中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月23日
【歌詞】
3年前、彼と彼女が出会ったのは師大路のキオスクだった。
1冊の『スラムダンク』に同時に手を伸ばして目があった。
それからは昼間は携帯メール、夜はパソコンのチャットで話し続けた。
半年後には八里村で彼らは一緒の生活を始めた。
彼女はタオバオで買った古本を彼に送った。作者の名前は村上春樹。
*タオバオは中国最大のB2Bネットショッピングモール。
彼は彼女に安い香水を贈った。でも彼女はこの香水には毒はないと知っていた。
*おそらく、「安物だが日本製だから毒がない」との意味。
*2011年8月7日追記:小茶さんよりコメントいただきました。「でも彼女はこの香水には毒はないと知っていた。」という歌詞が出るのは、「香水有毒」という曲が中国で一時流行ったからだと思います。
まだ卒業していない、学生の2人。生活は苦しかった。
でも青春の時期には愛情さえあれば、完璧な幸せが訪れる。
未来へのあこがれのなか、2人は勉強に励んだ。
彼が大学院に合格したその日、彼女はファーウェイの採用契約書を手にした。
*ファーウェイは中国通信機器製造最大手。
1人は深圳に、もう1人は成都に行く。
新たな世界の中、ばたばたと毎日が過ぎていく。
思いは距離に引き裂かれ、かつてのロマンは消えていく。
彼が勇気を振り絞って、別れを口にしたその日、
彼女も電話越しに、軽く「さよなら」と別れを告げた。
こんな物語は毎年起きている。この街では。
こんな物語は毎年エンディングを迎えている。そして風の中に消えていく。
まだ覚えている。あの時の2人の愛情がどれほど深かったかを。
彼は彼女の流川楓だった。彼女は彼の蒼井そらだった。
3年後、彼と彼女は再会した。同窓会でのことだった。
彼はまだ格好良かった。彼女もきれいだった。ただその目だけはどこか違っていた。
彼の脇にいるのは結婚したばかりの妻。
そしてスーツで革靴の男も彼女のそばに立っている。
握手した瞬間に感じたのはなじみ深い暖かさ。彼女は突然、泣き出しそうになった。
それでもどうにか笑顔をしぼりだした。涙は流さなかった。
すべての記憶、すべての物語が、頭のなかによみがえっていく。
人々のなか、2人はまるで子どものように無力だった。
こんな物語は毎年起きている。この街では。
こんな物語は毎年エンディングを迎えている。そして風の中に消えていく。
まだ覚えている。あの時の2人の愛情がどれほど深かったかを。
彼は彼女の流川楓だった。彼女は彼の蒼井そらだった。
彼は彼女の流川楓だった。彼女は彼の蒼井そらだった。
『神田川』
赤い手ぬぐい、横町の風呂屋、24色のクレパス、三畳一間の小さな下宿。
『流川楓と蒼井そら』
携帯メール、パソコンのチャット、タオバオで買った古本、村上春樹、流川楓、蒼井そら。