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アニメが中国経済の柱になる時=国家資本主義の文化産業支援が加速

2012年01月05日

「日本を超える最強のアニメ大国になる。」「世界的なメディア企業を生み出す。」中国が文化産業の分野でも国家資本主義的性格をむき出しにしている。


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*「もののけ姫」にそっくりなシーンが盛りだくさんの中国アニメ『夢回金沙城』。

■マンガ・アニメに優遇税制、ってなに?!

漫画アニメ産業に優遇税制を適用
人民網日本語版、2012年1月4日

財政部と国家税務総局はこのほど通知を出し、漫画・アニメ産業の発展支援を目的とした増値税および営業税の優遇政策を打ち出すことを明確にした。(…)

漫画・アニメ企業が漫画・アニメ製品を開発するために提供する漫画・アニメ作品のシナリオ制作、キャラクターデザイン、背景デザイン、動画デザイン、絵コンテ、原画制作、レイアウト、描画、色塗り、画面合成、アフレコ、音素材編集、ダビング、編集、字幕制作、コード変換(インターネットや携帯電話での配信に対応する)などの労務、および漫画・アニメ企業が国内で作品の版権を譲渡したことによる収入(漫画・アニメのブランド、イメージ、コンテンツの譲渡および再譲渡を含む)については、税率を3%に引き下げて営業税を徴収することとする。

財政部と国家税務総局の通知に、キャラデザとかアフレコとかいう用語が載っているのがちょっと面白い。せっかくなので中国語も載せておこう。

动漫脚本编撰、形象设计、背景设计、动画设计、分镜、动画制作、摄制、描线、上色、画面合成、配音、配乐、音效合成、剪辑、字幕制作、压缩转码(面向网络动漫、手机动漫格式适配)劳务,以及动漫企业在境内转让动漫版权交易收入(包括动漫品牌、形象或内容的授权及再授权)

キャラデザは「形象設計」、アフレコは「配音」である。なんでマンガ・アニメ産業の税負担を軽減するのか、と不思議に思う方もいるかもしれない。実は政府による優遇策はこれだけではない。今、中国のマンガ・アニメ産業は国家、地方政府、関係省庁のバックアップを受けて育成されている重点産業分野なのだ。


■文化産業支援が加速

記事「世界一のアニメ大国・中国が抱える「国策振興」という病」で紹介したとおり、中国のアニメ産業支援は2004年に本格的にスタートした。制作分数に応じた補助金、アニメ開発基地の建設などの土地供給、銀行融資の優遇措置などの支援を次々と導入された。

そのかいあって制作分数は2004年の2万分から2010年には22万分と6年間で11倍に伸びた。もっとも補助金目当ての参入が相次いだとあって、質的な向上はまだまだのようだ。ちなみに主に日本アニメをターゲットとした外国産アニメ放映制限令が導入されたのも2000年代前半のこと。たんに自国企業をサポートするだけではなく、外国産アニメを追い出すという形でも支援されたとみるべきだろう。

アニメ・マンガ産業への国の支援は今後、さらに強化される見通しだ。昨年10月の中国共産党第17期中央委員会第6回全体会議(六中全会)が「文化体制改革」を決議されたほか、中国文化部の「第12期5カ年計画文化産業倍増計画」「国家アニメ・マンガ産業第12期5カ年計画」、さらには中国文化部と科学技術部合同の「「文化部・科学技術部第12期5カ年計画発展計画」と支援大綱が目白押し。

文化産業を2016年時点でGDPの5%に増やすという意欲的な目標が掲げられている(2010年は2.75%)。中国経済全体の伸び率を上回らないと比率は上昇しないので、これはなかなか大変だ。というわけで、マンガ・アニメを含む文化産業全般に対する支援が活発化している。


■巨大企業の誕生

中国の産業保護政策で定番なのが全国レベルの巨大企業を育成して、世界と渡り合える力を蓄えさせるというもの。文化産業も例外ではなさそうだ。

2011年12月28日、中国出版メディア株式有限公司が北京市で成立した。中国出版集団公司を中心に中国国聯合ネットワーク通信集団有限公司、中国文化産業投資基金、学習出版社を統合したもので、近い将来、A株市場への上場を目指すという。

人民文学出版社、商務印書館、中華書局、中国大百科全書出版社、中国美術出版総社、人民音楽出版社、三聯書店など中国関籍を購入している人にはおなじみの出版社が一企業にまとまるというのだから、ちょっとした衝撃である。(財経網


■中国企業が日本アニメ企業を買う日

大型企業を作り上げ、しかも上場で巨額の資本を調達するとなると、気になるのはお金の使い道。大型の海外企業買収はあるのだろうか。2010年には南方報業集団による米誌ニューズウィーク買収話が持ち上がったが失敗に終わった(レコードチャイナ)。

報道関連は外国側に警戒されハードルが高そうだが、映画やアニメならばそこまで拒絶感はないのではないか。ブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」管理人の百元籠羊さんは昨秋開催されたシンポジウムで中国アニメ企業の人材不足を指摘していた。タイミングの取り方など制作テクニックを持つ人材が不足しているために、日本アニメを丸パクリしてごまかすということもあったのだとか

日本側にはお金がないし中国側には技術がないとなれば、絶好の組み合わせのようにも思える。中国の検閲基準をクリアしたり、中国の偉い人の注文やらを聞かなければいけないという別のハードルも生まれるだろうが、技術と才能ある日本のクリエイターが、中国政府のお金を使って作品作りをする日が来るかも知れない。

・関連記事
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・主な参照リンク
2012:文化产业有望成“当家花旦” 」中国聯合商報、2012年1月5日
未来5—10年: 文化创意企业上市最好时机」南方報業網、2012年1月4日


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 コメント一覧 (3)

    • 1. うがやーん
    • 2012年01月07日 10:35
    • 創作の立場からしてみると、なにかしらハードルがあった方が燃えますよね。
    • 2. Chinanews
    • 2012年01月08日 23:44
    • >うがやさん
      そのために石原都知事は(以下略
    • 3. むり
    • 2012年10月14日 12:33
    • 無理

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