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クリントン国務長官の歴史的訪問=ミャンマーに残された難題(後編)(ucci-h)

2011年12月01日

■クリントン国務長官の歴史的訪問でも応えられないビルマの2つの課題(下)■

*当記事は2011年11月30日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


56年ぶりという歴史的な米国務長官のミャンマー訪問。ASEAN復帰も決定し、いよいよ本格的に民主改革路線を突き進みだしたミャンマー。しかし、その行く手を阻む巨大な難題、病理の存在があります。

2回にわたる特集、後編です。お読みでない方はまず前編からどうぞ。


Hillary Clinton
Hillary Clinton / Center for American Progress Action Fund



■2000人近いともいわれる政治犯の釈放


米国ヒラリー国務長官の歴史的なビルマ訪問に当たって、少数民族への政府軍のここへ来ての弾圧に加え、ビルマの抱えるもうひとつの課題は、政治犯の釈放である。

革新的なテイン・セイン大統領だが、政治犯の問題についてだけは、以前の軍事政権トップとなんら発言は変わっていない。「ビルマには良心の囚人(政治犯など)は居ないと信じている」となお言っているのだ。これは、明らかな政治的な偽りの発言である。

10月12日に政治犯200人ほどを含む6000人を超す囚人が恩赦で釈放された。その後11月にも釈放の噂が立ったが、実際に釈放行われなかった。なお500人から1900人ほどの政治犯が牢獄の中に居るとみられる。


■あくまでコントロールされた釈放パフォーマンス


ビルマにおける政治犯の釈放は、過去何度か行なわれてきている(政府は、政治犯の釈放とは言わないが……)。1992年タン・シュエ将軍(現在78歳)が国家元首・首相の座に就いた際、数千人の釈放令を出したし、2004年キン・ニュン首相が失脚後も、同じく数千人の政治犯を釈放している。


20111117_ミャンマー_ヤンゴン_刑務所_政治犯
チャネル・ニュース・アジアの報道。ヤンゴンの刑務所。

言い方は悪いが、多くの政治犯をしょっ引いて、その後釈放すれば、釈放の実績はいやでも増える。実際、逮捕→釈放→再逮捕といった点数稼ぎの形式も多い。

今回のクリントン国務長官の来訪にあたって、ビルマ政府は何人かの政治犯を釈放し、民主化路線を印象づかせようとするかも知れないが、なお現政権と厳しく対立する強固な政治犯は釈放しないとみられる。

2週間ほど前に、最も名の知られているふたりの政治犯、ミン・コ・ナイン(政治家と言うより詩人)とクン・トゥン・ウー(シャン州出身の政治家)等が、監獄を移されたと、チェンマイ在住のイラワジ誌編集長のアウン・ザオ氏は伝えている。

例えば、影響の少ないミン・コ・ナインを釈放して、政治的影響力の強いコ・コ・ジー(88年学生反乱の時のリーダー)はとどめるといったバランスを考えた方法論が考えられるという。


■なお厳しいアメリカの目


アメリカも楽観的には見ていない。1988年のデモ鎮圧以来続いている経済支援の停止、経済制裁の執行を、50年ぶりの国務長官の訪問だからといって、すぐさま取り止めるというつもりはないようだ。

クリントンは言っている。

「我々は経済制裁を取り止めるなど、急な変更を行なうつもりはない。もう少し、事実を確かめる必要がある」

ビルマを何回か訪れている、かつての大統領候補の米国上院議員ジョン・ケリーも、「なお言葉より、行動に重みがある。ビルマ政府は、無条件ですべての政治犯を釈放し、国境沿いでの残虐行為をやめさせる必要がある」と述べている。ビルマ新政権の様々な口約束をそのまま受け止めてはいない。


■「豊富な資源」「中朝との緊密関係」
米にとって重要すぎる国

アメリカにとって、ビルマは東南アジアの重要な一国という以上に、豊かな鉱物資源を持ち、北朝鮮との核開発の疑惑を抱え、さらに中国との緊密な関係を持つ、という点から、戦略的にも放っておくことが出来ない国になっている。

SINNKOKKI
*2010年10月21日に新国旗に制定された新ミャンマー国旗。


クリントン訪問を控えて、中国も動いている。2013年にフー・チンタオ(胡錦濤)主席の後任者になると目されるシー・ジンピン(習近平)副主席は、11月28日、北京でビルマの軍のトップ、ミン・アウン・ライン最高司令官と会い、「我々の従来からの絆を変わりなく強めよう。戦略的な協力を惜しまない」と、米国の接近に対して、ビルマ軍を押さえにかかっている。

オバマ大統領は、クリントン国務長官を送り出すに当たりこう発言している。
「ここまでビルマの進歩へのフリッカー(明かりの点滅)を見てきている。進歩は進歩で歓迎すべきだ。しかし、フリッカーだけでは、改革への道に乗ったかどうか判断するには不十分だ。まだだ!」

Obama in Terre Haute
Obama in Terre Haute / BeckyF

*image

12月1日からのクリントン訪問は、ポップスター並みの人気で扱われることだろう。とはいえ、現在のビルマ政権に米国の問いかけに答えられるだけの十分な準備が出来ているだろうか。おそらく、まだだろう。

<前編>
クリントン国務長官の歴史的訪問=ミャンマーに残された難題(前編)

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関連リンク:
ミャンマー大統領と会談=米国務長官、一層の改革直接要請(時事ドットコム、2011年12月1日)

*当記事は2011年11月30日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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