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ネット世論誘導員1万人を投入へ=広東省の「4つの1万」プロジェクト―中国

2012年02月29日

2012年2月20日、朱明国・広東省委副書記は「4つの1万」プロジェクトを発表。政府のネット世論誘導員1万人を組織する方針を明らかにした。21日、人民網が伝えた。


Shanghai internet cafe
Shanghai internet cafe / Ms Jackson

■1万人のネット世論誘導員


20日、広東省総工会(総労働組合)第12期第5回全体委員会が開催された。席上、朱副書記は「4つの1万」プロジェクトの実施を堅持しなければならないと訴えている。

「4つの1万」プロジェクトとは、

・1万人の工会(労働組合) 幹部を基層企業に派遣し指導させる。
・1万人の集団給与交渉指導員を組織し、企業との給与交渉を展開する。
・1万人の労資矛盾調解員を組織し、労資紛争に関する法律援助を提供する。
・1万人のネット世論誘導員を組織し、労働組合の活動を宣伝、世論の分析・誘導、従業員の教育・サービスに従事させる。

というもの。

一目見て分かるとおり、他と比べてネット世論誘導員だけが異彩を放っている。中国では政府に都合のいいようにネット世論を誘導する「五毛党」(政府に都合のいいようにネット世論を誘導するサクラ。書き込み1件あたり報酬が5毛=約0.6円という安さだという蔑称)が多数存在する。「4つの1万」プロジェクトは、広東省政府による「五毛党」公認宣言だと話題になっている。


■紛争調停のための雇用

まあ、「五毛党」の実在についてはこれまでにも何度も有力な証拠があげられてきたので、今さら驚く話ではないのだが、工会関連だけで1万人という数には驚かされる。もちろんネットでの相談担当などを含めた数なのだろうが、「4つの1万人」プロジェクトを素直にとらえると、広東省の工会関連だけで新たに4万人の雇用が確保されるという話になってしまう。

広東省は改革開放以後、最も先に発展した地域であり、経済成長や格差がもたらす矛盾をもっとも先鋭的に反映している地域である。官制労働組合である工会ではなく労働者と企業の直接交渉を認めたり、民間NGOの導入に積極的だったりと開明的な一面を持ち合わせる一方で、従来の工会活動の強化も進めるということのようだ。広東省政府=開明的、と手放しに喜ぶのは厳禁ということだろう。

広東省には日本企業の子会社、下請け工場も多いわけだが、「4つの1万人」プロジェクトで、「工会幹部です!」「集団給与交渉指導員です!」「労資矛盾調解員です!」とか名乗る人が押し寄せてくるかと思うと、企業的には気が滅入る話となりそうだ。

近年、中国政府は格差是正を旗頭に掲げているが、その主要手段は最低賃金引き上げに象徴的な労働者給与の引き上げである。現時点ですでに頭を痛めている人も多そうだが、さらに政府の使命を受けた人々が会社や工場に乗り込んでくることになる展開になりそうだ。

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