• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

高齢化する世界の中で生き残るために=台湾・統一企業から学ぶ「変化と革新」(鈴木)

2012年02月29日

■台湾「統一企業」から思うこと■

*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年1月23日付記事を許可を得て転載したものです。


Taiwan 7-Eleven
Taiwan 7-Eleven / Augapfel

■台湾・統一企業の「変化と革新」


先週はコダックの倒産が報道された。130年の歴史があるが、デジカメの波にうまく対応できなかったのは主因。昔のイノベーターがこういう結果になるのは、企業の寿命を伸ばす難しさ、そして、変化と革新の大切さを語っている。

そこで思い出したのは台湾の大手食品流通グループである「統一企業」。1967年に創業された当社は今は台湾のトップクラスの企業グループで、製造業以外に、7-Eleven、スターバックス、カルフール、無印良品など、海外流通大手の台湾での経営権や、統一夢時代ショッピングセンター、ドラッグストアチェーンの康是美、博客來オンライン書店、統一速達(ヤマト運輸との合弁)、など多数の独自な流通ブランドも持っている。

創設者で現董事長の高清願氏は、45年の歴史の中で、一代にして、どうやってここまで成長させたのか、キーワードは「変化」であろう。創業当初は小麦粉の製粉会社だったが、台湾市場が小さいため、ある程度までいくと、規模拡大のためには、多角化の方向に行かざるをえない。そこで副産物のふすまを原料に飼料を作り始めた。大豆が必要なので、食用油事業も生まれた。台湾経済や生活水準の上昇に連れて、即席麺やパンなども始めた。


■ものづくりから流通業へ

この範囲内での成長ならまだ普通だが、78年に7-Elevenの経営権を取得し、流通の世界に足を踏み入れた。理由は視察時にテトラバックの役員の話で、将来は流通業に主導権を握られ、単なるものづくりでは立場が弱くなるという危機感を覚えたからだそうだ。今の世界を見ると、非常に先見性の富んだ決断とは言わざるをえないだろう。

今の7-Elevenは台湾に4800店舗もあり、小売業のトップ売上高を持つぐらいだ。台北で道案内される時に、よく7-Elevenを目印に使われるが、数が多すぎるため、個人的にはあまり参考にならない(逆に紛らわしい)ぐらいだ。

「統一企業」のもう一つ大きい決断は中国大陸市場への進出だ。タイミングは92年、あの天安門事件からわずか3年後で、中国はまだ諸国から経済制裁を受けていた頃だ。普通に理性的に戦略を立てるなら、政治リスクが高くて、様子見という判断になりかねないが、中国の成長を信じて投資した。ちょうど私が大学に入った頃で、統一即席麺の美味しさが今でも覚えている。


■世界が高齢化する未来を想像する

もちろんその後も時代の流れにうまくのって、いろいろ投資して現在の地位を築いたが、長期的な視点を持って、直感に従って、常に変化し続ける姿勢は変わっていない。それが30年後にも50年後にもつづくかどうかはわからないが、私達への示唆は「変化と革新」に他ならない。

今の世界は人間が経験したことのない時代に入っている。欧州債務危機の背後に隠れているのは、先進国の普遍的な高齢化である。日本の生産年齢のピークに達したのはバブル崩壊の1990年だが、南欧諸国や米国は2000~2005年、中国は2015年がこれにあたる。富を作る人の絶対数が減り、ケアしなければいけない絶対数が増えるのは、いわゆる景気や経済成長の根幹を極めているのだ。極端に誇張されたな例でいくと、みんな子供をほとんどつくらず、50年後は働いているのは全人類の10%の人だとしたら、どんな世界になるのか想像しやすいだろう。

ほうっておくと縮小していく経済の中で企業が長期的に生き残るためには、何を提供すべきなのか、何が本当の「富」といえる価値なのか、を真剣に考えなければ、一時的に栄えても続きはしない。そのためには、少なくとも10年後20年後にどんな世界になっていくのか、ある程度具体的な想像をもっているのは重要なのではないだろうか。高齢者にどのような消費するのかだけではなく、社会全体として、何が足りなくなってくるのか、何がないと崩れるのか、など。足元からキャッシュを生み出すのも忘れてはいけないけれども。

関連記事:
「以房養老」は高齢化対策の切り札となるのか?中国に迫る「老い」
都市部よりも農村で深刻に=急激に進展する高齢化―中国
高齢者所在不明事件が示すもの=家族の絆を失いつつある日本―中国メディア

*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年1月23日付記事を許可を得て転載したものです。



コメント欄を開く

ページのトップへ