時にどうやって活動経費、お金を持ってくるかというのに頭を悩ませる共産党スパイたち。「共産主義も金次第だ」というストーリー作りは現代ならではでしょうか。また共産党の地下工作にも色々な路線が合り、もめたり、そりが合わなかったりという内部対立も面白いポイントでした。


■国民党も共産党も大差ない?!

恐らく当時の一般の中国人にとって、特に抗日戦争時期は、国民党も共産党も大した区別がなかったんだろう、と感じさせられる各種エピソードが印象に残りました。

国民党に入党するよう誘われる準主役の女性がどちらの党に協力するかと悩むシーンでも、「資本主義か、社会主義か」といった主義主張ではなく、活躍するスパイたちの人柄で決めています。もちろん主役の共産党スパイに引かれていくわけですが(笑)。

一般の国民に対しては、共産主義という主張ではなく、愛国抗日の訴え、そしてなにより「オレが日本を何とかしてやる!」という、ある意味任侠的な人間の魅力で支持を集めて行ったという雰囲気がよく伝わってくるのです。一般党員がどういう風にして共産党に参加していったのか、腑に落ちて理解できました。

現在の中国共産党についても、「冷戦後は共産主義ではなく愛国主義でしか国民の求心力を得られなくなった。だから愛国主義路線に走るのだ」などという論評もありますが、ある意味、共産主義自身には求心力はなかったのでは……というのは言い過ぎでしょうか?


■スパイ工作が入り乱れた「天津」が舞台


ちなみに以前にも紹介したドラマ「潜伏」も舞台は天津でした。多くの租界を擁していた天津は、複数の勢力が入り乱れるスパイの地だったようですね。「潜伏」が大成功を収めた後、天津には「潜伏諜報博物館」(という名前のレストラン)までできたそうです(紹介しているブログ(中国語))。

ドラマとしての評価ですが、世間的にも個人的にも「潜伏」の方が良いできだと思いました。面白かったのですが、最後はドラマチックすぎて若干やり過ぎ感があります。ただ新聞やメディアを通じてのスパイと日本軍の駆け引きなんかは、当時の中国メディアが実際に果たした役割を想像させて、大変興味深いものでした。


■厳しい抗日描写も、日本人の描き方に感じた多様性

8月15日ということで、ドラマにおける日本軍、日本人の描き方についても少し触れます。確かに相当エグイものもありました。はっきり言って目を覆いたくなるようなシーンもしばしば。見始めたところから覚悟してはいたことではありますが。

ただ新浪微博で中国人にも指摘されたのですが、渋谷天馬さん始め日本人俳優が多数出演していること(恐ろしい人間の役ばかりではありますが)。エグイシーン中心とはいえ戦争を嫌う日本人や中国人と恋に落ちる日本人も登場することなどを考えれば、一辺倒な描写とは少し違うものだったように感じました。

次々と新作の抗日ドラマが放映されるなか、中国人はこのテーマの作品を繰り返し見ているのかと思うと、複雑ではあります。ただ、微博での中国人のやり取りを見ていると、情報ソースが多様になるなか、抗日ドラマだけで日本を理解している時代遅れの人はそう多くないように感じます。たんに「面白いスパイドラマ」として冷静に見ているのではないでしょうか。

終戦記念日の今日8月15日。日本、そして世界中の戦没者の冥福を祈ると共に、日本と中国が今後決して戦争という形で相対することがないよう、心より平和を祈ります。

*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。


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