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立派な汚職官僚になるために「徳」を積もう=公務員試験に新基準―中国(水彩画)

2011年10月18日

■公務員に求められる「徳」■

2012年度の国家公務員試験願書受付が始まりました。中国の公務員は中央省庁にあたる国務院の職員だけではなく、党中央の機関も一斉募集。宣伝部に入って愚民どもを操作してやる、なんて野望に燃える学生などいるんでしょうか。

日本もそうですが、中国でも安定を求めて公務員試験は年々狭き門となっています、昨年は15526人の募集に対して92万7000人が受験。倍率は約93倍という狭き門です。2003年には約16倍だったことを考えると、ここ数年で公務員人気が急激に高まっている事が分かります。


Konfuzius in Berlin / michael.berlin


*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


国家公務員といっても、党中央各部門、国務院といった日本でいう国家公務員だけでなく、特に鎮や街道といった「基層」の役人も含まれるため、外交部など人気のある省庁の倍率はさらに高くなります。

今年は更に倍率が高くなることが予想されます。英語の基準を上げ、さらに優秀な人材を取ろうとするようですが、先だってアナウンスされていたように受験者の徳も評価に入ることになりました。


■どのような人間は公務員になれないのか

数日前からネットに出回っている、公務員試験に関する動画があったのでご紹介します。

「徳を欠いた人物」を拒否する国家公務員試験=どのような人が国家公務員になれないのか(人民電視、2012年10月13日)
公務員採用試験は徳才兼備を堅持し、徳を第一の基準として、筆記試験や面接の成績だけを重視はしない。受験生の政治的品徳不良や、社会的な責任感、人民に服務する意識が劣るものは公務員になれない。

動画では「徳」が条件と説明されていますが、受験生が「徳」とやらを備えているかはどうやって見極めるのでしょうか。「日常の言動を見る」とだけ説明されているのですが、イマイチ基準が分かりません。中国共産主義青年団員としての活動やボランティアへの参加を奨励する。あるいはをツイッターで反中ぽい書き込みをするなよというという牽制なんでしょうか。

「徳才兼備」という触れ込みですが、そも「徳才」とはなんでしょう。「才」は文字通り才能、実力を指します。「徳」は道徳心の「徳」であるはずなのですが、現代中国においては共産党への忠誠心がまず第一義となります。日本語でいうところの「品行方正」になるのでしょう。


■時代は繰り返される

天安門事件で趙紫陽が失脚し、陳雲、鄧力群のような政治的、経済的保守派が影響力を拡大した時期がありました。胡耀邦や趙紫陽が「実力主義で人材を抜擢した」のですが、それも批判対象になってしまい、1992年の第14回党大会では、「徳才兼備、それも徳を優先的に人材抜擢の基準とする」と盛んに喧伝されました。

結局、保守派による人事への介入に業を煮やした鄧小平が南巡講話を敢行し保守派は総崩れとなりました。しかし現在は太子党という二世グループが台頭し、薄熙来のような文革回帰が持てはやされるなど、経済的にも思想的にも保守派が幅を利かせるようになるなど、20年前と似た状況にあります。人事についても「徳才」という表現が復活したのです。

しかも、たんに保守派の専売特許ではなく、中国共産党建党90周年式典で行われた胡錦濤の重要講話でも「徳を登用における第一の基準とする」との文言があります。優秀な幹部の定義は「政治的態度、実力、実績」とされています。


■問題は入り口ではなく、システム

それにしても、受験生にだけ「品行方正」を求め、制度的な欠陥に踏み込まないあたりが共産党員の限界かなとも思えてくるのです。

汚職に手を染めるような人間の性格だけに原因を求め、彼らの置かれている汚職しやすい環境や、チェック機能である紀律検査委員会の政治利用化。また、汚職問題で解任されながらほとぼりが冷めたころに再びポストを得た于幼軍のような高官がいるなど、大物ほど処分が甘くなる傾向もあります。こうした現状にメスを入れる気はさらさらないのでしょう。

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*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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