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園田政務官のパフォーマンスと中国の報道=底意地の悪い翻訳記事(凜)

2011年11月05日

■園田政務官のパフォーマンスについての海外報道 ■

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


内閣府の園田康博政務官による、福島第1原子力発電所の低濃度汚染水を浄化した水を飲むというパフォーマンスが話題になりました。この事件が海外でも報道されています。

20111103_園田政務官_浄化水_中国_写真
新華網の報道。



■園田政務官と浄化水


簡単に経緯を説明しておきますと、東電が10月7日から福島第1原子力発電所5号機、6号機の汚染水を浄化し、原発敷地内の山林で散水を始めたことが発端です。放射性物質の拡散ではないかとの批判を浴びました。

10日の東電記者会見では、あるフリージャーナリストが「飲んでも大丈夫か」と質問。東電は殺菌などの処理がされていないので飲料水ではないと応じています。

そして、13日の政府、東電の合同会見で、フリージャーナリストの寺澤有氏が同様の質問をしたところ、園田政務官が飲むことを約束。31日にパフォーマンスをやってのけたという流れになります。


■『新華網』の報道


さて、この件について英紙ガーディアンが報道。その翻訳記事として、『新華網』も伝えています。

タイトルは「日官员喝核电站处理水为记者所迫 喝水时手发抖」(日本官僚、記者に迫られ原発処理水を飲む=その時手が震えていた)というもの。まさに「手が震えていた」ことに重点を置いています。

(園田政務官が処理水を飲んだことについて)ショーではないかと批判的な報道も多い。園田康博のパフォーマンスは記者に迫られてのもの。処理水を飲む時、彼の手は震えていた。

放射性物質は取り除かれているとはいっても、園田の唇がコップに触れた時、緊張は明らかであった。岡田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。彼は2口で水を飲み干し、コップを掲げてテレビカメラの前にポーズを付け、自分は無事だと証明した。

記事は「飲んだからといって、絶対安全という証明にはならないことは知っているが、現在これが大衆に対し証明する最もよい方法と思ったから飲んだ」という園田政務官の発言と、今年4月にも枝野官房長官がいわき市のいちごを食べたこと等を紹介して終わっています。


■英Guardian紙の報道


さて中国メディアの翻訳記事ですが、何度もご紹介しているとおりいい加減なことが多いのです。元記事を確認しないと本当に騙されます。

というわけで、元記事を見てみました。「Japanese MP drinks Fukushima water under pressure from journalists」(日本の議員が記者の圧力を受けてフクシマの水を飲む)です。

さてこの記事ですが、先に訳した政務官の唇がコップに触れていたとき、明らかに緊張していた云々の部分はだいたいそのとおりですが、『新華網』で強調されていた岡田政務官の手が震えていたという部分の記述は以下のとおりです。

Sonoda's hands shook as he half-filled the glass from a plastic bottle, before polishing off the water in two swift gulps. He briefly held the glass up to the cameras, as if to prove that no sleight of hand had been involved.

下手くそながら訳してみます。

水を2口でがぶ飲みする前に、プラスチックボトルからコップに水を半分注いだ時、園田の手は揺れた(震えた)。彼はカメラの前にコップを短時間掲げたが、それは手に手品のたねがないことを証明しているようだった。


■中国の翻訳の問題点


問題になるのは、「Sonoda's hands shook」のところで、文型は極めて単純な主語と動詞だけの文です。shookはshakeの過去形で、この動詞は自動詞と他動詞がありますが、後ろに目的語がないので、自動詞で、「揺れる、震える」の意味になります。

中国語の原文は「当园田康博接过盛满水的杯子时,他的双手一直在抖。」で先に訳したとおり、「岡田康博が水でコップを一杯にする時、彼の両手はずっと震えていた。」です。先に見たとおり、「揺れた」「震えた」どちらの訳も可能かと思いますが、「ずっと(一直)震えていた」という訳はいかがなものでしょうか。

それに後ろの「手品のたね」云々の部分があるのとないのとでは、全く受ける印象が異なってきますが『新華網』では訳されておりません。そもそも、このGuardianの記事はさほど岡田政務官に批判的ではありません。

例えば「問題の水は既に放射性物質が取り除かれており、彼はマゾヒスト的行為をしたわけではない」という記述もあれば、記事の一番最後では、BSE危機の時に英国の牛肉の安全性を証明するために娘にハンバーガーを食べさせた保守党議員John Gummerを引き合いにだし、娘をパフォーマンスに使うようなことはしなかったと述べています。

こういうところは中国語には訳されていないわけで、例によって例の如く、かなり意図的な、底意地の悪い翻訳記事となりました。

最後に一つ余談を。Guardianの記事では、園田政務官に水を飲むよう迫った記者は「Yu Terasawa, a well-known freelance journalist」(有名なフリージャーナリスト・寺澤有)と表記されています。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


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