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【比較動画】「秒速5センチメートル」のパクリアニメが文芸賞を受賞=低品質盗作が量産される業界構造とは?―中国

2011年08月31日

かつてパクリアニメとして話題となった中国アニメ「心霊の窓」が、広西チワン族自治区で最も格式の高い賞である広西文芸創作銅鼓賞を受賞。中国ネット民の間で再び話題となっている。制作会社は「一部背景を「拝借」しただけ。故意のパクリではなかった。パクリ疑惑を指摘された後、修正したので問題はない」と弁明している。2011年8月29日付中国網事、30日付広州日報を主に参照した。


■2009年のパクリ騒動

心霊の窓のパクリ騒動が持ち上がったのは2009年のこと。もう2年も前の話だ。

国営テレビ局放映の“感動大作”アニメ、実は日本作品の丸パクリ―中国
レコードチャイナ、2009年9月2日
中国の国営テレビ局・中国中央電視台(CCTV)が「感動の大作」と銘打って放映したアニメ「心霊の窓」にパクリ疑惑が浮上した。2007年に公開された日本の人気アニメ映画「秒速5センチメートル」を丸写ししたような画面が多数あるという。実際、その「激似」ぶりには驚くばかりだ。1日、網易論壇が伝えた。

 「心霊の窓」は広西チワン族自治区柳州市の共産党市委員会宣伝部と柳州市藍海科技有限公司の共同制作。1話8分30秒で全52話の制作が予定されている。すでに前半26話の制作が終了、今年7月よりCCTVを始め各局で放映されている。

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*画像は広州日報の報道。


制作会社の柳州藍海科技有限公司は当初、頑としてパクリ疑惑を否定していたが、ネット世論及びマスコミの盛り上がりに耐えきれなく降参。一部カットが剽窃で有ることを認めている。ただし、「下請け会社がやらかしました」との言い訳がついているが。

<続報>悪いのは下請け会社?!パクリ疑惑のアニメ制作会社が弁明―中国
レコードチャイナ、2009年9月5日

柳州藍海科技有限公司の担当者・龍(ロン)氏は、ミスがあったことを認め、盗作問題に関する徹底的な調査を約束した。龍氏は具体的な制作は下請け企業に委託しており、最終チェックで問題を発見できなかったと述べ、下請け企業が問題行為を犯したとの見方を示唆した。

全52話の制作が予定されていたというが、前半の26話までで打ちきりとなったもようだ。


■どこをパクったのか、見てみよう

さて、具体的なパクリはどのようなモノだったのか。レコードチャイナに比較画像があるが、動画でまとめてくれている方がいるので、ご紹介する。

*日本人の方がまとめた比較動画


*中国人の方がまとめた比較動画


問題となっているのは心霊の窓6話と9話。キャラクターや背景、構図などがまるでトレースしたかのようにうり二つとなっている。ストーリーだが、心霊の窓は1話10分未満の道徳ショートストーリー。「心のスープ」がキャッチコピーだったらしい。「秒速5センチメートル」とは違うストーリーなのだろうが、強引に場面を借りたということではないだろうか。


■なぜ中国アニメにパクリは多いのか?

中国アニメのパクリ問題は「心霊の窓」にとどまるものではない。

・高速鉄道追突事故を機に注目された、電光超特急ヒカリアンをパクった高速鉄道アニメ「高鉄侠
・クレヨンしんちゃんそっくりの「大口のドゥドゥ
・マクロスチックな変形ロボットアニメ「アストロプラン
・「農村系リリカルなのは」と噂されている「村長
・車がトランスフォームするロボットアニメ「ロロの冒険記
・アカデミー賞最優秀アニメ部門にノミネートを果たした中国版もののけ姫「夢の王国

本サイトで扱ったものだけでもこれだけある。「なぜこれほど多くのパクリ作品が量産されるのか、しかも低品質の作品が」というのは気になる疑問だ。中国はあらゆる分野にニセモノが存在するとはいえ、アニメ業界特有の事情もあると見られている。

それはすなわち、政府がアニメを戦略的クリエイティブ産業と位置づけ奨励していること。政府が応援して何が悪いのかと思うかも知れないが、問題はアニメ制作の目的が「面白い作品を作って儲けること」ではなくなって、「政府の基準に合わせて作品を作り、補助金をもらうこと」に変わってしまうのだ。

さすがに政府も「この動画、すげぇ」とか、「女の子かわいい」とか、内容に踏み入った評価はできない。となると、評価基準は「何分以上制作する」「視聴率5位以内に入る」といったアニメの面白さとは別の基準で測られることになる。つまんなくてもいいからとりあえず大量に生産しろ、面倒くさかったら他人様の作品をパクればいーじゃんといった具合に、作品の品質はおざなりにされてしまう。

7月28日付時代週報が「高鉄侠」問題に関する記事で、この構造を指摘している。3Dアニメを100分作れば10万元(120万円)、CCTVで放送されれば1分あたり500元(約6000円)、制作会社立ち上げの初期費用は政府持ち……などなど細かい補助金の規定が明らかにされている。

国だけではなく、地方政府も支援に熱心で、オフィス代を支援したり、優遇金利の融資を斡旋したりと手厚く支援している。「心霊の窓」が受賞したのも、広西チワン族自治区政府が地元制作会社を支援したと考えれば特に不思議な事態ではない。

さて、この問題に解決策はあるのだろうか。現状の国策アニメ振興、補助金漬け状態をやめれば、中国アニメ業界事態が滅ぶのは必死。となると、唯一の解決策は共産党高官が真のアニメオタクになって、「心霊の窓第6話のキャラデザはだれだ?!女の子に色気があった。補助金を与えよ!」と細かくチェックするしかないのではないだろうか?


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