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【写真】「家持ち市民」が暴動=注目集める不動産価格下落問題―上海市

2011年10月25日

今、中国経済には2つの課題が浮上している。すなわち、中小企業の資金難と不動産価格の下落だ。2011年10月19日付フィナンシャルタイムズ中国語版は「中国の二大焦眉の急」と題して、この2つの問題を取り上げた。

このうち、中小企業(あるいはもっと小さな零細企業)の資金難と高利貸の問題は、記事「闇金スポンサーは一般市民=銀行預金5兆円が地下経済に流入か」で扱ったが、実は資金難と不動産価格の問題はリンクしたものとして考えられている。

不動産企業側は「不動産価格引き下げを目指して導入された金融引き締めが中小企業の首を絞めた」と主張。それに反論するものは「中小企業はいつの時代でも資金難。資金難がこれほど大々的に喧伝されているのは、中小企業問題にかこつけて金融緩和させようとする不動産企業のポジショントークだ」と批判している。

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*画像は「家持ち市民」のデモを警戒する対暴動警察部隊。



■中国不動産企業の儲け方

この問題を考える前にまず「中国不動産企業の儲け方」について抑えておきたい。

コネを生かして、政府の払い下げた土地をゲット

なるべく長く土地を放置

時間が経てば経つほど地価が上がる

政府が不動産価格抑制政策を打ち出した「冬の時代」には物件を売らずにひたすら我慢。金をかき集めて倒産を免れれさえすれば、またばんばん売れる時期が来るし。

という寸法だ。この「絶対に儲かる方程式」で中国不動産企業は繁栄を謳歌してきたわけだが、今回の「冬の時代」は長期化しており、危機は広がっているもようだ。


■「政府のやる気」と体力を失いつつある不動産企業

今までと何が違うかといえば、「政府のやる気」だろう。今年初頭から温家宝首相は不動産価格を中心としたインフレ対策に取り組むと宣言し、手を緩めることなく不動産企業を締め上げてきた。10月20日には福建省寧徳市の地方不動産開発企業が21億5000万元(約258億円)の負債を抱え、債務整理を求める公告を出した(財経網)。

大企業の倒産といった事態にまでいたっていないが、資金を確保しようと積み上がった在庫物件を値下げして販売する動きが広がっている。北京市ではまず郊外の値下げが始まり、その波は市中心部に向かいつつあると伝えられている。

というわけで、メディアを騒がす中小企業資金難問題はポジショントークだという批判も状況証拠的には十分考えられる筋だろう。中国ニュースを読みまくる日々を送っている私も、ポジショントーク説が説得力があるとの印象を持っている。

不動産企業の悲鳴がこだましているわけだが、それでも政府は強硬姿勢を崩さない。19日には中国銀行業監督管理委員会の劉明康主席が「不動産価格が40%下落しても、銀行の債務危機は発生しないことがストレステストの結果判明した」と豪語(財経網)。価格が4割下がれば中国経済は滅茶苦茶になることは間違いないが、「それぐらいの覚悟でやっているので4649」という脅迫ポジショントークをかましている。


■「家持ち市民」VS「家なし市民」、2つに割れた世論

さて、不動産価格下落が広がりつつあるなか、政府VS不動産企業とは別の対立軸も浮上してきた。すなわち「家持ち市民VS家なし市民」である。これから家を買おうと考えている人にとっては不動産価格下落は大歓迎。だが、すでに家を持っている人にとっては自分の財産が目減りするどうにも許せない事態だ。

そうした中、上海の「家持ち市民」がついに暴動を起こした。不動産企業が「セール名目」で値引きしたことを知った「家持ち市民」がモデルルームに乱入し打ち壊し、あるいは横断幕をもってデモ更新するという事件が連日のように起きている(財新網)。

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ローン残高より物件の資産価値が安くなってしまった「本当にダメな場合」は、銀行に担保の住宅を渡してローンの支払いをやめることになるだろうが、現時点ではそこまでではないよう。「値下げしないと約束していたのに破りやがった!」「買うタイミングを数カ月間違えただけでエラい損じゃ!」ということなのだろう。

中にはモデルルームに突入して模型をぼこぼこに壊したりしたケースもある。上海市警察も対暴動警察部隊を出動させるなど、正真正銘の「暴動」となっている。

「家を買えるだけの金持ちなんだろ?ちょっとぐらいの損でがたがた言うな」と「家なし市民」は冷笑的だが、根本的に利益が相反する両者だけに、中国政府が配慮すべき世論が2つに割れたという意味で注目すべき問題だろう。


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