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高さ40メートルのクレーンに68日間の立てこもり=未払い給与をめぐる出稼ぎ農民の籠城戦―貴州省

2011年08月29日

高速道路建設現場にある、高さ数十メートルの大型クレーン。その上で68日間も生活した人がいる。ギネス記録への挑戦、ではない。それは、2年もの間、一切支払われなかった給料を求めての籠城戦だった。

■参照記事
クレーンの上での68日間の生活=巴中市農民2人の未払い給与支払いを求める道」華西都市報、2011年8月27日
委託業者は給与未払いを否定=巴中市の権利擁護組織、貴州省を再訪」華西都市報、2011年8月28日

2009 年9月、四川省巴中市の出稼ぎ農民130人余りが、貴州省六盤水市の高速道路建設現場にやってきた。頭領の何林平に率いられた一団は、建設受注企業・浙江 正方建設有限公司(以下、正方)の孫請けとなったのだった。ところが、仕事が始まってから2年間というもの、正方は赤字を理由に給与を支払おうとしなかっ た。

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*画像は華西都市報の報道。


■2年間給与ゼロと高空の籠城戦

この2年間、わずかに生活費150万元(約1800万円)が支払われただけだった。そして、その後の対応はもっと惨いものだった。今年3月2日、出稼ぎ農民たちを「謎の男」が襲った。その数は20~30人。宿舎を打ち壊し、農民たちを現場から追い出した。負傷者も出る騒ぎになったという。

とはいえ、2年間も働いた給料をもらわずに退散することなどできるはずもない。この日から出稼ぎ農民たちの長い長い戦いの日々が始まった。何林太によると、未払い給与は合計600万元(約7200万円)を超える。さらに孫請け契約受注時に支払った保証金100万元(約1200万円)、仕事に必要な工具や機械の購入費などを合わせると未払い金の総額は1000万元(約1億2000万円)を超えるという。それらの支度金は出稼ぎ農民たちがお金を出し合って用意したものだ。

交渉が繰り返されたが、正方サイドはまったく聞く耳を持たなかった。そして、5月25日、張剛と譚勇、2人の出稼ぎ農民がついに強硬手段に訴えた。大型クレーンに乗り込み、高空での籠城を始めたのだ。張剛が乗り込んだクレーンは40メートル、譚勇のクレーンは20メートルという高さだった。

そして、68日間にも及ぶ苦しい戦いが始まった。昼間は太陽を避けるために少しでも影がある場所を探し、夜は狭いオペレーター室にまるまって眠る生活が続いた。食事は楊永明という別の出稼ぎ農民が送りとどけてくれた。最初はクレーンを登ってきてもらっていたが、途中からは縄とバスケットを用意し、それを上げ下げするように変えた。

コンセントもないため、携帯電話のバッテリーも充電してもらっていたという。真夏の籠城戦で気になるのはお風呂。68日の間、2人は2回だけ体を洗うことができたという。夜陰にまぎれてクレーンをおり、近くの川で体を洗ったのだった。


■籠城戦の終わりとその後の戦い

長い神経戦が続いたが、正方サイドも強硬に支払いをこばんだ。猛暑に疲れを見せた2人に正方関係者は「好きなだけ立てこもっていろ。どうせ工期は急がないんだ。うちの損失は最後に弁償してもらう」と言い放った。こうなれば最後までやりとげるしかないと、2人は決意を新たにした。

状況が変わったのが7月末のこと。貴州省六盤水市政府政法委員会副書記が現場に出向き、2人の未払い給与をとりあえず支払うと約束した。振込を確認し、8月2日には譚勇が、3日には張剛には地面へと下り、籠城戦は終わった。だが、譚勇に振り込まれた金の大部分は凍結されており、引き出すことはできない。張剛、そして食事を届けていた楊永明にいたっては逮捕され、今も拘束が続いている。

籠城は終わった。だが、未払い給与支払いを求める戦いはまだまだ終わらない。何林平たちは故郷の巴中市政府に助けを求めた。8月9日、問題を知った巴中市の周喜安市長はただちに行動するよう部下に命じた。翌10日、巴中市政府出稼ぎ農民権利擁護救助センターの王暁栄主任は貴州省に向かった。

市政府が動くまでの事件となったのが、それでも正方サイドは態度を変えなかった。王副主任は2週間あまり現地に滞在し、六盤水市政府、高速道路指揮部と会談を重ねたが、当事者である正方は「未払い金を精算する」と言うだけで、何の行動も起こそうとはしない。「権利擁護の仕事を8年間続けてきましたが、一番困難な事件です」と王副主任は嘆いた。

六盤水市政府によると、すでに第三者を入れての和解、清算手続きの準備が進められているという。しかし何林平が現地にいないこともあり、正式な話し合いは始まっていない。


■孫請けの悲劇と地方政府間対立

日本同様、中国の建設現場も受注会社、孫請け、曾孫請けと多層構造になっている。その最下層に位置するのが出稼ぎ農民のグループだ。頭領に率いられた一団が受注するというケースが多い。こうした仲介構造が最終施工者の受注金額を少なくし、手抜き工事や材料の間引きにつながっているとも批判されている。また、立場の弱い下請け企業が泣き寝入りするケースも少なくない。

今回の事件はその典型ともいうべき事例と言えるだろう。もっとも華西都市報の記事は基本的に出稼ぎ農民側の主張で構成されているため、もめごとの裏側にはまだ別の事情があってもおかしくないようには思うが。

もう一つ、今回の事件で興味深いのは、巴中市と六盤水市という政府間の対立が起きている点だ。市出身の出稼ぎ農民を守ろうとする巴中市と、市の高速道路建設事業を守ろうとする六盤水市。四川省と貴州省、それぞれ省が違うため、仲介する能力は国にしかないという状況にある。


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 コメント一覧 (1)

    • 1. 反中国
    • 2012年11月06日 17:29
    • お前ら低能民族中国人達が、賃金未払いされ様とされまいと誰一人として日本人は興味も関心も無いわ。低能民族中国だからお前らキチガイ中国人自身が諦め着くやろが。他国へは無理難題の極悪非道な行為を平気で行うくせしゃがって。私らも人間ですみたいな事言ってるな。世界の平和と共存の為に、低能民族中国は1日も早く消えて無くなれ。

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