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「従業員を奴隷のように働かせた」外資系企業ばかりが批判されるチャイナリスク―政治学で読む中国

2011年10月09日

■「搾取工場」とチャイナ・リスク■

中国経済網』に「血汗工厂频被曝光 涉GUCCI耐克苹果等品牌」(相次ぎ暴露されたスウェットショップ=グッチ、ナイキ、アップルなどのブランドも)という記事が掲載されていました。今日はこの記事をご紹介します。


■1.グッチ深圳店

広東省深圳市のグッチ旗艦店の従業員5人が退職後、グッチに公開質問状を出したというのが記事のメイン部分です。

質問状によると、職員に対してはあれこれ細かい規定が100以上も定められていたのだとか。中には生理的欲求に関するものも少なくなかったといいます。勤務中に水を飲むのにも上司への報告が必要。トレイに行くにも許可が必要で、時間も5分以内と制限されていたと報じられています。また、1日に10時間以上も立ちっぱなしの接客をしなければならず、妊娠していた従業員の流産も複数回あったと主張しています。


Gucci Beijing @ 5h30 am / paul-henri


*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


■2.その他の事例


グッチ宛の公開質問状だけがニュース性のネタですが、分量が足りなかったのか、似た事案がいくつか紹介されています。

第一の例がZARAを展開するスペイン・インデックス社。休みなし、ブラジル工場では、毎日14時間労働という「奴隷」のような扱いを受けていると紹介。続いて、コンバース・インドネシア工場で従業員が虐待を受けたという話。

そして、アップルの中国下請け工場の問題を指摘した米報告書(今年7月)も紹介されています。下請け企業の多くは、いわゆる「血汗工場」(スウェットショップ、搾取工場)であり、従業員は過酷な長時間労働を強いられていると批判されました。アップルの下請けとして知られる世界最大の電子機器OEM企業フォックスコンでは、昨年、自殺者が相次ぎ、国際的なニュースとなりましたが、この連続自殺も会社側の責任だと指摘されたとのことです。

これ以外にも、今年8月にはディズニー下請けの深圳おもちゃ工場が、月120時間もの超過勤務を強いていたこと、就職前に「超過勤務自主要望協定」という文書にサインするよう求められたエピソードが紹介されています。


■3.チャイナ・リスク

記事についての感想ですが、お気づきのとおり、批判されているのは全て外国企業です。グッチやインデックス社の事例では現地法人がどういう経営組織になっているかわからないので、一概にどうこう言えませんが、アップルやディズニーの場合、従業員にひどい扱いをしているのは下請けの現地法人です。問題は他の中国企業と比べてもひどい扱いだったのか、あるいはたいして違わなかったのかという点にあるのではないでしょうか。

中国人の離職率の高さは有名で、同じような職種で給料が高いところ、条件が良いところがあればすぐに転職します。公開質問状を送ったグッチの店員にしても同じでしょう。そう考えると、まわりと比べてひどい扱いをしていればすぐに転職してしまっていたはずですから、中国全体、少なくとも深圳ではどこの会社も同じような状況のだと思われます。

そういうひどいところと取引するべきではないと有名企業が責められているわけですが、本来ならば下請け企業がもっと責められてしかるべきです。中国では外国の有名企業というだけで批判されやすいのは周知の事実。現地基準にあわせた雇用条件にしたり、あるいは従業員に厳しい現地企業と取引することで、中国国内からの批判を浴びてしまう可能性があります。まあ、これもチャイナ・リスクと割り切るしかないのかもしれません。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


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