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超豪華!ビジュアル重視のホラー小説専門誌『午夜小説絵』が誕生―中国(阿井)

2011年11月26日

■ホラー誌 午夜小説絵 創刊■

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。


2011年11月11日の光棍節に中国で新たな雑誌が生まれた。その名も『午夜小説絵』。一般的な雑誌よりも挿絵に重点を置いた小説誌である。発行元は『歳月推理』と『推理世界』の2つのミステリ雑誌を出版している歳月文学雑誌社だ。
(関連記事:「中国本土ミステリー界の総本山「歳月・推理出版社」に行ってきた―北京文芸日記」2011年3月15日)

20111126_午夜小説絵_中国_ホラー

『午夜』とは真夜中という意味を指す中国語である。ちなみに日本の有名なホラー映画『リング』は中国語で『午夜凶鈴』と言う。『午夜』という言葉を冠していることからもわかるように、本書の内容はホラー寄りである。本業のミステリとは似て非なるジャンルを挑戦したにも関わらず、歳月文学雑誌社は非常に豪華な作家陣を持ってきた。

『鬼吹灯』
の作者天下覇唱と『盗墓筆記』の作者南派三叔という盗墓小説の2大看板を惜しげもなく起用するあたりに雑誌社の意気込みが伺える。
(南派三叔は2010年作家長者番付で堂々の2位に。関連記事:【作家長者番付】印税王はあのイケメン作家、黒柳徹子快進撃の怪―中国
 
盗墓小説とは冒険小説や秘境探検小説のようなジャンルであり、誤解を恐れずに言うとインディー・ジョーンズやハムナプトラみたいな内容である。天下覇唱と南派三叔はそのジャンルを築き上げた立役者であり、中国小説界全体で人気を誇るベストセラー作家と言っても差し支えないだろう。

20111126_南派三叔_ホラー小説家_中国
*『盗墓筆記』の著者・南
派三叔。コラしたい写真。この角度はちょっと許されない。
 


■米デザイン事務所に制作を委託『盗墓筆記』

本書の巻頭を飾るのは『盗墓筆記』のマンガだ。このマンガと今号の表紙はアメリカのデザイン事務所に制作を委託しているため、アメリカンコミックのような質感のある絵柄となっている。

20111126_午夜小説絵_中国_ホラー_盗墓筆記_漫画

しかし、せっかくアメコミ風にして他の雑誌との違いを際立たせているのに、特殊なフォントと紙質のせいで文字がかすれ、セリフが全然見えなかったのがもったいなかった。次号では絶対改善してもらいたい。
 
 
■連載陣について

 
『午夜小説絵』には天下覇唱と南派三叔という誰もが知っているベストセラー作家以外にも、小粒な作家が揃っている。以前、当ブログで紹介した大陸産ライトノベル『耳食者』の作者・王雨辰も本誌に妖怪モノの短編ホラーを寄稿している。彼はそもそもホラー畑出身の作家で数をこなせるので、このような雑誌には適任だ。
(関連記事:「ツッコミのテンポで読ませる妖怪ライトノベル『耳食者』は日本のあのマンガをモチーフにしていた―北京文芸日記」2011年6月7日)

そして中堅どころの作品の合間には、おそらくまだ無名かデビューしたばかりの新人のショートショートホラーが掲載されている。挿絵は全ての作品に付いているので、1話読み終えるたびに異なるイラストレーターによる挿絵を見ることができ、頭がリセットされて新たな気持ちで次の作品を楽しめる。


■ベストセラー作家を擁するリスク


鳴り物入りで創刊された『午夜小説絵』はネームバリューの高い作家を軸に今後も月一で刊行されるようだ。この雑誌は今後中国の雑誌業界でいかなる位置を占めるのだろう。

実は中国には『怖客』『X族』などホラー小説誌は数多く存在する。しかし『午夜小説絵』は抱えている作家陣が他と比べてその知名度も実力も高い。出版社にとって初めての雑誌でもないので、既存の読者がいることも強みだろう。

ただし、有名どころを起用すればコストもそれなりにかかるということだ。くれぐれも、作家に原稿料が支払えず廃刊となったり、無名作家ばかりが残ってその他多数の雑誌と同じレベルに落ちたりすることがないようにしてもらいたい。派手に咲き誇りすぐに散る徒花で終わってほしくはないものだ。

関連記事:
大陸へ渡った日本の都市伝説=中国的稲川淳二怪談―北京文芸日記(2011年6月18日)
原稿料は1文字1円だけ?!中国推理小説家の家計簿―中国本土ミステリの世界(2011年2月21日)

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。


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