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5分で振り返る中国の2011年=鉄道事故、不動産バブル、デモとソーシャル

2011年12月31日

今年1年、「KINBRICKS NOW」を読んでいただきありがとうございました。今年最後の記事として、中国の2011年を振り返ります。


タイトルなし
タイトルなし / chinnian


ここで取り上げたネタ以外にも重要な話はたくさんあるのですが、とりあえずこの記事を読むと大づかみで「中国の2011年」が分かるようにと意図しました。重要な記事は文末にまとめてありますが、だいたいのネタは「KINBRICKS NOW」で扱っていますので、より詳しく知りたい方は右カラムの検索窓から記事を探してみてください。


■国内政治:「中国を支配する9人」の椅子取り合戦

2012年の第18回中国共産党大会で、胡錦濤から習近平へのバトンタッチが予定されています。習近平を含め、誰が「中国を支配する9人」(政治局常務委員)になるのかにチャイナウォッチャーの関心が集まっています。

そうした文脈で、温家宝VS「呉邦国、賈慶林、李長春、周永康ら新四人組」の対立、薄熙来VS汪洋の対決に注目が集まりました。もっとも中国の派閥というのは外部が勝手に名付けたもので、内実はより複雑でグループ分けが難しいのが実情。なかなか読み切れないというのが本当のところです。


■外交:中国外交は大失敗

2011年の中国外交は大失敗といっても、あながち言い過ぎではないでしょう。中国が自分でこけたというよりも、「アラブの春」によりリビアをはじめ仲の良い独裁国が倒れた、オバマの「アジアへの帰還戦略」によりアジアでのプレゼンスが揺らいだという国際情勢の影響が大きいのですが。来年の米大統領選を控え、米国からも中国許さまじとの勇ましい発言が聞こえてくる季節でもあります。とはいえ、大統領選が終わればあっさり仲良くなるような気もしますが。

対日関係では、東日本大震災で「四川大地震で日本は助けてくれた。今度はお返ししよう!」と同情ムードが一瞬高まったり、大地震が起きても略奪起きない日本の民度がすごいと評価が高まるものの、福島原発問題が報じられると「汚染物質垂れ流ししやがって。中国も核で汚染される……」とあっという間の掌がえしに。

また夏には満州開拓団記念碑に中国ネトウヨがペンキをぶっかける事件が起きたりとすっかり「いつもどおり」の状況に戻りました。野田首相就任後はフィリピンとの海上安全保障提携やミャンマーへの外相訪問など、「中国の嫌がることも積極的にやる」野田外交に不満を示す報道が目立ちました。


■経済:食料品と不動産の価格対策からはじまったきしみ

昨年末からのトレンドですが、今年上半期までインフレ対策が至上命題となりました。

中国=バブルと思われがちで、中国人民たちも「インフレじゃ、生活めたくただ!」とのたまわっていますが、中国国家統計局の統計を見ると、ほとんどは食料品と不動産が牽引していることがわかります。

食料品、とりわけ豚肉価格は、

・「値段高騰→増産→値下がり→減産→値段高騰」という情報不足から生じた需給の乱れ
・デンプンやバイオエタノールの生産など深加工需要増加に伴う飼料(=穀物価格)価格の上昇
・政府の農民補助政策により「補助金もらえるし、面倒な農作業なんかしたくないよ」というインセンティブ誘導の失敗

などなど複数の要因がからまりあったもの。

もう一方の不動産価格は「今後も値段は上がり続けるのだから売りしぶったほうが儲かる」という予期に伴うバブル的現象と言えそうです。今年は融資ルートをしぼられて、ついに「今後不動産価格は下がるかもしれない」と予期が逆転。消費者の買い控えが広がりました。価格が急激に下がれば、銀行の不良債権増加につながるのでこれも気になる問題です。

また2008年のリーマンショック後に中国政府は4兆元(約48兆円)景気対策を打ち出し、「世界で最も早く金融危機から立ち直った国」となることに成功しました。しかし、政府の大号令を好機と見た地方政府が全力で銀行から金を借りてはインフレ建設を進めるなど非効率な経済建設が拡大したとみられます。その象徴とも言えるのが温州高速鉄道衝突事故でしょう。

昨年あたりから著名エコノミストや経済紙がこの問題を取り上げていましたが、今年に入り実際の政策に取り入れられ、融資チャンネルがぐっとしぼられることに。結果、中小企業にしわ寄せがいき、温州の夜逃げ経営者続出などの問題につながっています。また欧州債務危機の拡大により、輸出型製造業も大きな打撃を受けています。

2008年の「失敗」にこりたのか、政府は金融緩和や財政制裁ではなく、減税や行政費用免除、大手国有企業に製品調達を強要などの中小零細企業支援策を打ち出していますが、その効果が本当の意味で明らかになるのは来年でしょう。


■文化:世界的メディアを育てるために

秋の中国共産党第17期中央委員会第6回全体会議(六中全会)では、文化体制改革がテーマとなりました。アラブの春があったこともあり「中国=検閲」という読みが支配的だったり、あるいは経済など重要なテーマを真正面から扱うことを避けたのではないかとの指摘もあるようですが、個人的には予定通りの動きであり、かつきわめて重要なテーマだったと考えています。

検閲以上に、官制メディアの統廃合、民間メディアの管理強化及び規制緩和、商業的に強いメディア企業の育成あたりがポイントでしょう。昨年からの新華社、CCTVの海外展開という動きを受け継いだものなのです。中小お役所から発行されていた機関紙の押し売り禁止、メディア・コングロマリットの結成促進と補助金の支給、民間メディアの雑誌コード・図書コード取得規制緩和という政策に結実しそうな感があります。


■社会:「ネットのデマ」で抗議運動を成功させよう!高コスト社会・中国

経済で述べたとおり、輸出型産業の不振、金融引き締めに伴う中小零細企業の不振に伴うストライキ、デモのニュースが目立ちます。加えて、いつもどおりの土地収用に伴うデモのニュースも減ってはいません。また、大連のパラキシレン工場移転要求デモに象徴される環境問題をきっかけとしたデモも増えてきました。

2010年の群衆事件(ストライキ、デモ、暴動などを総称する中国独自の用語)は18万件を数えました。今年はさらに増えるでしょう。だから「中国は革命間近だ」と言うつもりはありませんが、ストライキやデモなど「人を集めて騒ぐこと」こそが問題解決に一番近い方法だとの認知が広がってきたと感じています。

司法はあてにならない、政府に陳情しても無駄、だったら騒ぐしかないという発想です。その際に有力な手段なのがネットで、「妊婦が警官に殺された」「代表者が拷問を受けた」など、大半のケースでデマなのですが、ともかく人目を引き同情を集める情報が流されます。

「ネットで注目を集める作法」を知っているか知っていないかが、運動の成否を握る重要なスキルなのです。まあデマを流して目的を達成出来るのならそれでいいかもしれませんが、ともかく騒ぎにするというこの手法は、当局にとっても、あるいは気になる騒ぎを頑張って追いかけるネット民にとっても、はたまた日本から中国の社会問題をウォッチしている「KINBRICKS NOW」管理人にとっても(笑)、大変な労力とコストを強いる手法です。

基層自治体の選挙や共産党基層組織の選挙、あるいは有効性の高い司法などの代替手段を導入しないかぎり、ネットでの注目調達戦争というコストの高い抗議方法にみんな振りまわされてしまうというのが率直な感想です。「KINBRICKS NOW」管理人の健康のために、法治と民主の導入を中国共産党にお願いしたく思っています。


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 コメント一覧 (2)

    • 1. しちやん
    • 2011年12月31日 22:21
    • 来年もよろしくお願いします。
      個人的には1月14日の台湾総統選が2012年一番気になるところです。
    • 2. Chinanews
    • 2012年01月02日 20:42
    • >しちやんさん
      あけましておめでとうございます!

      台湾総統選、このまま行けば馬英九勝利なんでしょうが、以前の銃撃のようなどんでん返しがあるのか、気になっています。

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