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北京の不動産価格が半値になった?!誤訳が生み出すトンデモ中国崩壊論

2011年12月04日

中国経済崩壊論が次第に有力となり、中国から投資家がみんな脱出しているそうです(棒読み)


Pingod 002
Pingod 002 / likeyesterday


■中国の崩壊間近?!

投資家がみんな中国から逃げ出した
ゆかしメディア、2011年12月3日

最近まで“中国経済崩壊”を論じる人は、誰からも賛同を得ることはなかった。だが、中国の経済成長率が緩やかになるにつれ、崩壊論者が舞台の中心を占めるようになってきたようだ。専門家は、中国経済が直面する問題は日増しに大きくなっていると指摘する。

2006年に「中国即将崩壊」を出版した章家敦(Gordon Chang)氏は、投資家達の集まりに出席するたびに、中国経済の崩壊は目の前に迫っていると確信するという。

今朝、NHKを見ていたら、欧州債務危機が中国に飛び火するかも……という解説をしていましたが、飛び火どころか、中国が「崩壊」するやもというなんともセンセーショナルな記事。

フリージャーナリストの佐々木俊尚さんも

10月の不動産価格は北京など6都市で前年比50%下落。バブル崩壊が始まったのか。/投資家がみんな中国から逃げ出した | YUCASEE MEDIA

とこの記事を紹介しています。


■年内に中国は崩壊する

ただこの記事、ちょっと変なのです。「2006年に「中国即将崩壊」を出版した章家敦(Gordon Chang)」とありますが、同氏の著作「The Coming Collapse of China」(邦題は「やがて中国の崩壊がはじまる」)が出版されたのは2001年のこと。重要コメンテーターの著作出版年を間違えているあたりで、なんか不安感が……。

ちなみにゴードン・チャンさんは10年以上前から汚職など中国の問題を指摘し続け、「中国の崩壊がもうすぐやってくる!」と説き続けられているお方。「やがて中国の崩壊がやってくる」では10年以内に中国共産党政権が崩壊する予言されており、今年はちょうど10年目。予言が間に合いそうなことが嬉しいのか(?)、「年内に崩壊だ!」との大胆予想を示しているようです(VOA)。

さて、ちょっと調べてみたところ、ゆかしメディアさんの記事には引用表記がないのですが、この記事は記事「Being a bear on China gains favor」(ロサンゼルス・タイムズ)を翻訳し、末尾の日本関係の記述などを加筆したもの。ゴードン・チャンの本を中国名表記していることから、米華字ニュースサイト・世界日報の中文訳を参照した可能性が大です。
(世界日報は転載元としてAP通信と表記していることから初出はAPの可能性も)。


■北京の不動産価格が半値に?!のスーパー誤訳

さて、この記事の注目ポイントはなんといっても、不動産価格でしょう。北京ではなんと!不動産価格が半値になっているというのです。それなら年内と言わずもうすでに崩壊しているような気も……。

ところが、今年10月の不動産価格は2カ月続けて下降、資金不足となった不動産業者は売りに走り、35都市中、実に29都市の不動産価格が1年前より大きく減少した。中でも北京を含む6都市は前年比50%以上の下落となった。
「投資家がみんな中国から逃げ出した」より

こんな重要な統計を見逃していたとは!不覚です。とりあえずどこの調査か知りたくて、原文をあたってみると……。

主要35都市の統計によると、29都市で前年よりも販売数が減少している。北京を含む6都市では50%以上の下落となった。

って、価格じゃないじゃーん!誤訳じゃーん!

今は確かに不動産価格の先行きが不透明なので、「見」に回っている人が多いのです。また不動産販売規制で、その都市の戸籍を持っていないと買えないとか、住宅ローンの条件が悪いという問題もあります。なので、成約数が下がっているのはごくごく自然な話です。


■米資本、香港資本が中国不動産「底値買い」に出撃

住宅在庫の積み増し、政府の大号令による急激すぎる低所得者向け住宅の建設、不動産企業の資金難の噂、地方政府の土地払い下げ入札不成立、新築住宅の値下げ販売などなど、確かに中国の不動産市場の先行きは不透明です。

ただ、いまだに中国政府は不動産価格を下げようとする政策姿勢を崩していません。中国政府は内心びくびくしているかもしれませんが、リーマンショック後に見られた、発狂したような景気対策へとは転じていないのです。

「資産バブル終焉」に懸念 中国人民銀行、異例の警告
産経新聞、2011年12月4日

人民銀行は11月30日に週明け5日からの預金準備率引き下げを発表。金融緩和策への転換を表明しているが、不動産価格の抑制策を堅持する方針は変えていない。「資産バブル終焉」警告を出しておくことで、週明けに市場が再び住宅価格の高騰に転じないようクギを刺した可能性がある。

また米投資ファンド・ブラックストーンが中国不動産企業・緑城集団と合資会社を設立する動きを見せたり、香港不動産企業が中国本土投資の動きを加速させたりと、割安感の出た物件を外資が狙うという動きも報じられるようになりました(財経網華夏時報

中国経済の不透明感が高まっているのは事実ですが、「中国が危ない、中国こそ火種、中国まもなく崩壊」と騒ぐのは明らかに過剰反応のように思えるのですが、いかがでしょうか?


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