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「以房養老」は高齢化対策の切り札となるのか?中国に迫る「老い」

2012年02月06日

2012年1月31日、吉林省政府は「養老サービス業の発展推進加速に関する意見」を発表。「以房養老」(リバース・モーゲージ)を試行する方針を表明し、注目されている。


Dancing in Park
Dancing in Park / faungg

■リバース・モーゲージとは


リバースモーゲッジ(ウィキペディア日本語版)
リバースモーゲッジ(Reverse mortgage)とは、自宅を担保にした年金制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段。

リバース・モーゲージには多くの形式があるが、乱暴に概括すれば住宅ローンの逆となろう。金を借りて住宅を買い少しずつ返済していくの反対。高齢者が少しずつ金を借り、死後に住宅を引き渡して借りた金を精算という形式だ。担保にした住宅に住み続けながら金を受け取れるという年金的な運用が可能となる。

急ピッチで高齢化が進む中国でもリバース・モーゲージは注目され、これまでも議論されてきた。金城学院大学の王文亮教授がサーチナで中国における議論を紹介している。

関連リンク:
中国 リバース・モーゲージは新たな老後保障になるか(1)


■魅力的な選択肢と反対意見

一人っ子政策の影響、伝統的な家族観念の変化もあり、子どもに老後の面倒を見てもらえない高齢者は今後、中国で増加していくと見られる。その意味では財産を有効に活用して老後の生活をまかなえるリバース・モーゲージは魅力的な選択肢と見られる。

一方で反対意見も少なくない。リバース・モーゲージは欧米では相当活用されているというが、中国での導入にあたっては問題点も少なくないためだ。

・高齢者が長生きすれば融資先が損失を出す可能性がある(平均寿命が延びている中国ではとりわけ重要な問題)
 
・担保不動産価格の下落リスク(昨年来、中国の不動産価格は先行きが不透明になっている)

・不動産の価値が将来的にどれだけあるか(一軒家が少なくマンション中心で施工品質の問題からも将来価値は不透明、しかも所有権ではなく70年の使用権しか住民に与えられないという中国の事情)

また金融商品による「高齢者年金」に対する反発もあるようだ。まずは公的社会保険を徹底して欲しいと考える人も少なくない。


■子どもが老後の面倒を見られない時代に

中国国家統計局は先日、労働人口が2011年、初めて前年比で減少したことを発表した。高齢化に向けて中国は大きな転換点を迎えつつある。

子どもが老後の面倒を見てくれる人はそれでいいのだが、それだけではうまくいかないケースが増えることは間違いない。中国においてもすでに独居老人は関心を集める社会問題となっている。子どもと関係がよくても、故郷から離れた場所で働いていたり、あるいは結婚相手が別の地域出身で両方の親の面倒を見ることは不可能といった状況も少なくない。

中国メディアの報道ではリバース・モーゲージ試行に話題が集中しているが、吉林省の「養老サービス業の発展推進加速に関する意見」を見ると、老人ホームの建設推進、コミュニティでの老人受け入れなど多面的な対策を打ち出している。高齢化問題を解決する万能薬はなく、各人の状況にあわせてケースバイケースの対応が必要になるということだろう。

2020年、中国の60歳以上人口は18%、2億4300万人に達していると中国国務院は推定している。中国にとって高齢化問題はもはや目と鼻の先の問題なのだ。それまでにどれだけの準備を整えることができるのだろうか。

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