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共産党員は宗教を捨てよ=たとえチベット族、ムスリムであろうとも―中国(水彩画)

2011年12月22日

■宗教に走る党員増加のシグナル■

*当記事は2011年12月21日付ブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


20111221_中国_お寺_2
*中国の寺院で警備の合間に戯れる公安。


「一部党員は事実上宗教の信者となっている」

先日中央統一戦線部の朱維群常務副部長が『求是』誌に寄稿した、「共産党員は宗教を信仰できない」という文章が目を引きました。

統戦部副部長「一部党員は事実上宗教の信者となっている」

人民日報・求是、2011年12月17日

近年、宗教振興人口と宗教に対する認識が多様化する中、注意すべき現象がある。共産党員が宗教活動に参加し、宗教界の人間と密接な指摘関係を築く現象が増えており、一部党員は事実上信者となっている。

また、社会や党内に一種の声が現れた。解禁すべき、党員に信教の自由を許すべき、党員の信仰の自由にはメリットが多いとするもの。さらには、党員に信仰を許さないのは、憲法が保障する公民の宗教の自由の精神と反するという指摘まである。

党員が宗教を信仰できない原則は一貫しており、これまで揺らいだ事は全く無い。この原則は党のマルクス主義弁証唯物主義世界観が決定するものである。党の各級組織と広範な党員は冷静に認識し、如何なる状況下でもこの原則を揺るがせてはならない。

■「共産党員は無神論者」


党員の宗教信仰については、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤ら各世代のリーダーらが「共産党員は無神論者」であると定義づけていました。

鄧小平の頃は「党の宗教自由政策は公民に対してであり、党員には適用されない」「どうしても考えを改めないなら、離党を勧告する」と勇ましかったのに比べると、2002年に出された『中国共産党、国務院の宗教工作強化に関する決定』では「共産党員は宗教を信仰する事はできない。党員を教育し、幹部は共産主義の信念を断固とし、宗教の侵食を防がなければならない」と、侵食を感じさせる内容となっています。

取り分け、党員約の25%を占める35歳以下について「世界観を形成する時期に、彼らが自覚してマルクス主義宗教観と無神論の学習を強化させなければ」、引退した党員には「党組織は彼らの物質的生活だけでなく、精神的な生活にも関心を払わねばならない」と、この両者に信者が増えているのを示唆しています。


■中国の寺院


予断ですが、私はこの夏に中国で妻に連れられて信仰するお寺に参拝しました。

20111221_中国_お寺_1

寺の中は日曜の朝だというのに人山人海で、ゴリラかオランウータンと間違えてるのかと思うくらい大量のお供えをする人民がひっきりなしに動き回り、一心不乱に念仏を唱える姿を目の当たりにしました。

何をやっても大躍進というか、中間が無くて両極端に振れがちな中国ですが、信者たちは真剣そのもの。これは共産党も地下教会潰すわと思ったものです。何せ数が多いですからね。公安も毎週のように警備に当たっているのですが、中共にとって宗教施設というのは程度の差こそあれ公安が警備すべき場所なのです。


■宗教に走る党員の増加を懸念

朱維群の「解禁」反論文「共産党員は宗教信仰不可」(人民網、2011年12月20日)


昨日2011年12月20日、朱維群論文を再確認する記事が人民日報に掲載されました。

ほとんどは論文の焼き直しですが、特に公民に保証されている信仰の自由を犯しているという指摘に対する反論が目立ちます。「中国公民に保証されているはずの権利が、何故党員には無いのか」と食い下がったり、「私は中国共産党員である前に中国公民だ」とうそぶく党員が少なからずいるのではないでしょうか。

ちなみに、公民が自ら共産党に入党すると、それは「無条件でマルクス主義の弁証唯物主義世界観を受け入れることを意味」しているのそうです。この辺りの論理に無理があるため、党員はそこを突いて宗教活動に参加するのでしょう。

また、一部党員は「宗教問題で曖昧な認識であり」、「実践で公民の宗教の自由と、党員の宗教信仰を許さないという2つの間に明確にラインを引かなければならない」といつもの調子で二択を迫っています。

毎年8月1日の建軍節になると「解放軍は絶対党の軍隊。国有化などありえない」といった軍の国有化という動きを懸念する勇ましい文章が並びますが、朱維群論文は宗教に走る党員の増加を懸念したもの、ということになるのでしょうね。


*Chinanews追記
水彩画さんの大変興味深い記事でした。簡単に補足を。

宗教というと、なにやらたいそうなものに聞こえますが、近年問題となっているのが官僚の迷信好き。記事「中国一の「バカ官僚」登場=「風水に良くないからそのマンション壊せよ」―重慶市」「県庁舎前に戦闘機、政府オフィス窓に林立する鏡=共産党官僚は「迷信」がお好き―中国」あたりを読んでいただければわかるか、と。高尚な論文なのでこのあたりは念頭に置かれていないのかもしれませんが、風水や占い、怪しげな気功なんかも宗教問題の関連分野と言えるでしょう。

それから気になるのは回族やチベット族、ウイグル族など少数民族幹部にも宗教を捨てさせるのかという点です。これについては「求是」論文に方針を明確にしている個所がありましたので、ご紹介します。

我が国の一部民族地区は往々にして伝統的宗教の影響が比較的強い地域である。多くの少数民族党員は民族の団結を守るため、辺境の安定を保つために重要な役割を果たしており、また宣伝教育の重点となるべき存在である。宗教を持つ人が多い一部少数民族においては、党員も宗教に由来する民族風俗、礼儀については、大衆からかけはなれた存在とならぬよう臨機応変な態度をとることが許される。しかし思想上の要求を引き下げることはできない。

少数民族幹部は、方便として宗教を信じているふりをしてもいいが、本当に信仰してはならぬというなんともひどすぎる指針を示しています。

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*当記事は2011年12月21日付ブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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