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日本の「右翼教科書」採択を気にしすぎるな=中国愛国メディアに異変―政治学で読む中国

2011年09月03日

■「右翼教科書」採択■

来春から使用される教科書の採択が8月31日で終了しました。『環球網』が教科書問題に関する記事を掲載しているのですが、大変興味深い内容でした。

言うまでもないことですが、問題になるのはいつも、「右翼教科書」についてです。今回、問題となっているのは育鵬社と自由社の教科書。「右翼教科書」というと「新しい歴史教科書をつくる会」が発行していた『新しい歴史教科書』が有名ですが、この記事では両者の関係について以下のように記載しております。

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*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


育鵬社は保守的色彩が強い扶桑社傘下の出版社である。扶桑社は右翼的学者の団体である「新しい歴史教科書をつくる会」と共に、歴史的事実を歪曲し、日本の侵略戦争を美化する教科書を出版し、各地の小中学校に推奨した。

「新しい歴史教科書をつくる会」は1997年に右翼専門家により設立された。日本が戦後採用してきた教材は「自虐史観」に満ちあふれただったと右翼専門家は指摘し、侵略に道理があったこと、植民地支配にも良い面があったという、人類の文明史観に反する主張を展開している。

2007 年2月、扶桑社は「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書の販売拡大をこれ以上図るのが難しいとして協力関係を終えた。これ以降「新しい歴史教科書をつ くる会」を除名された八木秀次前会長が設立した「日本教育再生機構」と協力し、できたのが「教科書改善の会」であり、引き続き教科書を執筆し、育鵬社から発行するに至った。

「新しい歴史教科書をつくる会」に残った藤岡信勝前会長も出版の道を探り、松岡洋右元外相の元秘書にして外交評論家の加瀬英明が経営する自由社から歴史、公民の中学校教科書を出版した。

(訳者註:記松岡洋右元外相の元秘書は加瀬英明ではなくその父。環球網の誤り)

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■「日本は多元的価値を有する社会」


記事では、『時事通信』の記事「「つくる会」系教科書採択=中学の歴史、公民で-香川県教委」を引用。香川県で初めて育鵬社の教科書が採択されたことを紹介しています。その上で、この教科書が東京都、大阪市、横浜市、愛媛県などでも採用されたことを挙げ、「右翼教科書が日本では益々『歓迎されている』ようだ」といつもの論調を展開しています。

これだけだったら、いつものこととスルーしてもよかったのですが、記事最後に掲載されている日本華字紙・日本新華僑報の蒋豊編集長の意見に驚きました。

右翼教科書は確かに一部の地区で採用された。採用された地域も増え、勢いも増している。とはいえ、普及したとは言い難い。また日本社会に反対意見もきわめて多い。日本は多元的価値を有する社会であり、「右翼教科書」の出版という現象が起きるのはきわめて自然なこと。過敏になったり、緊張しすぎる必要はない。

というもの。その後には、日本が歴史を正面から見つめないと痛い目に遭うことになる、といういつもどおりの言葉が続いていますが、それはご愛敬というべきでしょう。


■ステレオタイプな報道に変化の兆し?

こういっては失礼になるかもしれませんが、歴史問題について、日本には多用な価値観が存在し、必ずしも右傾化一辺倒ではないということをようやく紹介するようになったのか、というのが私の偽らざる感想です。

「靖国参拝」=右傾化、「右翼教科書」=右傾化、軍国主義が到来するであろう。というのがいつもの論調。いつまでステレオタイプ的な報道を繰り返せば気が済むのかとあきあきしていたところにこの記事を見つけたのです。あの愛国主義的色彩の強い『環球網』に掲載されたということもあいまって、驚きを感じています。

*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。

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