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2011年は日本以上の「厄年」!?貧困者4900万人を抱えるアメリカ(ucci-h)

2011年11月14日

■厄年、深刻化するアメリカの失業手当切れ■

*当記事は2011年11月8日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


2010年代の「厄年」2011年もあと2ヶ月弱となった。日本の津波、原発事故、欧州全体に広がる債務危機、そしてここタイの洪水被害、いずれも収拾のめどがつかず、来年にまたがるかも知れない。

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*1929年の世界恐慌直後、貧しく困窮したアメリカ。米資本主義経済の中で、工業機械に淘汰されていく人間たちを風刺した、チャールズ・チャップリン不朽の名作「モダン・タイムス」。


■日本以上の「厄年」?切迫したアメリカの窮状


いずれも2008年のリーマン・ショック後、立直れずに居る先進国経済への第2のパンチとなっているが、この2011年、ひそかに一番経済的に参っているのは、「貧困大国」アメリカではないだろうか。

昔なら戦前の暗い世相を髣髴させ、戦争がひとつの解決策にもなったが、21世紀の今はそんな物騒なことにはつながらないだろう。いや、つながらないと期待する。もっとも、5年後に貧窮著しい軍事大国アメリカと、拡張主義の
中国が何かで衝突する事態が起こらないとは言い切れないかも知れない。

アメリカは衰えたと言えども、世界のGDPのなお4分の1を支える経済超大国だ。アジアやヨーロッパがそれぞれ束になってやっと並べれる規模である。アメリカ経済にアジアへの輸出なども通じて、日本の経済が多く依存している形にもちろん変わりはない。そのアメリカでは、リーマン・ショック後3年にわたる金融緩和にもかかわらず、景気の回復は鈍く、何よりも雇用が拡大していない現状がある。


■「雇用なき回復」1390万人の失業者

アメリカの失業者の数だが、リーマン・ショック後の秋、2008年10月に1000万人に乗せた後、1年後の2009年10月には1563万人に膨れた。その後の緩やかな景気回復は「雇用なき回復」であり、2011年10月現在でもなお1390万人という失業者が存在する。ここまでの2年間の景気回復で、失業者はピークからわずか11%しか減っていないのだ。

1400万人という失業者数は、日本の9月の失業者数275万人の5倍の人数である(経済規模、失業の定義がやや違うが)。失業率はリーマンショック前の4~5%から、2009年10月には10.1%をつけ、2011年10月現在でもなお9%という高さにある。

アメリカの民間雇用者数は、2008年の1億4600万人水準から、2009年12月の1億3800万人ほどへ、信用危機により2年近くで800万人ほど減ったが、その後の回復は鈍く、2011年10月現在、1億4000万人と、ボトムから200万人ほどしか増えていない。減った分のカバー率は4分の1足らずだ。

問題はこのたまった膨大な失業者数が、米国の財政をいっそう苦しくし、また経済の停滞という悪循環を招いていることだ。21世紀初頭のアメリカの国家的問題は「肥満」(これも貧困化に由来)だったが、いまや「雇用危機」が、アメリカの国家的危機となっている。

社会流動性の高いアメリカでも、失業者に対しては、自発的失業はダメだが、会社都合によるものに対してはきちんと失業手当が出る。週平均300ドル(約2万3300円)ほどが、基本26週間支払われる。半年ほどすれば、景気も回復につき、再就職できるだろうとの設計だ。この失業保険が大恐慌の頃のように存在しなければ、アメリカ社会は遙かに大きく揺れていたことだろう。

Barack Obama
Barack Obama / Joe Crimmings Photography



■足りるのか?3兆5000億円の失業手当

失業手当に政府は450億ドル(約3兆4900億円)という巨費を投じるが(保険料は主に雇用主が納める)、議会予算局によれば、失業手当1ドル(約78円)に対して1.9ドル(約148円)の経済効果が出るので、経済成長にもプラスであるとの発表を行っている。

問題は今回の「雇用なき回復」である。先に見たように、景気が下降してから3年も経過しているのに、雇用の伸びがかつてほどはない。前回3回のリセッション時でも、失業の最長期間は21週間だった。それが今回は最長39週間にまで及んでいる。大恐慌時の41週間に迫る長さである。

失業期間の大幅な長期化に対して、米議会もここまで9回もの失業手当延長を行なってきた。通常の支払い期間は26週間だが、「緊急失業手当」を13週、20週と次々に上乗せを行ってきた。今では失業率の高い20の州の場合、なんと99週間、ほぼ2年近くまでに拡張されたのだ。

しかし、それでも足りてはいない。2010年はじめ、1100万人の多く(失業者の4分の3)が失業手当を手にしていたが(もらわないのは、自発的失業者や新卒浪人)、いまなお1400万人もの失業者がいる。その中で手当てを受けているのは、4割減の670万人にまで減少してしまった。もちろん、景気が回復傾向となり、多くの人間が職に就けたからではない。

通常の景気回復の傾向であれば、手当受給者数は半分以下程度に減少するのだが、今回は雇用増が鈍くそうはいかない。一方で、今回は失業者の3分の1が、1年以上の「長期失業者」になっているので、「期限切れ」で付与されない人数が増加しているわけだ。

期間延長も追いつかないほどのすさまじい増加率である。200万人が99週をもらいきって、なお失業しているのだ。このままだと、来年2月までにさらに220万人が期限切れを迎えるという結果になる。


■失業手手当が切れた人は?


失業手当が切れた人はどうするのか?AP電はロードアイランドに住む55歳の倉庫従業員のケースを紹介している。彼は2008年に失業し、コンピュータ技術を持たないことが理由で現在も仕事がない。社会保障のDI(所得保険)、フード・スタンプをもらい、政府の補助住宅で生活をしている。しかし、これでもまだ良ケースと呼んでも良いのかも知れない。
(フード・スタンプ:米で低所得者向けに行われている食料費補助対策。金券の一種。酒、タバコなど嗜好品は除外。)


現在アメリカでは史上最高の4600万人(人口の15%)近い人がフード・スタンプをもらっている。統計局によると昨年、失業手当で320万人の人が、「貧困ライン」(4人家族で年収2万2314ドル(約173万円))未満への転落を免れたが、手当が切れ雇用が増加しな限り、貧困層がいっそう増加する自体に陥ってしまう。


■先進国の不況が拡大すれば……


このまま欧州の債務問題が拡大し、先進国の不況が拡大した場合、一体どうなってしまうのだろうか。1990年、ソビエト連邦が崩壊し共産主義大国が倒れた時、資本市場主義経済勝利のモニュメントとして、その光景は目視された。しかし、現在の欧米の経済状況は、市場原理主義が生み出したレバレッジ投機のなれの果てとも見てとれるのではないか。「資本主義よ、お前もか」では困ってしまうのだ。

早急に欧州債務問題の解決と、米国経済の底入れが待たれる。TPP(環太平洋パートナーシップ)に臨む日本の政治家の中に、「うちも大変だが、アメリカさんはもっと大変だなあ」と思う政治家はどのくらいいるのだろうか。

追記:
11月7日に統計局から発表された新しい基準(政府からの補助なども含める)では、アメリカの2010年の貧困者は4900万人に増加している。全人口の16%、6人に1人だ(4人家族で2万4343ドルの年収未満)。ヒスパニック、黒人は28%、25%とより高い状況にある。

NY-Esperanca perdida / Lost hope
NY-Esperanca perdida / Lost hope / esperanca photography


関連記事:
観光促進に動き出したアメリカ=雇用拡大につなげられるか(ucci-h)(2011年11月11日)

*当記事は2011年11月8日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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