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中国独自制作の小説版「デスノート」?!ラノベミステリー『推理筆記3:死神筆記重現』(阿井)

2012年01月28日

■中国ラノベミステリ 推理筆記3 死神筆記重現■

*本記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の2012年1月28日付記事を許可を得て転載したものです。


20120128_写真_中国_小説_デスノート


■中国で独自に出版されていた小説版デスノート

一時期、タイトルに「推理」や「偵探」(探偵)という言葉が入っている中国小説を買い漁っていた時期がある。その時に書店の少年少女向けコーナーで見つけたのが本書だ。タイトルは『推理筆記』(何故かMystery NoteじゃなくInference Noteという英訳がついている)。本書がシリーズ3作目だという。問題は副題だ。『死神筆記重現』(デスノート再び)とある。

『DEATH NOTE』の中国語の正式な訳名は『死亡筆記』だが、『死神筆記』でも通じることは通じるらしい。ではこの小説はあの日本の有名漫画『DEATH NOTE』と何か関係があるのだろうか。

前作を読んでいないので一連のストーリーはわからないが、米卡卡という男子高校生と夏早安という女子高生がこのシリーズの主役のようだ。2人のうち探偵役は夏早安だ。とは言うものの彼女自身には何の能力もなく、うざくて馬鹿な女子高生に過ぎない。しかし彼女の体には『愛廸生』(エジソン)という名探偵の人格というか魂が宿っており、難事件に遭遇する度に『彼』が現れて犯人を追い詰めるのである。

『推理筆記3死神筆記重現』は全身黒尽くめでリンゴが好物の自称死神リュークが一般人にデスノートを渡して第二、第三のキラを作り、中国社会を混乱に陥れるというストーリー。パロディと言うにも程がある内容だ。自称死神リュークによって、キラの相手である探偵Lの役割を任された夏早安は警察の協力を得て、米kakaと共に殺人事件を防ごうと奔走する。


■実は普通の(?)ミステリー小説だった

オリジナルの『DEATHNOTE』はキラが事件の主導権を握っていたが、本作は自称死神リュークが犯罪をプロデュースしている。平凡な人間にキラになるように迫り、ライバル役のLすら自分で勝手に指名してしまう。自称死神リュークはオリジナルのリュークよりも積極的に事件に介入する。それはまるで小説の作者のような振る舞いである。

本書は一応ミステリ小説なので、それらしい体裁を取るようにしている。デスノートなどというとんでもない飛び道具を使った犯行はこの小説の重点ではない。デスノートを使ったとミスリードさせて実はトリックを駆使した普通の犯罪を探偵たちに解かせるのが肝なのだ。
 
更に本書のデスノートはオリジナルのDEATHNOTEよりもルールが厳しい。例えば人を1人しか殺せない一次性(インスタント)デスノートもあり、読者に非現実的なデスノートの存在を疑わせる設定が加味されている。

ちなみにこの世界では『DEATHNOTE』の知名度は日本を凌駕しているようで、L役に選ばれた夏早安にインタビューしようと彼女が通う高校に連日マスコミが詰めかけるほどだ。


■次回作では自称夜神月が復活

知音・漫客』という中国の有名漫画雑誌の姉妹誌、『漫客・小説絵』に連載されていただけあって、小説の内容はミステリ要素を含めて全体的に幼い。さすがに本物の夜神月やLを出すことはなかったが、既存の有名漫画の設定やキャラクター名まで堂々と転用した本作には非常に大掛かりなSS程度の評価しか与えられない。
 
しかし、このシリーズは今年に4作目が出版されるという。一定の人気があるようだ。最新作のタイトルはなんと『夜神月帰来』(夜神月の帰還)だ。実は推理筆記3では前作の1か2に登場したであろう他称夜神月が刑務所に収監されている。4でこの他称夜神月が探偵役として活躍するのか、キラとして主人公夏早安たちの敵になるのか気になるところだ。


■ 中国のデスノート禁止令

中国で『DEATH NOTE』が流行った際、死亡筆記と名の付いた模倣小説やノートまでが雨後の竹の子のように現れ、それら海賊版が取締の対象になる事態にまで発展した。
(関連リンク:J-CASTニュース、2007年5月30日。東方書店・中国図書情報、2007年6月。)

本書も『DEATH NOTE』の類似品と当局から見做されて発禁処分にならなければいいが、そうさせないために本家の死亡筆記の名前を少し変えて死神筆記という副題にしているのだろうか。
 
ブームから数年が経過しているし(推理筆記の1作目は2010年に出版されている)、当局は以前ほど『DEATH NOTE』を問題視してはいないだろう。もし目を付けられたとしても、これは『死亡筆記』じゃなく『推理筆記』で物語に登場するのは死神筆記だ、と釈明すればなんとかなるのかもしれない。

シリーズを通して『DEATHNOTE』の引用が目立つこの推理筆記。作中に本家の『死亡筆記』の名前を出しているのに、ストーリーに出てくるデスノートの名前をわざわざ死神筆記と変えているのは当局への配慮かもしれない。

以上はたんなる憶測でしかないが、はっきりと断言できることが一つだけある。この小説、そもそも小説としての配慮を決定的に欠いているってことだ。

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*本記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の2012年1月28日付記事を許可を得て転載したものです。 

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