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「公的出版機関の企業化」=新たな出版改革でゴシップ紙大増殖か―中国

2011年09月27日

2011年9月24日、香港フェニックステレビのインタビュー番組「問答神州」は、中国新聞出版総署の柳斌傑署長のインタビュー第2回を放映した。柳署長は「民間出版企業を体制街から体制内に転換させる」と発言、注目を集めている。

話題になったのは2010年1月に中国新聞出版総署が公布した「ニュース・出版産業の発展の更なる推進に関する指導意見」の解釈に関する部分。出版業界の「1号文書」だと話題になった。
(1号文書とはその年に最初に発表された法律を指す。政府がどの問題に関心を払っているかのメッセージと解釈される)

改革開放以来、さまざまな領域で民営企業の発展に向けた積極性が引き出されてきました。ニュース、出版業界でもすでに多くの民間企業が参加しています。特に企画、編集、制作の各段階では民間企業は独自の生産能力を備えていると言えるでしょう。なるべく早く、民間出版業と国有企業を同列に扱い、民間企業を体制外から体制内に転換させ、同じ条件で参加できるよう、私たちは提案し、そのために努力しています。


Dozing / Ed-meister



■「1号文書」のメリット

「ニュース・出版産業の発展の更なる推進に関する指導意見」と柳署長の発言は、民間出版企業にとってメリットとデメリットの2つの側面があると見られている。

メリットだが、現在、中国で出版業に参入するハードルは高い。書籍コードの取得には厳しいハードルが課され、民間企業が取得することは難しい。そのため書籍コードの売買という「違法行為」が横行しているほどだ。民間企業が国有企業並みの扱いを受けることで、書籍コードの取得が容易になるとみられる。

先日、角川書店、講談社が相次いで中国雑誌市場への参入を表明したが、いずれも中国国有企業とのタッグを組むスキーム。書籍コード、雑誌コードという「特権」を持っているだけの国有企業に利益をピンハネされてしまう構図だ。一足飛びに外資企業解禁とはならないだろうが、民間企業がパートナー候補になるだけで選択肢の幅が広がり、有利な契約を結べる公算も高くなる。
(関連記事:中国人が書いたハルヒ、ガンダム=話題の角川中国語マンガ雑誌を入手―北京文芸日記


■「1号文書」のデメリット

デメリットはもちろん「体制外から体制内へ」という言葉に感じられる不気味さ。民間企業への規制を強化しようという、言論統制の一環に過ぎないと指摘する論者も多い(ドイチェ・ヴェレ中国語版)。

香港誌『開放雑誌』の金鐘編集長は、香港の書店には中国本土での出版を規制された書籍がごろごろしている、「世界の禁書センター」となっていると指摘。民間出版企業の「体制内」への取り込みは、出版の自由という観点から見れば、後退に過ぎないと批判している。


■公的出版機関の「企業化」改革

上述のドイチェ・ヴェレや反体制論説サイト「参与」に掲載された論考では、民間企業の問題に注目が集中しているが、柳署長はもう1点、注目すべき論点を提供している。すなわち公的出版機関の民営化だ。2003年以来、国有大型出版機関の企業化と上場が進められていたが、その範囲をさらに拡大し、5000もの雑誌を企業化する改革が進められているという。

企業化改革の対象には中央と地方の党報、当方が運営する都市報及び晩報、国有企業発行の専門紙などが含まれる。「民間企業を体制内に」という動きがある一方で、「公的機関を市場に」という動きが同時に進められることになる。たんに市場化するだけではなく、競争を通じて発行部数が少ない新聞、機関を淘汰することも柳署長は示唆している。

公的機関出版の新聞や書籍でも政府批判的なものは少なくない。数が多すぎれば監督官庁の目も行き届かないので、数を減らしたいという「統治の観点」から出た発想なのか。それとも公共部門のスリム化と不良採算部門の閉鎖を目指す「経済の観点」から出た発想なのか、注目される。

個人的には5000もの新聞が一気に市場競争に投げ込まれれば、読者獲得を目指して当局に叱られるぎりぎりのゴシップ競争を繰り広げそうな予感がするのだが。


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