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2011年10月10日
■オープニング
さて、映像がyoutubeに上がってましたので、胡錦濤の重要講話と合わせて見て行きましょう。
■やはり江沢民は生きていた……
既報ですが、江沢民入場の映像もあります。係員に付き添われ胡錦濤の後ろに続いての入場。盛んに手を振りながら入ってくるわけですが、ホワイト胡錦濤的には「ご老体にもしもの事があっては」という気遣いから、ブラック胡錦濤的には「体調が悪いことをアピールできる」という意図が働いての、係員帯同となったんじゃないでしょうか。
おぼつかない感じで国歌を歌う後ろに、深刻な顔をした係員が映るというやらしい構図。それでも単独で映される回数が現役の常務委員より多く、さすが前総書記といったところです。
■老体に鞭打ち健在をアピール
江沢民は建党90周年式典前後では死亡説が流れるほどでしたし、体調も相当悪かったはず。この式典一本に体調を整えてきた感があります。実際は絞ってくるでしょうが、これからも出ようと思えばどんな式典でも出るでしょうし、またしつこく胡錦濤に付きまとうという宣言でもあります。
普通なら皆と同じように手拍子で入ってくるところを、会場にアピールしまくり。なかなかしぶとい爺さんであります。ただし健康状態が思わしくないことは、痩せこけた顔を見れば一目瞭然です。4年前の十七大と比べても、衰えは顕著です。
■胡錦濤秘書・令計画に昇格フラグ?
他に注目すると、胡錦濤の元秘書、中央弁公庁主任を務める令計画が政治局委員の後に大写しにされています。歴代の主任は候補委員でしたから、候補委員にしてもらえなかったのは胡錦濤の力不足ではないかとも思われます。
令は元々四中全会で政治局候補委員に昇格し、来年の十八大で政治局委員にという話もあったのですが、現在も中央委員のまま。中央書記処書記なのでたんなる中央委員ではないのですが、大写しは昇格フラグでしょうか。
ただし、中央委員会で中央候補委員から中央委員に穴埋めで昇格する事例は何件もあるものの、政治局委員、中央軍事委員会副主席への昇格は党大会の中間に開催される四中全会、五中全会でのみ行われており、党大会の直前の中央委員会は、「来年からの5年間はどうしよう」という方向性を軽く決める性格の大会になります。
孟建柱が政治局委員に昇格にするのと合わせて、胡錦濤がどれだけごり押しできるかの判断材料とはなるでしょうが、意味深なカット割りだったのでちょっと妄想してみました。
■朱鎔基、呉儀は欠席
その他の出席者ですと、朱鎔基、呉儀は欠席となっています。朱鎔基は今年7月の建党90周年、2009年10月の建国60周年といった最重要イベントには出ていたので、欠席は気になるところです。 「一応関係あるイベントには出てやったが、牽強付会のイベントなんか出るかケッ」とかだったらいいんですが。
(関連記事:「「朱鎔基、過激発言を連発」の真実=香港誌が特集―北京で考えたこと 」KINBRICKS NOW、2011年6月1日)
今日は主席台の4列目までカメラが舐めるようにねっとりと映していましたので、大体の席順が分かりました。こういうサービスカットが、私のような人間にはご褒美になるのです。
*「今回はパスじゃ!」第5代国務院総理・朱鎔基。
■中華全国帰国華僑連合会トップの講話
さて、通常であれば胡錦濤の重要演説なのですが、辛亥革命という孫中山先生を立てるイベントなので、「中国国民党革命委員会」を名乗る共産党の衛星党と、中華全国帰国華僑連合会のトップが講話を行い、共産党を立てています。
周鉄農「中国共産党員は孫文先生の革命事業の最も断固たる支持者」(人民日報、2011/10/9)
林軍「愛国主義は国内外にいる中華子孫の大団結を促進する強大な精神的パワー」(人民日報、2011/10/9)
周鉄農も林軍も、辛亥革命に対する説明はそこそこに、台湾との統一をテーマに持ってきています。「孫中山先生の遺訓である祖国統一を、一日も早く」ってそんな遺言ありましたっけ。
国民党の功績に全く言及される事はなく、「中国共産党がなければ、社会主義の新中国はなかった」「共産党の誕生から民族復興に光が見えた」との共産党の歴史観が、国民党の名を冠する党主席の口から出てくるのはあまりにも情けない。衛星党に期待してはいけないのですが。そもそも国民党が建党されたのは、辛亥革命の後です。
賈慶林の紹介を聞いて気付いたのですが、衛生党の講話は「發言」という扱い。「重要講話」でないのはもちろん、「講話」でもないのです。「講話」にも発言の意味はありますが、雑魚であることを強調するために「講話」を使わせないのでしょうか。
■胡錦濤の重要講話
お待ちかね、胡錦濤大先生の重要講話。
胡錦濤「辛亥革命100周年大会の講話」(新華社、2011/10/9)
■題目がなんであれ共産党賛美につなげるパワープレイ
まあ、何というか、辛亥革命を評価しつつも、すぐさま中国共産党へ結び付けてくるパワープレイはいつも通り。
「建国以来」、「改革開放以来」を「辛亥革命から100年」に置き換えただけで、「中華民族を実現する中国の特色ある社会主義という正しい道をついに探し当てた。その中心は中国共産党である」というオチもそのまま。愛国主義という単語が散見されますが、あんまり深く考えるだけ損なのかもしれません。
■いつだって合い言葉は「統一」
衛生党のお2人からも台湾統一が語られましたが、胡錦濤も最後に「中国統一」を持ち出しています。辛亥革命の記念は中国共産党の指導の正しさを証明し、統一を持ち出す口実に過ぎないのだということが、胡錦濤の演説からわかります。まあ、統一戦線を仕切る賈慶林が大会を主催している時点で、この方向性に気付くべきだったかもしれませんが。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。