• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

カム地方からアムド地方へ=チベット人抗議デモの中心地が移動(tonbani)

2012年03月23日

■アムドで連続する抗議デモ■

*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年3月22日付記事を、許可を得て転載したものです。


Tibet Mount Everest
Tibet Mount Everest / Goran (Kartlasarn)

■カム地方からアムド地方に移ったチベット人抗議デモの震源


チベットで起きている中国政府に対する抗議デモだが、その中心はカム地方からアムド地方に移りつつあるようだ。カム地方のほぼすべての主要都市でデモが起きたため、多くの逮捕者が出たほか、戒厳令がしかれている状態にある。そのため新たな大規模デモが起きにくくなっているのではないか。
(チベットはウ・ツァン、カム、アムドという3地区に分類される。そのうち、カムの一部及びアムドはチベット自治区外の四川省、青海省、甘粛省、雲南省に位置づけられている。参照リンク:「チベットの概要」ダライ・ラマ法王日本代表部事務所)

アムドのデモは大規模なものが多いが、共通するパターンがある。

まず僧侶たちがチベット国旗や法王の写真を掲げデモを始める。スローガンを叫びながら庁舎に向かい行進する。途中でラマや俗人の長老が説得し僧侶たちは僧院に戻るが、その後、当局が軍や武装警官を僧院に送り込み、デモに参加した僧侶たちを拘束。それを知った一般のチベット人が僧侶の開放を求め大規模なデモを行う、というものだ。さらに中学・高校の生徒が同調し、「チベット語の擁護を!」というスローガンが叫んでデモを行うことも特徴の一つだ。

要求が受け入れられ、拘束された僧侶が解放されることもある。されない場合はデモが続き、最悪の場合になると、先日伝えたバゾンのように当局が爆発物を投げ込むなどの暴力的な鎮圧を敢行。死傷者が出る惨事にいたることもある。また要求が受け入れられた場合にも、解放された僧侶たちが後に逮捕されるというケースもある。

焼身も抗議デモも、僧侶たちが火付け役のように見えるかも知れない。だが本当の火付け役は別にある。、中国がチベットを侵略したこと。何十年にもわたる、宗教を中心とした民族への弾圧。1994年から始まったダライ・ラマ法王非難を強要する愛国再教育。さらに遊牧民強制移住、漢語強要などのチベット人抑圧政策こそが火付け役であることは言うまでもない。


■ソク・ゾンで大規模抗議デモ

18日早朝、アムド地方マロのソク・ゾン(青海省黄南チベット族自治州河南モンゴル族自治県)、ソクウォ(河南)の中心街で、ツァン僧院の僧侶15人とアリ村の俗人2人がまず「ダライ・ラマ法王をお迎えしよう!チベットには自由が必要だ!」とスローガンを叫びながら平和的行進を始めた。これを見た周りのチベット人もこの行進に参加し始め、参加者の数はふくれあがった。

行進が始まってから1時間ほどが過ぎた時、武装警官隊が駆けつけてきた。デモを先導していた17人を拘束。集まった人々は警察署に詰めかけ、彼らを解放するよう要求した。その数は2000人ほどに達したという。デモ隊の怒りと興奮は募り、警察署の門を壊す騒ぎとなった。

警察署の前に集まった人々は立ち去ることなく、声を上げ続けた。午後5時頃、ついに拘束された僧侶たちが解放された。もっとも尋問を受け、名前などの情報は記録されている。今後逮捕される可能性は否定できないだろう。

その後、ツァン僧院からトラック2台に分乗した80人の僧侶が到着。再びデモを行おうとしたが、軍や武装警察に阻まれて未然に終わった。また生徒のデモ参加を恐れ、市内の学校は午後8時半まで下校を許さなかったという。事件後、多数の軍のトラックがソク・ゾンに向かったと伝えられている。19日付TibetTimesチベット語版を参照した。


■サンチュで僧侶100人が抗議デモ

20日、アムド地方ケンロのサンチュ(甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)で、ボラ僧院の僧侶たちが抗議デモを行った。

正午頃、100人以上の僧侶がチベット国旗を手に、また法王の写真を掲げ、「チベットに人権と宗教の自由を!言語平等、民族平等!ダライ・ラマ法王の帰還を!」などのスローガンを叫びながら、僧院から郷庁舎に向かって行進した。

武装警官隊がただちに出動。これを知った地域の長老たちが僧侶たちを説得し、僧侶たちは引き返した。だが、武装警官隊は僧院を包囲し、僧侶を拘束した。夕方までに50人が連行されたという。翌日朝には解放されたが、新たに10数人が拘束され訊問を受けた。22日付TibetTimesチベット語版を参照した。


■ルチュで焼身抗議未遂の障害者が拘束される

21日、アムド地方ケンロのルチュ(甘粛省甘南チベット族自治州碌曲県)で、焼身抗議未遂のチベット人が拘束された。

焼身抗議を試みたのはツェコというチベット人で、身体障害者だったと伝えられる。アラ郷の市街地で灯油をかぶり飲んだ後、火を着けようとしたが、その前に警官隊に拘束された。

現地当局は先日、「焼身抗議者の情報を事前に通報した者には5000元(約6万5000円)の報奨金を与える」と通達している。地元チベット人はツェコも通報によって拘束されたのではないかと噂している。21日付RFA英語版を参照した。

参照リンク:
17日付RFA英語版、17日付phayul、17日付TibetTimesチベット語版、17日付TibetExpressチベット語版

関連記事:
「中国政府は弾圧ではなく対話で問題の解決を」チベット亡命政府外相の記者会見(tonbani)
発砲事件の波紋、抗議活動相次ぐ=2008年以来最悪の状況となったチベット情勢(tonbani)
チベット人の抗議デモと発砲事件=セルタ、タンゴ、ンガバの現状(tonbani)

*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年3月22日付記事を、許可を得て転載したものです。

トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ