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文明マフィアになろう!実業家からマフィアに業務転換した農村青年―中国

2012年04月24日

2012年4月23日、法制晩報は、農民から実業家、そしてマフィアのボスに成り上がった男・李永強について取り上げた。もともとのきまじめな性格からか、「出入りの際にはユニフォーム着用」「携帯がなったらすぐに出ろ」など厳しい社則(?)を定めていたという。


4月19日、江蘇省徐州市銅山区人民法院は、李永強人に、黒社会的組織指導罪、集団決闘罪、挑発暴力罪、違法拘禁罪、取引脅迫罪、故意の財物破損罪、放火罪、薬物吸引強要罪で懲役19年、罰金2万元(約26万円)、政治権利剥奪1年の刑を言い渡した。他16人に最大11年の懲役を命じている。


■農村青年から実業家、そしてマフィアへ

李は1981年生まれ。農村の裕福な家庭で生まれ育った。「同級生は自転車通学でしたが、私はバイク通学でした」と当時を振り返っている。1998年に父親を亡くし、その後は母親が農業で家計を支えていた。その時に「必ずや金持ちになってやる」と誓ったという。

2005年、李は農民優遇政策を利用して、 農村信用組合から数十万元の融資を得た。貯金と合わせて一気に8台の自動車を購入。レンタカー事業を展開した。ビジネスは成功し、あっという間に借金を返したどころか、年20万元(約260万円)の収入を上げるようになった。

翌2006年のこと。李は仕事のさなか、「棍子」(社会の不良分子、チンピラ)に仕事を邪魔されることもたびたびだったが、「金も持っているし、メンツも立てられる。他人に虐げられることもない」と彼らに憧れを抱くようになっていった。。

「棍子」が高利貸で儲けていることを知った李は、自分も高利貸業に参入することを決めた。ところがやってみると債務回収は楽な仕事ではない。こうして李は「棍子」たちと接触し、彼らを組織していった。当初は金で雇っていたが、後には無業の農村青年たちと義兄弟の契りを交わして仲間とするようになった。懲役刑を受けた16人のうち、5人は李の義兄弟だった。


■マフィア経営に成功

かくして李はマフィア(黒社会)のボスとなり、高利貸へと業務転換に成功した。無認可の融資企業から種銭を借りて、資金繰りに困っている企業へと貸し付けるという手法だった。2007年にある建築会社に100万元(約1300万円)を融資したが、2010年末までの3年間に利息だけで200万元(約2600万円)を回収していたという。

近年、中国では銀行よりも高い利子を約束して資金を集める無認可融資企業、民間金融が横行しているが、彼らが直接融資するのではなくて、暴力を持ったマフィアを通じて貸しだしているところがちょっと面白い。知人、親戚から金を集める仕事、その金を集約する仕事、小規模民間金融の金を集める仕事、融資と回収を担当するマフィアと民間金融・高利貸の産業チェーンが整備されていることがうかがえる。

高利貸業に成功した李は、若き日の誓いどおり金持ちになった。住宅3戸、商業オフィス8件、自動車4台を保有し、総資産額は1000万元(約1億3000万円)近かったという。持っている不動産資産の割に資産額が少ないのは農村ゆえの悲しさといったところか。


■文明黒社会になろう

レンタカー会社を運営する実業家として出発したためか、李はマフィア業を運営するにあたってもきまじめさを発揮していた。徐州市最大のマフィアとなった李は周辺の農村を区画ごとに分け、担当者を決めていたという。

また「ボスの認可を得ずして業務を行ってはならない」「たとえボスの言葉が間違っていても逆らうな」「携帯電話は常につながるようにしておけ。電話にはすぐに出ろ。呼ばれたらすぐに出頭せよ」「債務回収や出入りの際には服装を統一し、白い手袋を身につけること。全員一緒に出発すること」などの決まりを作った。ユニフォームにこだわるあまり、全員が同じ武器を持てるようにと、多数の狼牙棒や弩をそろえるほど。

20120424_写真_中国_マフィア_高利貸

細かいルールを決めた背景には、李のマフィア経営理念があったという。それが「文明黒社会」だ。

「「棍子」をやるにしてもケンカだけが能じゃない。服装、装備をちゃんとそろえていれば向こうが怖がるというもの。」「文明黒社会になろう。スーツにネクタイを締めている時は社長のように振る舞おう。脱いだ時には命懸けで戦おう」と部下に言い含めていた。

服装に武器までそろえた李のマフィア軍団はたびたび村々を練り歩き、その威勢を示した。現地では「村が乱れるか乱れないか、李アニキの胸一つ」と言いはやされていたほどだったという。中国のチンピラというと、シャツをはだけさせただらしない格好というイメージが強いが、田舎を闊歩するスーツ軍団はなかなか新鮮だったのではないか。写真がないのが残念だ。

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