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昨年末だけで6兆円を融資=抜け道テク「同業代付」を金融当局が規制か―中国

2012年02月02日

2012年2月1日、銀行監督管理委員会は、各銀行に対して「同業代付」の現状について報告するよう通達した。金融規制の「抜け道」として使われていた「同業代付」が実質的に禁止される可能性が高いという。2日、21世紀経済報道が伝えた。


Bank of China
Bank of China / Marc oh!

■「同業代付」とは


金融ネタということで、用語など適切に訳せているか不安があるが、間違いに気がついた方はぜひ教えていただきたい。「同業代付」とは、2009年から始まった新しい仕組み。それだけに政府監督部局の監視対象ではなかった。具体的な内容がちょっとややこしいのだが、以下の通り。

A銀行はBさんにお金を貸したい。だが融資限度額の絡みで貸せない状況になっている。そこでC銀行と契約を交わし、C銀行からBさんに融資してもらうというもの。BさんはA銀行にお金を返し、A銀行は元本と手数料をC銀行に支払う。

<普通の融資>A銀行 → Bさん
<同業代付>A銀行 → C銀行 → Bさん

こんなことをやってどんなメリットになるのかが気になるところだが、通常の融資ではないという建て前で融資限度額としてはカウントされなかったという。当局の規制でもう貸せないという銀行がそれでも貸すための「抜け道」として重宝されていたという。


■2011年末の流動性を支えた「同業代付」

金融引き締めが強化された2011年、「同業代付」の利用は大幅に増加した。高華証券の報告書によると、第4四半期だけで4000億~5000億元(約4兆8000億円~6兆円)が融資された。残高は合計1兆元(約12兆円)、銀行融資全体の2%に達している。2011年第4四半期の流動性及びM2伸び率改善は「同業代付」に支えられていたと高華証券は指摘している。

資金繰りに困っている借り手、お金を運用したい銀行にとってはありがたい「同業代付」だが、マクロ経済をコントロールしたい金融当局にとっては許し難い「抜け道」だ。今回、現状把握を求める通達がでたが、今後、「同業代付」規制が登場する可能性が高いという。そも融資限度額回避が目的なだけに、「同業代付」も融資として計上せよ、と申し渡されてしまえば、実質禁止と同じ状態になりそうだ。

それだけではない。いままでは融資限度額の制限になかった1兆元の「同業代付」残高が、制限に加えられるとすれば、銀行の融資額は大きく圧縮され、金融当局主導の「貸し渋り」が発生することは必須。流動性不足がさらに悪化する懸念もある。


■「抜け道」を探し続ける金融機関

似たような「抜け道」としては、2010年に規制がかかった「銀信合作」がある。企業向け融資を信託会社が商品化、それを銀行が代理で販売するという手口だ。これも金融当局のコントロール外にある融資スキームだったため、銀行の融資残高規制に組み込むよう指導された。

さらに最近では「票据類信托」(手形類信託)を停止するよう金融当局が指導した(経済日報)。これは銀行が信託会社を通じて手形類信託商品を販売、資金を獲得するという手法だ。やはり金融当局のチェックの外で資金を獲得する動きだけに制止されたという。

「抜け道」と規制のいたちごっこが続いているわけだが、たんに中国の銀行がアグレッシブすぎるという問題ではない。銀行利率が低く投資先を探す一般投資家のマネーが渦巻いていること。コネがあればいくらでもおいしい商売ができるから後は金を借りるだけという貪欲な資金需要。この状況が変わらないかぎり、いたちごっこは終わらないのではないか。

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 コメント一覧 (6)

    • 1. 天天
    • 2012年02月03日 06:06
    • Chinanewsさん

      珍しくChinanews先生と意見が分かれることになりました。
      今回のキーワードは経済時評の「影子银行」という用語だと思います。
      (あと「経済日報」->「経済時評」でしょうか。)

      「影子银行」はほぼ確実に"Shadow Banking System"の中国語訳のはず。
      そして"Shadow Banking System"こそが、米国のサブプライムローンを世界経済に影響を与える規模まで拡大させた原因です。

      米国のサブプライムローンの仕組みは、基本的には、住宅ローン会社が住宅の購入者に対してお金を貸し、メリルリンチやリーマンブラザーズといった証券会社(投資銀行)がその住宅ローン債権を購入し、それをデリバティブの仕組みを使ってパッケージし直して、それを世界中に売りまくりました。

      そして银监や当局がやろうとしていることは、銀行(預金)をできるだけ博打から遠ざけるために、銀行預金が投機的な資金に流れないようにすること。
      米国の場合、金融機関に対する規制は金融機関のロビー活動と法制後の様々な修正によって常に抜け穴だらけになるのですが、中国の場合は証券業と銀行業の間に超えてはいけない明確な一線を設けることで、預金者のお金を保護しようとしていると考えます。
    • 2. 天天
    • 2012年02月03日 06:09
    • どこの国でも銀行は、信用創造という特権、つまり持っている以上のお金を貸し出せるという特権が与えられています。
      例えば、100万円しか預金がなくても1000万円を貸し出せます。
      しかし、銀行が融資や金融商品の購入で100万円の損失を出してしまえば、預かったお金は全て吹き飛んでしまいます。

      米国のサブプライム問題では、銀行が投資銀行のCPやABSを購入することで、預金どころか金融機関そのもの、そして金融システム全体が不安定化することになりました。

      中国当局はそういうことを理解して、銀行(預金)と証券(博打)の間にしっかりしたfirewallを構築しようとしているのだと思います。
      米国では金融機関の力が強すぎて、必要だけれど絶対に不可能なこと(少なくともサブプライム問題の発覚までは)を中国がやろうとしているのですから、中国関係者としては実は誇ってもいいことだと思いますよ。
    • 3. 天天
    • 2012年02月03日 07:35
    • Chinanewsさん

      一つ補足しておくと、「博打」が悪いと言っているわけではありません。
      中国でも株式投資は盛んですし、世界最大のカジノ都市になったマカオの活況はChinanewsさんもよくご存知のことと思います。
      そして手持ちのカネを賭けている限り、規制の範囲外だと思います。

      ただし、
      ・博打の負けが金融システムに影響を与えることは許さない
      ・そして「低リスク、高リターン」といった都合のよい金融商品などあるわけがなく、銀行で売ってもよい金融商品は退屈なほど構造が簡単でリスクが少ない商品に限定する
      といった当局の姿勢があるのだと思います。
    • 4. Chinanews
    • 2012年02月04日 11:55
    • >天天さん

      なるほど、確かに当局の規制の「抜け道」をついて、資金を調達・運用させたいという銀行の動きは、中国に限らない問題ですね。記事は中国の銀行の特殊性を強調しすぎたかもしれないですね。

      中国の「旺盛すぎる資金需要」という点に興味を持っているのですが、銀行が「抜け道」を使うかという問題ではなくて、集められた金がどう運用されていたのかで考えるべきなんでしょうか。

      勉強になりました。ありがとうございます。
    • 5. 天天
    • 2012年02月04日 19:57
    • Chinanewsさん

      今回の件に関しては、「集められた金がどう運用されていたのか」というよりも、当局が真面目に「金融システムの安定」を目指しているかどうかの観点で見たほうがよいのではないかと思います。

      そして「運用」というよりも「融資」の観点で、
      ・融資先の選別は適切に行われているか
      ・融資額の設定は適切か
      という点でチェックされていると思います。

      例えば、
      ・適切な担保が取られているか
      ・その担保額は適切か
      ・情実を通じて融資が行われていないか(有力者の個人的な財布になっていないか)
      ・審査が面倒だということで新規の融資を断っていないか
      という点でチェックされていると思います。

      ところで「旺盛すぎる資金需要」は本当にあるのでしょうか?
      米国の「旺盛すぎる資金需要」はヘッジファンドに流れ込んだり、サブプライムローンに流れ込んだりして、結局レバレッジを使った利益拡大のために使われました。

      銀行から融資が受けられない中小企業の場合は、資金需要はあると思いますが、今回の「影子银行」的な仕組みの場合、銀行との関連が深い特定の企業相手への「抜け穴」融資のような気がします。
    • 6. Chinanews
    • 2012年02月07日 18:41
    • >天天さん
      そうですね。当局は金融システムのリスク回避のために、銀行の動きを把握できるようにしたいという意図だと思います。

      「旺盛すぎる資金需要」ですが、地方政府関連企業のインフラ投資、シェア拡大を目指して事業拡大を急ぐ企業、不動産資産の買収など、お金を欲しがっているところは多いようです。

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