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「アップルが著作権侵害第二の敵」になった理由=「作家権利擁護連盟」が提訴―中国

2011年10月09日

2011年10月4日、作家や出版社が参加している「作家権利擁護連盟」は、米アップル社が提供するオンラインソフトウェアストア「アップストア」で海賊版書籍が販売されているとして、北京市第二中級人民法院に提訴した。訴訟では韓寒氏など人気作家6人、計23冊の海賊版販売を問い、計650万元(約7800万円)の賠償を求めている。
(関連リンク:中国広播網サンケイビズ

本サイトで取り上げた日本の人気小説家・東野圭吾氏が今後、中国語翻訳を許諾しないとのニュースも、発端はアップストアで海賊版を売られていたことだった。
(関連リンク:東野圭吾の中国市場撤退問題を考える=海賊版を当然と考える中国の消費者

「作家権利擁護連盟」は今年7月に設立されたが、韓寒氏ら中心人物は今年3月に百度のテキスト共有サービス「百度文庫」の著作権侵害を指弾、MP3訴訟をもやり過ごした中国IT業界の巨頭・百度を謝罪させ、著作権侵害コンテンツ削除を約束させた。百度に続く第二のターゲットとなったのがアップストアだった。

海賊版大国・中国には著作権侵害サイトはごまんとある。小説ならば、ネット掲示板にベタ貼りされているケースすらあるのだが、なぜアップルが次の対象となったのか。

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*ドラゴンボール全巻セットアプリ。無料。


それは第一にアップルが世界的な大企業であること、第二に著作権侵害コンテンツに課金システムを与えたことが問題となった。アップストアで提供されている海賊版小説アプリは無料のものもあるが、数十冊セットで数百円という有料版が主流だ。

アップストアで提供されているのだから正規版だと思っていた」という購入者はもちろん、「がんばれば無料の海賊版も見つかるが面倒だからお金を払おう」という購入者も、お金を払っているという意味ではもう一歩で正規版購入者になってくれる可能性もあるターゲットと言えるだろう。なかなか構築が難しい課金システムを、アップストアが海賊版販売者に与えてしまった問題性は小さなものではない。

裁判では、アップルは「海賊版の責任は販売者が負うべきでプラットフォームを提供しているアップルの責任ではない、正規の著作権者から連絡があれば削除している」と反論することになるだろうが、著作権者としては「いたちごっこの削除合戦を著作権者が手間かけてやんなきゃならないのか」と不満が残るところ。正規の著作権者とアップルに認定され、海賊版アプリが削除されるようになるのは相当な労力が必要だという。

ちょっと興味深いのは、先日、香港の電子雑誌「陽光時務」が中国アップストアから削除されたというニュース。同誌は今年初頭に南方都市報を解雇された著名ジャーナリスト・長平氏を編集長として創刊されたばかり。スタイリッシュなデザインや動画も取り込んだアプリケーションスタイルと、「敏感」な話題に大胆に踏み込む内容で注目されていた(ドイチェ・ヴェレ)。

「著作権侵害の訴えには反応が鈍いのに中国政府に怒られたらすぐに対応するのか?」強硬な政府の態度を考えれば理解できなくもないが、あまりに対照的な反応に米アップルの姿勢を問う声も上がっている。


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